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幼馴染を実の姉にNTRされ絶望のどん底にいた女の子を拾った俺は、全力で幸せにすることにした  作者: 夜空 叶ト


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第2話 幸せになる第一歩

「あなたは一体何を考えているのですか?」


「何を考えてるって……う~ん、強いて言うなら君がどうすれば笑ってくれるかを考えていた」


「……何を言っているのですか? 本当に」


 夜桜は本当に意味が分からないといったように首を傾げてしまう。まあ、俺も自分で何を言っているのかあまり理解できていないのだから無理もない。

 でも、そう思ってしまったのだから仕方がないんだ。

 俺はこの子を笑顔にしたいと心の底から思ったから。


「だから、学校で居場所がないって思うのならうちの学園に転校して来ればいい。転校にかかる費用は全部出すし、制服、教科書代も全部出す」


「そ、そこまでは申し訳ないです。それに、そんなお金どこから出すんですか?」


「ん? 俺の金だが。まさか、俺が親の金に頼っているとでも思ったのか?」


「は、はい。ですが、なんで高校生なのにそんな大金を持っているのですか?」


「自分で投資したり、株を買ったりして資産を増やしてたからな。それなりに金は持っているんだ」


 親からは資産運用関係の教育は受けてるし、そうそう失敗はしない。

 そんな事を子供のころから続けていたら資産がかなりの額になっていた。

 両親は俺の事を凄い凄いと褒めてくれたけど、絶対に両親の方が凄い事をしているのであまり素直には喜べなかった。


「す、すごいですね。私なんかとは比べようがないです」


「それで、どうする? 家に帰りたくないって言うんならここに泊まればいい。両親と暮らしたくないというのならうちの養子になればいい。手続きは全部こちらが受け持つ」


「そんなによくしてもらってもいいのですか? 私とあなたは今日出会ったばかりなんですよ?」


 酷く怯えたように、彼女はか細い声を絞り出す。

 確かに俺と彼女が出会ったのは今日が初めてだし、いきなりこんなに優しくされたら怖いか。


「そうだな。でも、別に裏があるわけでもないぞ? 俺は自分がしたい事をできる範囲でしてるだけだからな」


「あなたのしたい事って何ですか?」


「今の所は君を笑顔にする事かな。それ以外は特に考えてないや」


 あの時、雨の降りしきる公園で泣いているこの子を見たときに自然と笑顔が見たいと思った。

 退屈な日常に一筋の光が差したようなそんな錯覚に陥った。

 だからなのだろう。

 この子を幸せにしたいと思ったのは。


「欲のない方なんですね」


「そう言うわけでもない。ただ、俺はしたい事をするだけだ。できるうちにね」


 いずれは俺も広隆寺家を継ぐことになる。

 そうなったら自由に動けなくなるだろうし、今みたいにやりたいことをやりたいようには出来なくなってしまうだろう。

 やれることはやれるうちにだ。


「……なんだかすごい人ですね。広隆寺さんは」


「別にそんなんじゃない。なんども言うけどやりたいことをやっているだけだからさ」


「じゃあ、転校と養子の件お願いしてもいいですか? あと、今日はここに泊めていただけると」


「わかった。流石に明日には転校完了とかは無理だから一週間くらい時間をくれ」


 いくら広隆寺家が名家でかなりの発言権を持っているとしても即日転校を完了させてしまう事はできない。

 養子の件も同様だ。

 明日には、「はい養子になりました~」なんてこともできない。


「わかりました。何から何までお世話になります」


「気にしないでいい。それよりも今から出かけようか」


「どこに行くんですか?」


「ショッピングモールだ。生活必需品とかを買いに行かないといけないだろ? 少なくとも一週間は確実にこの家で過ごしてもらう事になるだろうしな」


 いつまでも濡れた制服で過ごさせるわけにもいかない。

 下着も必要になるだろうし着替えも必要。

 生活必需品なんて上げればいくらでも必要になってくる。

 幸せにすると決めた以上は全力で彼女に不自由がないようにしたい。


