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第12話

さて、続いての訓練所は錬金術。

さっきの鍛冶師と違って、重いハンマーを持つことはない以上、俺たちにもできるはずという希望で胸がいっぱいだ。

この希望が打ち砕かれないことを祈ろう・・・。


受付に案内され、部屋に入る。

先ほどの鍛冶と同じく、想像通りの部屋だった。

大きな錬金釜、薬草の束、よくわからない液体、魔物の一部など、完璧だ。

ここまではさっきと同じく、100点だ。


「いらっしゃい、話は聞いてるよ。そこに座んな」


「よろしくお願いします」


「よろしくお願いします。ちなみに、この尻尾でも錬金術はできますか?」


「ん?んー・・・厳しいな。ここは大丈夫だけど、借りれる工房は狭い。お前さんの尻尾じゃ、部屋にあるものを色々壊しちまうだろう」


「つまり、狭くなければ問題ないってことですよね?」


「ああ、そうだね。どんな見た目であってもできないって理由にはならないよ」


錬金術も問題なくやれる。

ただ、借りれる工房は狭くて俺じゃ無理みたいだな・・・。

これは早めに工房を作るしかないな、うん。

あと、さっき作った椅子だけど、冷たい。

どこかで座布団買ってきてくっつけなきゃ・・・。


「さて、あんたらはクラフトを覚えてるってことはだ、誰かにある程度聞いてるってことでいいかい?」


「さっき鍛冶師の訓練所で色々教わりました」


「なるほど、ならスキルの部分はいらないね。それでも来たってことはあれだろ?実際にやる方を知りたいんだろ?」


「はい。大釜に杖突っ込んでぐるぐる回したいです」


「そりゃ夢見過ぎだよ。初心者は鉢とフラスコまでだね」


初心者じゃなければ杖を突っ込んでもいいのかよ・・・。

でも、さっきと違ってこっちは想像通りの事ができそうだな。


「まずは、設計図を使ってHP回復ポーションを作ってもらおうか。そのあと、実際に薬草を潰してって作業をやってもらう。どこまで差ができるか見物だね」


「多分だけどまったく透明感がないものができるね」


「おや?ポーションの善し悪しがわかるのかい?」


「ポーション屋のおばちゃんに聞きました」


「あの人か・・・そうかそうか、あの人はいい人だからね。今後も世話になることがあるだろう」


訓練所の先生にお墨付きを貰ったおばちゃん。

てか、さっきの説明で特定できるのか、すげーなおばちゃん。


「それじゃ、これが薬草と水、入れ物に設計図だ。作ってみな」


渡された設計図と材料を受け取り、机に置く。

そして、スキルを唱える。

さっきのコレジャナイ感じでポーションが完成した。

うん、そこそこ透けてるな。

おばちゃんに貰ったポーションと見比べるとまだまだだけどね。


「うん、まぁそんなもんだろ。何回か使えば店売り出来るレベルにはなる。まぁ、お前さんらの顔見ればそのスキルを使いたくないってのはわかるけどな」


「コレジャナイ感がどうしても・・・」


「まぁ、わかるさ。これはないってこっちでも声が上がってるくらいだからね」


え?NPCがそれ言うってことはあれだろ?

運営内ですらこの仕様に反対してる人がいるってことだろ?

大丈夫かよ・・・、心配になるじゃん。


「まぁ、色々と目的があってそのままになってるからね、気にしたら負けだよ。さて、今から実際に作ってもらおうかね」


「あ、お願いします」


「それじゃ、これが道具だよ。その道具は一番性能が低いもので、店売りしてるものよりも低いんだよ。それを使って練習し、やれそうだなって思ったら店売りのを買って本格的に始めればいいさ」


