表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染を実の姉にNTRされ絶望のどん底にいた女の子を拾った俺は、全力で幸せにすることにした  作者: 夜空 叶ト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/23

第4話 少しづつ縮まる距離と家との決別

「お、おはようございます」


「おはよう。昨日はよく眠れたか?」


「はい。おかげさまで。本当に何から何までありがとうございます」


 昨日はあれから三人で夕飯を食べて夜桜は風呂に入って早々に寝てしまった。

 疲れていただろうし、俺もやらないといけないことがあったので昨日は話すことができなかった。


「いいって、それよりも朝食を作るんだけど食べれるか?」


「い、いただきます」


「そんなに畏まらなくてもいいんだけどね」


 苦笑を漏らしながら俺は朝食の準備を進める。

 準備と言ってもトーストを焼いて適当に生野菜をちぎって盛りつけてヨーグルトを器に出して出すだけなんだけどな。


「そう言えば広隆寺さん学校は大丈夫なんですか? もういい時間ですけど」


 時計を見てみれば時刻は8時半をさしていた。

 この家から永富学園までは電車を乗り継いで1時間ほどかかる。

 始業時間が9時だから今から向かっても完全に遅刻になるな。


「大丈夫。学校には休みの連絡を入れてるからね」


 元々、夜桜を家に招いてから今日は学校を休むつもりだった。

 慣れない環境に連れ込んでおいて自分だけ学校に行くなんてのは流石に無責任だし。


「良いんですか?」


「良く無かったら休まないよ。まあ、出席日数とかはまだ始まったばかりだから気にしなくても良いしね」


「でも、クラス内の人間関係とかそう言うのってややこしくなりませんか?」


「確かにそう言う節はあるかもしれないけど、俺の場合は友人と同じクラスだから何とかなるだろ」


 紅葉ともう一人の幼馴染が一緒のクラスなのは昨日確認してあるから孤立するという事もないだろう。

 最悪孤立してもあの二人がいれば退屈な学校生活を送ることは無いだろうから、そこまで心配してはいない。


「そういうものなんですか?」


「そういうもんだよ。だから、俺の学校に関しての心配は必要ない。このまま週末まで休むつもりだし」


「休み過ぎじゃないですか?」


「君が転校するのと同時で登校を再開しようかなと」


 来週には転校手続きは完了してるだろうし、うまく行っていれば養子縁組の件も完了してるはずだ。

 全てが片付くまではこの子の近くに居たほうが不足の事態に対応できて良い。


「なんだか、申し訳ないです。私のせいで広隆寺さんまで学校を休ませてしまって」


「別に気にしなくても良いさ。俺が好きでやっていることだし。それよりも冷めないうちにちゃちゃっと食べようか」


「はい。いただきます」


 彼女は手を合わせて食べ始める。

 その姿を眺めながら俺も自分で用意した朝食を食べ進める。

 いつもと変わらない朝食なのに、誰かと一緒に食べるというだけで美味しく感じるものだな。


「口に合ったかな? 朝食を誰かに振舞うことが無いからちょっと心配なんだが」


「とても美味しいです。広隆寺さんは料理がお上手なんですね」


「上手ってわけでもないと思うんだけどな。まあ、必要最低限はできるって感じだ」


「最低限って感じじゃ無いと思いますけどね」


 可愛らしい笑みを見せながら彼女がそう言ってくれる。

 今までこんな風に誰かに褒められたことが無かったけど、悪い気はしないな。

 それも、こんな美少女に褒められるのならなおさらだ。


「夜桜は家事出来るのか?」


「私も最低限はできますけどね。料理はあまり得意ではありません」


「そか。じゃあ、これからもご飯は俺が作るよ。後で嫌いな食べ物とかアレルギーがあれば教えてくれな」


「じゃあ、私は何をすればいいですか? 家事の分担とか」


 正直な話、今の俺は家事方面で全く困っていない。

 料理をするのは嫌いじゃないし、洗濯や掃除に関しても苦手意識はない。

 だから、何かを任せるつもりはないんだがそんなことを言っても納得しそうにないしな。