「そ、そこまでは本当に申し訳ないですよ」


「気にしないでくれ。俺は君に笑って欲しいんだ。君が自然体で過ごせるようにしたいから君のためではなく、俺のため。ようは自己満足だから気にしないでくれ」


 ハッキリ言って自分が今していることなんて俺が彼女を幸せにしたい。もっと言えば、笑顔が見たいという考えで動いているだけだ。

 だから、こんな風に感謝をして貰わなくてもいいのだけど。


「それで気にしない程、私の心臓は強くないんですけど」


「まあまあ。でも、流石に濡れた制服で買い物に行くのも良くないよな。う~ん、どうしたものか」


 服を買いに行くために外出したい。

 でも、外出するための服がない。なんというジレンマ。

 この状況を打破する物は無いのだろうか。


「いえ、私でしたらこれで大丈夫ですので。気にしないでください」


「女の子に濡れた制服を着せて歩かせる外道にはなりたくないんだよ。ちょっと待って。いい方法を考えるから」


 腕を組んで思考を巡らせる。

 俺の家に女性ものの服はない。

 だけど、俺の服を着せるわけにも行かない。


「あいつに頼ってみるか」


「あいつ?」


「ちょっと電話するから待っててくれ」


「わ、わかりました」


 リビングを出た俺はスマホを取り出して一番仲の良い女友達に電話をかける。

 ワンコールで彼女は電話に出てくれる。

 相変わらず、電話に出るのが早い。


「もしもし~どしたの? ハルから電話をかけてくるなんて珍しいね~問題でも起きた?」


「問題と言えば問題なんだけど。ちょっとうちに来れるか? てか、今家にいるか?」


「いるよ~今日は全然暇だしすぐ行くね」


「ありがと。じゃ、待ってるよ」


 それだけ言って電話を切る。

 相変わらずフットワークが軽い奴で助かる。


 ピンポーン


 電話を切った数十秒後にはインターホンの電子音が鳴り響いていた。

 本当にくるのが早い。

 まあ、隣の家に住んでいるのだから当たり前と言えば当たり前なのか?


「お邪魔しま~す。始業式ぶりだね。ハル!」


 そう言いながら元気な声で入ってきたのはみなもと 紅葉くれはだった。

 活発そうな雰囲気を醸し出す彼女は俺の幼馴染であり、現在のお隣さん。

 甘栗色のウルフカットに紅色の瞳からは明るさを感じる。

 学園でもかなりの美少女として男子生徒からの人気をかっさらっているほどだ。


「だな。で、ちょっと相談なんだけどさ」


「うんうん。何々?」


 それから俺は今日起こった出来事を簡潔に話した。

 うんうんと頷いた紅葉はニッコリと笑ってサムズアップしてくる。


「いやぁ~ついにハルにも春が来たのかな? なんちゃって! あはは〜」


「おやじギャグを自分で言って笑ってるんじゃないよ。それより、お前の服を貸してやってくれないか?」


「全然良いよ~服なんていくらでも余ってるしね。それにハルがそこまで気に入った子ならあたしも見てみたいしね」


 ウキウキした様子で紅葉は夜桜のいるリビングに向かう。

 完全に勝手知ったる我が家のように迷いがない。

 まあ、こいつは幼馴染と言う事もあって何度もうちに来ているから当然と言えば当然なのかな。


「はあ、相変わらず落ち着きのない子だね。君は」


 俺のつぶやきを聞くことなく彼女はリビングに足を踏み入れる。

 本当に遠慮の欠片もない。

 あんな感じで源家は大丈夫なのか。

 少しだけ心配にならないでもないけど、うまくやるだろうから大した心配はしていない。


「ちょっとハル!? この超絶美少女は誰なの!?」


「さっき話した夜桜だ。そんなに興奮するなよ。夜桜が怯えてるだろ?」


 紅葉は夜桜の両肩をガッチリつかんで顔を覗き込んでいた。

 もし紅葉が男だったらセクハラで確実に逮捕案件だ。

 いや、今のご時世女性でも逮捕案件なんだろうか?


「ん、確かに。ごめんなさい。えっと、夜桜さん……でいいのかな?」


「は、はい。初めまして。夜桜刹那といいます」


「あ、ご丁寧にどうも。あたしは源紅葉って言います。ここのハル……じゃなくて春斗の幼馴染兼同級生です」


 二人はぎこちなく挨拶を交わしている。

 なんだか、紅葉があんな風に誰かとかしこまって話している姿は久しぶりに見る気がする。

 夜桜が美人だから気後れしてるのだろうか?

