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幼馴染を実の姉にNTRされ絶望のどん底にいた女の子を拾った俺は、全力で幸せにすることにした  作者: 夜空 叶ト


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第3話 最悪の出会い

「じゃあ、とりあえず生活必需品から買っていこうか」


「ほ、本当にいいんですか?」


「もちろん。金に関しては気にしなくていい。必要なものを必要なだけ買ってくれ。君の生活に問題が起きない程度にね」


 彼女を幸せにしたいのに必要なものが足りないなんて状況にはさせたくない。

 俺が自分の力でできる限りのことはしてあげたいし、できることがあるのなら惜しまずに行動に移すつもりだ。


「あ、ありがとうございます」


「まずはシャンプーやリンスとかの風呂で使う用品から買いに行こうか。そのあとは服だ」


「はい。よろしくお願いします」


 ショッピングモールを散策して必要なものをかごに入れていく。

 女子が使う用品が俺にはわからないから、夜桜が物を見てカートに商品を入れていく姿を眺めているだけなのだが。


「夜桜、そんなに安いものばっかり選ばなくてもいいんだぞ?」


「ですが、人に買っていただくのに高いものばかり選ぶというのは……」


 言いたいことはわかるが、ここで遠慮されて生活しづらくなるのはいただけない。

 何よりも、俺は彼女にそんなことを考えずにのびのびと暮らして欲しいのだ。


「そう言うのは一旦気にしなくてもいい。それよりも、今日の夕飯は何か食べたいものとかあるか? 作るぞ?」


「広隆寺さんって料理もできたんですか?」


「一通りはね。流石に一流のシェフのような腕前と言うわけにはいかないけど」


 一人暮らしをするにあたって、俺はある程度の家事をできるようにしている。

 料理も洗濯も掃除も。

 一人で生きていくうえで必要な技術に関しては一通り体得しているつもりだ。


「いや、今どき料理のできる男子高校生なんて少ないですよ? 樹くんだってできなかったし」


「樹君?」


「ああ、すいません。さっき話した私の幼馴染の名前です。いっつも掃除とか勉強が出来なくて、私がやってあげてたんです。今思えば都合のいいように利用されてただけなのかな」