「どれくらい低いんですか?」


「ん?そうだな、この街一番と言われる私ですら半分くらいしか透けないと言えばわかるかな?」


「・・・ほぼ透明なポーション作れる人の全力ですら店売りレベルぎりぎりになる性能なのか」


「おや?私のポーションを・・・ってそうか、あの人の所だね?まぁいいか。どれくらい落ちるかは充分にわかっただろ?」


「はい・・・あ、失敗率とかは変わらないんですか?」


「流石にそれが上がるようなのを渡すわけないよ。他に質問はあるかい?無いなら手順を教えるよ」


「ないです、お願いします」


「同じくないです、お願いします」


「そうかい、ならよく聞くんだよ?まずはね・・・」


薬草を磨り潰す、沸騰直前の熱湯に溶かす、そして不純物を取り除く。

この工程は夢にまで見た、ポーション作りそのものだった。

しかし、一つ一つの作業は物凄く地味で、大変だった。


最初の磨り潰す作業。

これは乳鉢に薬草を少量入れ、形がなくなるまで延々と磨り潰す。

ある程度なくなったら、追加の薬草を入れる。

そして、また磨り潰す。

この作業を実に30分も続けた。

そう、30分間延々と黙って乳鉢と薬草に向かっていた。

これ、心折れるだろ。


次に、熱湯に磨り潰した薬草を投入する。

これももちろん大変だった。

一度に大量に入れても溶けないらしく、少しずつ、少しずつ流し込んだ。

更に、かき混ぜてきちんと全体に溶かしこむのだが、早すぎてもダメだし、遅すぎてもダメと厳しかった。

その速度で10分間混ぜろと言われた時は先生の顔を見返してしまった程だ。

ゲームの中なのに腕がちょっと痛い・・・。


そして、最後の不純物処理。

これは比較的楽だった。

学校で見た事あるようなろ過ようの紙に少しずつ液体を流し込むだけ。

ただ、その作業を10回近く繰り返す。

流し込む速度・高さがどうとか、空気に触れる時間がどうとか、色々言われたけどまったく違いがわからなかった。


そして、1時間近くかかってできたまったく透き通ってないポーション。

おばちゃんに見せられたド素人のポーションを思い出した。

あのド素人、初めてやった俺らとそこまで変わらないんだな・・・。


「お疲れさん。どうだい?疲れただろう?しかも、スキルで作った方が早いし楽だし高品質だ」


「これ・・・心が折れますね・・・」


「な・・・あんだけ頑張ってこれかって思う・・・」


「まぁそんなに落ち込みなさんな。誰だって最初から上手くはいかないよ。さて、知ってると思うけど、スキルで作れるものには限界がある」


「あー・・・鍛冶師の方で若干ですけど聞きました。スキルで作れないものも作れるって」


「うむ、その通りだ。錬金術の場合は、理論上の半分までがスキルで作れる。つまり、ポーションで言えば半分くらい透けてるかなってレベルまでは作れるってことだ」


「ってことはだ、これが限界?」


そう言って、インベントリからおばちゃんに貰ったポーションを取り出す。

あ、椅子もインベントリにしまってます。

だって、椅子を手に持って歩くのはちょっと・・・。


「んー・・・どれ、ちょっと貸してみな。ふむふむ・・・そうさね、これがスキルで作った場合の限界だね。ちょうどいい見本になるだろうね。買ったのかい?」


「おばちゃんに気にいったからあげるって言われて貰いました」


「そうかいそうかい、あの人に気にいられたならよかったよ。あの人のことを知らない人はこの街にいないからね」


あのおばちゃん何者だよ。

なんか裏設定でもあるのか気になるじゃないか。


「ああ、先に言っておくけどあの人は昔凄かったとかじゃないからね?あの人の凄さはあの性格だよ。心当たりあるだろ?」


「・・・高レベル向けの武器屋に行った時に、おばちゃんの紹介で見に来たって言ったら、すんなり通してもらいました」


「そういうこと、あの人を敵に回すとうるさいからね・・・。逆にあの人を味方に付けると街中の人たちが手を貸してくれるからね、助かるもんだよ」


おばちゃん、ちょっと尊敬するよ。

てか、俺凄い人に気にいられたんだな。


「さて、話が逸れたけど、これで一応全部終わりだよ。まだ聞きたいことでもあるかい?」


「んー・・・ないかな?」


「あ、俺あります」


黒猫が何やら質問があるらしい。

個人的にはこの椅子、硬くて痛いから早く移動したい。


「なんだい?」


「店売りの道具をーって言ってましたが、どこに売ってますか?3軒ほど道具屋を見ましたけど、どこにも錬金術に使いそうな道具扱ってませんでしたよ?」


「ああ、そのことかい。それなら、ここを出てすぐの売店だよ。もしくは、錬金術ギルドに行けば売ってるから、今後はそっちで買うことになるだろうね」


凄い大事なことだった。

言われて思い出したけど売ってなかったね・・・。


「売店あったのか・・・気付かなかった。金無いんで今すぐは買えないけど、一応見ていきます」


「ああ、ゆっくりと見ていきな。他はあるかい?」


「ないです。ありがとうございました」


「ありがとうございました」


「レシピは人から聞くか図書館にあるからね。頑張るんだよ」


お礼を言い、訓練所から出る。

大満足の結果で錬金術は終わった。

横にいる黒猫も少しニヤニヤしてる。

そのことを指摘するとお前も同じ顔だろと突っ込まれ、お互いに笑う。

肩や腕が痛いし疲れたけど、これこそ求めていたものだ。

この苦労こそが、求めていたものなのだ。


外に出て少し休憩をする。

この後は別々の訓練所になる。

俺は料理、黒猫は商人だ。

一応、家で料理はしてるから大丈夫だと思う。

さて、このままの気分で最後までいけるかな?




次の更新予定日は 08/31 0:00です

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