 いや、そういう奴じゃないな。


「えっと、広隆寺さん? どうして源さんを?」


「ああ、服を貸してもらおうと思ってな。家が隣だから」


「隣の家ってあの豪邸ですか!?」


 隣にある紅葉の家もかなり大きなものであるけど、あれが本邸という事はない。

 俺と同じで一人暮らしをするのにあたって紅葉が両親に借りている別荘だ。


「豪邸だなんて。家を褒められると嬉しいなぁ」


「そんなニヤニヤするな気持ちが悪いぞ?」


「……年頃の乙女の顔を気持ち悪いなんてデリカシーなさすぎ。ハル最低」


「最低でもなんでもいいから夜桜に服を貸してやってくれ。いつまでも濡れた服を着てたら風邪を引いてしまう」


 いつものように紅葉と軽口を交わすのも良いけど、今はあまりよろしくない。

 すぐにでも乾いた服を着て欲しいのだ。


「それもそうだね。じゃ、夜桜さんちょっとこっちに来てね~着替えが終わったらまたこの家に戻ってくるから」


「頼んだ~」


「あ、ちょ、ちょっと」


 紅葉は夜桜の手をとって引っ張るようにして家から出て行った。

 全く、本当にせわしない奴だ。

 まあおかげで電話出来る時間が出来たわけだから良しとするか。

 俺は懐からスマホを取り出して、父親に電話をかける。


「もしもし。春斗か?」


「ああ。少しお願いしたいことがあって電話したんだけど今大丈夫?」


「もちろん大丈夫だとも。君の方から私に電話なんて珍しい。それもお願い事なんてな。なんでもとはいかないが私にできることなら協力しよう」


 電話に出たのは俺の父親であり、広隆寺家現当主の広隆寺 冬夜とうやだ。

 落ち着いた声の中に確かな威厳を感じる。

 歳は今年で五十を超えるというのに未だに若々しい声をしていた。


「そう言ってもらえるとありがたい。じゃあ遠慮なく」


 そうして俺は夜桜が栄富学園に転入することへの手回しと、毒親から引きはがすための養子縁組の手続きをお願いした。

 費用は全て俺が出すといったのだが、親父は「せっかく息子が頼ってきたんだからその位はだす」と言ってくれたので素直に甘えることにした。


「これで転入と養子縁組の件に関しては問題なし……と。あとは紅葉を待つだけか」


 あいつは可愛いものをとにかく可愛がりたがる性格をしてるからな。

 もしかしたら、夜桜は紅葉の家で着せ替え人形にされている可能性がある。

 まあ、そうなっていたら甘んじてその状況を受け止めてもらうしかない。

 ごめんな。


「ハル~できたよ! いやぁ~夜桜さん可愛いから何を着せるか凄く迷ってしまった」


「おっ、できたか。悪いなわざわざこっちに来てもらって」


「良いって。あたしたちの仲でしょ。ほら、夜桜さんこっち来て」


 紅葉が後ろから引っ張ってきた彼女の姿に思わず俺は息を飲んだ。

 先ほどまで着ていたびしょ濡れの制服ではなく、青色を基調とした清楚感あふれるワンピースを身にまとった夜桜がいた。


「え、えと似合ってますか?」


「すごく似合ってるよ。可愛いと思う」


「……あたしを抜きにしてイチャイチャするのやめてよね。ま、いいけどさ」


 あまりの可愛さに俺が言葉を出せないでいると、紅葉がジト目で突っ込みを入れてくる。

 イチャイチャしているつもりはないのだけど、周りからそう見えるのであれば自重しなくてはいけないな。


「すまん。夜桜が可愛すぎてつい」


「はいはい。ごちそうさまで~す。夜桜さん今日はハルの家に泊まるんでしょ?」


「今日というか当分は泊っていくな」


「じゃあ、制服洗濯してるからあとで届けに行くよ」


「ありがとう、助かる」


 紅葉は昔からこういう気遣いができる人間だった。

 この子に助けられてきたことが今まで何度もあるほどだ。


「そ、そこまでは申し訳ないですよ」


「いいって。ハルの家にいるんならあたしとも長い付き合いになるだろうからさ! じゃ、今から二人は買い物でしょ? 楽しんできなよ」


「ありがとう。服もありがとうな」


「源さん、本当にありがとうございます」


 ぺこりとお辞儀をする夜桜は紅葉に向かって綺麗な微笑みを向けていた。

 どうやら、仲良くできそうで安心した。


「それじゃあ、日が暮れる前に行こうか」


「はい」


 俺たちは家を出て近くのショッピングモールに向かう。

 時刻は昼過ぎで、周りには制服を着ている学生が何人か歩いている。

 今日はどこの学校も始業式の様で、桜が咲き誇る中を傘を差しながら和気あいあいと会話をしていた。


「悪いな、家に傘が一本しかなくてさ」


「いえ、私のほうこそここまでよくしてもらって。なんとお礼を言ったらいい事か」


「別にいいって。何度も言うようだけど俺が好きでやってることだし」


「それでも……です。広隆寺さんがいなかったら今でも私はあの公園で下を向いてたでしょうから」


 隣にいる彼女はもう俯いてはいない。

 笑顔ではないけど、ずっと俯いていたさっきの状況よりかは幾分かマシになったと思う。


「ならよかった。これからも全力で君を笑顔にしていくつもりだから覚悟しておいてくれ」


「ふふっ、広隆寺さんは本当に不思議な人です。でも、あなたと過ごすのは不思議と嫌じゃありません。それどころかすごく楽しいと感じます」


「ならよかったよ」


 相合傘をしている俺たちは和気あいあいと話しながらショッピングモールへの道をたどる。

 こんな風に世界が色づいて見えるのはいつぶりなのだろうか。

 幸せをかみしめながら俺は夜桜と共に歩みを進めるのだった。

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