 俯いて今にも泣きだしそうな声でそう言う夜桜は見ていてとても痛々しい姿だった。

 何とかしてあげたい。

 彼女を笑わせてあげたい。

 心の底からそう思うのに、どうすれば彼女が笑ってくれるのか。

 苦しさを紛らわせてあげることができるのか。


「俺にはわかんないけどさ。少なくとも俺は君みたいな良い子を手放した幼馴染は見る目がないと思うけどね」


「なんですかそれ。私が良い子だなんて」


「俺から見たら凄く良い子だよ。礼儀正しいし、所作が綺麗だし可愛いし。内面も決して悪い物でもないと思うしね」


 夜桜と会ってまだ数時間だけど、悪い人間でないことくらいは理解できる。

 これでも人を見る目には自信がある方だから。


「広隆寺さんってなんで私に対する評価がそんなにも高いんですか? 本当に何もしてないと思うんですが?」


「そんなことないさ。まあ、今日は早く帰って家でゆっくりしよう。君も疲れているだろう」


「そうですね。そうさせてもらえると助かります」


 肉体的に疲労はあまりなくても、精神的な疲労は計り知れないはずだ。

 幼馴染に裏切られ、家族からも信じられない。

 そんな状況がどれだけ精神に影響を与えるかなんて想像に難くない。

 今日の所はゆっくり休んでもらいたいところだな。


「あれぇ~? 浮気してた刹那じゃん。こんなところでどうしたのぉ~?」


「ッ……」


 俺が考え事をしていると目の前から不愉快な内容の言葉が飛んでくる。

 一体誰だと思い、視線を上げるとそこには夜桜と同じ青みがかった銀髪に紫色の瞳をした女子が立っていた。

 話の流れからすると、夜桜の姉なのだろう。

 少し後ろには姉に隠れるようにして一人の男が立っている。

 なるほど、最悪のタイミングだ。


「だんまりぃ? 流石に実の姉にそれはないんじゃない?」


「……ぁ」


 既に泣き出してしまいそうな夜桜を見て、介入するべきか迷っていた俺の迷いは一瞬にして打ち消された。

 部外者だとか、そんなのはどうだっていい。

 今はこのクソッたれな状況を何とかしたいんだ。


「すまない、あなたは誰だろうか?」


 気が付けば、夜桜を庇うかのようにして前に立っていた。

 後先を考えない行動をするのは愚策だと思っていたけど、ここで動かないのはシンプルにくそ野郎だ。


「そういうあんたこそ誰なわけ? なんでうちの妹と一緒に居るのさ」


「これは申し遅れた。俺は広隆寺春斗と言います。ここにいる夜桜刹那の婚約者です」


 出来る限り濁りのないスマイルで目の前の少女を見据える。

 咄嗟に婚約者と言ってしまった。

 後で夜桜に怒られるだろうか?