「う~ん、特にないんだよな」


「さ、流石に何もしないまま居候と言うのは私の心が痛むのですが」


「だよな。ま、分担に関しては後々決めていく方針で」


 今すぐに決めないといけないというわけでもない。

 のであれば、先送りにしても問題ないだろう。


「そう言えば、君の家にある荷物類はどうする? 持ってきたい貴重品とかがあれば付き合うけど」


「そう……ですね。じゃあ、ついてきてもらえると助かります。良いですか?」


「もちろん。食べ終わったら着替えて行こうか」


「ありがとうございます」


 彼女の荷物は一切こっちの家に運び込んでいない。

 それにいくら彼女の両親が彼女自身に興味がなかったとしても一応は外泊の許可を取っておくに越したことはないだろう。

 まあ、数日後には戸籍上の家族関係はなくなるわけだが。


「ごちそうさまっと。食器貸してくれ。洗うから」


 俺が食べ終わるのと同時くらいに彼女も食べ終わっていたので一緒に食器を流し場に持っていく。


「あ、洗い物は私がやりますよ! それくらいはやらないと申し訳ないです」


「洗い物は俺がやるよ。せっかく綺麗な手だから荒れちゃったらダメでしょ」


「き、綺麗な手ですか?」


「うん。サラサラしててすごく綺麗な手だと思うぞ。だから、洗い物は俺がするよ」


「……広隆寺さんってモテませんか?」


「特に告白を受けるとかはないな。人生で一回もないかも」


 自分がモテているとは思ったことが無い。

 告白もされたことが無いし、そう言う噂が立ったことだってない。

 恋愛とは無縁の人生を送っている自負がある。


「ええ……本当ですか?」


「本当だとも。じゃあ、俺は洗い物をするから夜桜は着替えてきてくれ。この後行くんだろ?」


「わかりました。着替えてきますね」


 夜桜は何故か呆れたような表情をしながら部屋に戻っていった。

 なんで呆れられたのかわからないんだけど、悪い感じではなかったし良しとしよう。

 それよりも、今は洗い物に専念しなければ。


「今日は流石に姉の方はいないよな?」


 懸念点があるとするならば、夜桜の実家に行って彼女の姉がいる可能性があるという点だ。

 今日は平日だし、普通に考えれば学校に行ってるはずだからいないと信じたいんだがな。


「もう一回夜桜と彼女の姉……もしくは元カレと会ったら彼女の精神にかなり悪影響を及ぼすことになるのだろうな」


 それだけは何とか避けたい。

 彼女には笑っていて欲しいからな。


「こんなことを考えるより先に洗い物だな。とっとと終わらせよう」


 暗い事を考えるよりも先に目の前の洗い物を片付けることにしよう。

 下手に考え過ぎて食器を割ったら大変だ。


 ◇


「お待たせしました」


「全然待ってないよ。じゃあ、行こうか」


 リビングで彼女が準備を終えるまでくつろいでいると、ひょこりと彼女が顔を出して来た。

 着ている服は昨日のワンピースではなく、白いブラウスの上に茶色のベストを着ていて下にはチェック柄のロングスカートを履いていた。


「少し、緊張しますね。家に帰るの」


「なるようになるさ。それよりもその服凄く似合ってるな。可愛いと思う」


「……広隆寺さんって凄く私のことを褒めてくれますよね。なんでですか?」


「俺は自分が思ったままの事しか言えない性格なんだ。だからお世辞とかではないから安心してくれ」


 昔から他人に思ってもない事を言うのが苦手だったんだ。

 言う意味もあんまり感じなかったし、必要でもなかったから。


「……そう言う意味で言ったんじゃないんですけど。わかってて言ってますよね?」


「どうだろうな。それよりも早いとこ君の家に向かおうか。あんまり長引かせて君の姉が帰ってくると面白くないことが起きそうだからね」


「……そうですね。お気遣いありがとうございます。広隆寺さん」


 気遣いって程の事でもないんだけど。

 まあ、感謝をされる分には何もマイナスは無いから良いか。


「てか、ずっと言おうと思ってたんだけど広隆寺って呼び方長くないか?」


「まあ、確かに長いとは思いますね」


「名前で呼んでもらってもいいんだぞ? もちろん嫌ならいいんだが」


「良いんですか? いきなり馴れ馴れしくないですか?」


 馴れ馴れしい?