 でも、こういった方が話がしやすい。


「婚約者!? その子、彼氏と別れてからまだ一日も経ってないんだけど? 本当に浮気してたわけ?」


「ち、ちがっ」


「俺が今日、というかさっき婚約を申し込んだんですよ。決して彼女が浮気をしたなんて事実はありませんよ」


 そろそろ紳士的に接するのも限界が来そうだ。

 こんなカスと関わっているとこっちまで腐食されそうで気分が悪くなる。

 腹立たしいがここで感情的になるほど俺は愚かではない。


「はぁ? なんで。そんな奴に価値なんかないでしょ」


「それは俺が決めることです。そう言えば、あなたの名前を聞いていませんでしたね」


「ああ、私の名前は夜桜 栄華えいか。そこの刹那の姉よ」


「なるほど、お姉さまでしたか。おっと、そちらの男性は栄華さんのなんですか?」


 さっきから一向に前に出ようとせず、栄華の後ろに隠れている男。

 おそらくは、夜桜を裏切ったクソ野郎。

 だが、もしかしたら違うかもしれない。

 だから、一応確認をする。


「俺は村瀬むらせ 樹って言います。ここの栄華さんの恋人……です」


「そうでしたか。お邪魔してしまいましたね。俺たちはもう行くのでそれでは」


「あ、ちょっと!?」


 何かを言われる前に俺は夜桜の手を引いてその場をすぐに後にした。

 かなり距離を取ってから息を整えるために立ち止まる。


「大丈夫か?」


「……大丈夫ではないかもしれないです」


「そうか」


「はい」


 短い会話だけど、それだけで彼女が精神的にかなり疲弊していることはわかったから。

 服とかも一通り買いそろえることができたし、もう帰ることにするか。

 本当に最悪なタイミングで最悪な奴らと会ったものだ。


「帰ろうか。荷物貸して」


「いえ、これくらいは自分で持てますよ」


「いいって。せっかく荷物持ちがいるんだから持たせときな。今日はかなり疲れただろうしな」


 夜桜が持っていた袋をひったくるようにして奪い取って帰路に就く。

 今はこの場にいない方がいい。

 もし、もう一度奴らと会う事になったらこの子は本当に壊れてしまうかもしれない。


「お気遣いありがとうございます」


「別に、そんなことしてないよ」


 俺たちは来た時と同じように相合傘をしながら歩く。

 これからどうするべきか。

 何をしたいか。

 彼女が決めるのにはそれなりの時間が必要なのだろう。

 だから、それが決まるまでは俺が支えて行こうと思ったのだ。


 ◇


「ただいま」


「お、お邪魔します」


「おかえり~お二人さん。お買い物は楽しめたかい?」


 家に帰ると紅葉が我が物顔でくつろいでいた。

 どうやら、俺達が出かけてから家に戻っていなかったみたいだ。


「楽しむための買い物でもなかったしな。まあ、必要なものは買えたと思うぞ」


「そっかぁ~ならよかった。夜桜さんの部屋は決まってるの?」


「いや、まだだから案内しようかと。お前はどうする?」


「もう少しくつろいでよ~かな。せっかくなら夜ご飯も食べて帰りたいかも」


 紅葉はいつもの笑みを崩さずに図々しくも夕飯まで要求してきた。

 こいつも隣で一人暮らしをしてるから一人で夕飯を食べるのが退屈と言うのもわからないではない。

 それにこいつ料理とかできないし。


「へいへい。もう少ししたら作るから待っててくれな」


「ありがと~」


「じゃあ、夜桜。ついてきてもらっても良いか?」


「何から何まで本当にありがとうございます」


 家の屋敷はかなり部屋の数がある。

 一階にはリビングやキッチン、和室にお風呂などの共有スペースがあり二階には個室がかなりの数ある。

 客室が4部屋に俺の部屋と物置。

 客室は全く使っていなかったから、そのうちの一部屋を夜桜の部屋にしてしまおう。


「この部屋を好きに使ってくれ。ベッドと机、椅子に収納はあるから他に何か必要になったらその都度言ってくれていい」


「こ、こんなに広いお部屋をお借りしてもいいんですか?」


「当たり前だろ。手続きはまだだけど、もう家族みたいなもんだからな」


 養子縁組の手続きは親父が滞りなくしてくれているはずだ。

 少なくとも数日中には名義上の家族になる。

 そんな家族に苦しい生活を送らせるわけにはいかない。


「そうでしたね。ありがとうございます。本当に」


「良いって。じゃあ、さっき買ったものを部屋に運び込むよ。夜桜はここで休んでな」


「いえ、私の物ですから私も手伝いますよ」


「今日くらいは甘えてくれ。そんじゃ、持ってくる」


 それだけ言って俺は部屋を後にする。

 玄関に置いていた袋を持って再び夜桜の部屋に戻る。

 彼女はベッドの上に座って、俯いていた。

 無理もない。

 振られたその日にあんなものを見せられたのだから精神的ダメージは計り知れない物だろう。


「運んでくださってありがとうございます。そう言えば、聞きたいことがあったんですけどいいですか?」


「答えられることならなんでも答えるぞ」


「婚約者って何ですか?」


「……あ」


 夜桜の姉に咄嗟に言ったことを完全に忘れていた。

 俺も特に何かを考えて言ったわけじゃなくて、口から出てしまったものだ。

 どうやら俺も後先を考えられない愚か者らしい。


「詳しく説明していただけますよね?」


「……はい」


 夜桜の圧に負けて俺は気が付いたら自主的に正座をしていた。

 本家や分家を交えた新年会などでよく大人と挨拶をする俺ですらビビってしまうほどの圧。

 彼女は将来大物になるな。


「と言っても、怒ってるわけじゃないんです。むしろ感謝してるくらいで」


「感謝? なんで」


「あそこに長くいたら私、泣いてしまいそうでしたので」


 少しだけ自嘲気味に微笑みながら言った。

 その笑みは綺麗なものなのに、見ていて悲しくなるような表情だった。


「なら、良かったけどな。婚約者に関しては咄嗟に出てしまっただけで、本当に婚約者になってもらうつもりはない。ただ、あの場においてはそう言った方が問題が大きくならないと判断した」


「そうですか。ならいいです。本当にありがとうございました」


「いや、いいよ。夕飯が出来たら呼ぶから夜桜は少し眠ると良い。疲れただろ」


「そうさせてもらいますね。明日から家事の分担などについて話し合わせてください」


「わかった。お休み夜桜」


「休みなさい。広隆寺さん」


 部屋を出てから、リビングに戻ると紅葉がいきなり背後からタックルをかまして来た。

 一体何のつもりなんだ。


「痛いって。どうした紅葉」


「いや、買い物中になんかあったでしょ。ハルは隠せてるつもりだろうけど、凄く不機嫌そうだし。夜桜さんは悲しそうな顔してるし」


「……俺そんなに表情に出てたか?」


「どうだろ? あたしだから気が付いたってのもあるかもしれないけどね。いつもとなんか雰囲気違ったし」


 相変わらずの洞察力にびっくりするけど、さっきのタックルはなんだったのだろうか。

 こいつなりのコミュニケーションの取り方なのか?

 だとしたら結構痛いからやめて欲しい。


「ま、いろいろあったんだよ。それよりも夕飯作るから離してくれ」


「はいはい。話す気が無いのはわかったよ~夕飯作るんでしょ? よろしくね!」


「はいはい」


 紅葉を何とか引きはがして俺はキッチンに向かい、夕飯の調理を開始するのだった。

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