 名前で呼ぶと馴れ馴れしいにあたるのだろうか。

 俺はあんまりそういうことを気にしたことが無いからわからないけど。


「少なくとも、俺は馴れ馴れしいとは思わないな。だから、嫌じゃなければで良いけど名前で呼んでもらえると嬉しい」


「じゃ、じゃあ春斗さん」


「ああ、良い響きだな。美少女に名前で呼ばれるっていうのは」


「すぐに茶化すんですから。あ、私のことも刹那でいいですよ。私だけ名前で呼ぶというのもおかしな話ですから」


 言われてみれば、確かに俺だけ名前で呼ばれて俺は名前を呼ばないというのもおかしな話だしな。

 夜桜って呼ぶと姉との区別もつかないし、いろいろと不便なことも多いだろう。

 であるならば、俺も名前で呼ぶ方が筋と言うべきか。


「それもそうだな。じゃあ、これからよろしくな刹那」


「はい。改めましてこれからよろしくお願いいたしますね。春斗さん」


「じゃあ、呼び方を変えて親密度も上がったところで気張って行こうか」


「はい。かなり緊張しますけど隣に春斗さんがいてくれたら頑張れる気がします」


 ニコリと笑みを向けられて嬉しくなるが、まだまだこんなのは第一歩に過ぎない。

 俺がやるべきことは決まっている。

 この子を、刹那を笑顔にする。

 そのためには、まだまだやらないといけないことが多すぎる。


 ◇


 刹那と並んで歩いてしばらくすると、彼女が立ち止まる。

 どうやら彼女の家に着いたらしい。

 それなりに大きな一軒家。

 和風と言うよりかは洋風よりな見た目で、車庫には高そうな車が停まっていた。


「やっぱり怖いか?」


「……怖いです。昨日みたいに蔑みの目を向けられて罵倒されるんじゃないかと思うと怖くて仕方がないです」


「大丈夫だ。俺がいる。何かあったら絶対に助けるから安心して荷物を取ってくると良い。俺もついていくしさ」


 不安そうに震えている刹那の手を握る。

 俺の手よりも一回り以上小さくて、柔らかい。

 こんなにも小さな手でどれほど辛い経験をしてきたのだろう。


「ありがとうございます。じゃあ、行きましょうか」


 刹那は鍵を取り出してドアを開ける。

 家の中からは人の気配を感じない。

 それもそうか。

 今日は平日だから父親は仕事をしているのだろう。母親もパートか何かをしているのかもしれない。

 そうであるならば好都合だ。


「誰もいない……のか?」


「この時間は家に誰もいないはずです。だから、早く……」


「刹那。こんな時間に何をしている」


 彼女が言葉を発している途中に俺の物ではない男性の声が聞こえてくる。

 声の感じからして同年代ではない。

 いや、かなり歳をとっており威厳すら感じさせる低い声だった。


「お父さん……」


「昨日帰ってこなかったと思ったら、こんな時間に学校をサボって。それも男連れとはどういう了見だ!」


「そこまでだ。夜桜 富次とみつぐ。刹那から離れろ」


 拳を振り上げて、刹那を殴ろうとする富次の前に立ちふさがる。

 俺はこの男を知っている。そして、この男も俺のことを知っているはずなのだ。


「誰だきさ……まは」


 最初は俺の睨みつけ怒鳴っていた富次だが、近くで俺の顔を見ているうちにどんどんその声は小さくなっていき顔が青ざめ始める。


「その様子だと俺のことを忘れたわけではないようだな」


「な、なぜあなたが刹那と一緒に居るのですか!? そんな何の取り柄もない娘と」


「黙れ。自分の子供によくそんなことが言えるものだな。心底あきれ果てたよ」


 この男は救えない。

 それは今の一瞬の会話でわかったことだ。

 自分の娘を物のように扱い、暴力を振るおうとする。

 やはり、こんな人間の元に刹那は置いておけない。


「は、春斗さん? 一体どういう……」


「後で説明するよ。今はこの人と話をしないといけないから」


「も、申し訳ありません! まさか、刹那と一緒に居るのがあなた様だとは思わず」


「そんなことはどうでもいい。俺は刹那の荷物を取りに来ただけだ。お前たちがこれ以上刹那に関わることは許さない。後ほど広隆寺の者が我が家へ刹那を養子として迎え入れるという話があるはずだ。今日から刹那は俺が預かる。異論も反論も許さない。分かったな?」


「……か、畏まりました」


 富次は俺に頭を下げながらプルプル震えていた。

 だが、これ以上何かをしてもそこまで意味はないだろうからすぐに刹那の荷物を回収して夜桜家を後にした。


 ◇


「春斗さん、説明してもらっても良いですよね?」


「もちろん。隠すつもりはないよ」


 刹那の荷物を回収してすぐに俺たちは家に戻った。

 家に帰ったタイミングでずっと話を聞きたそうにしていた刹那が問い詰めてくる。


「じゃあ、教えてください。父と、夜桜富次と春斗さんは知り合いだったんですか?」


「ああ。夜桜富次は広隆寺家が経営している会社の役員でね。広隆寺家主催のパーティーとかで何度か話したことがあるんだ」


 広隆寺家は会社を経営したり、投資したり大株主であったりといろんな事業を手掛けている。

 その中に富次がいただけという事だ。


「も、もしかして父はクビになったりするんですか?」


「それはどうだろう。君はどうしたい?」


 正直、俺が一言言ったら富次をクビにすることくらいは簡単だ。

 俺がこの目で人格的な人間ではないことを見たし、将来的に問題を起こす可能性が否めない事からも彼をクビにする方が会社のためにはなると思うのだが。


「……お任せします。私はあの人に何かを貰った事なんてほとんどありませんから」


 酷く暗い顔をするものだ。

 きっと、姉と比べられたりそのほかにも嫌な思いをたくさんしてきたんだろう。

 今の俺はそれを聞けるほどの仲ではないから聞くことはしない。


「わかった。それよりも、荷物は取れたか?」


「もちろんです。おかげさまで回収したいものが全て回収できました」


「そうか。じゃあ、今日はもうゆっくりするか。何かしてみたいことがあるんなら付き合うぞ」


「じゃ、じゃあアレをやってみたいです」


 そう言って指さしたのは、家に置いてあったゲーム機だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