第24話 愚か者たちの末路
「こ、ここどこ!?」
「おはよう西宮」
「ま、松井君? 一体私に何をするつもりなの?」
「何って簡単じゃね? 二度と紅葉たちに関われないようにするだけ」
俺は春斗から身柄を受け取った西宮たちを松井家所有の倉庫に監禁していた。
こんなバカは家が潰れようとも馬鹿をしでかすものだ。
のであれば、徹底的に始末しておいた方がいい。
これ以上被害を出さないためにも。
「それってどういう……」
「聞いたことないか? 松井家の黒い噂。自分たちの敵となる勢力を陰で消してるって」
「あ、あるけどあんなの眉唾でしょ!」
「案外そうでもないんだよ。まあ、消した奴らは行方不明ってことで片が付くし。お前らは粉々になって魚の餌になるんだよ」
今までも家に喧嘩を売ってきた馬鹿を裏で始末してきた。
きっと、広隆寺にも源にも同じような暗部が存在しているはずだがここで問題なのは俺が関わっていると言う事だ。
きっと、春斗も紅葉も自分たちの家がそういうことをしているのは知っていても自らが手を下したことはないだろう。
それが俺とあいつらとの違いだ。
「そ、そんなやめて! 謝るから」
「もうおせぇよ。紅葉をリンチにしたんだ。覚悟の上だろ?」
俺は近くに置いてあった鉄パイプを握って西宮を殴る。
鈍い音が倉庫に鳴り響くが、ここには誰も来ない。
「いぎゃ」
「大丈夫だ。ここでどれだけ泣き叫ぼうが誰かが来ることはない。ここはそういう場所だ」
こいつにはぜひとも最後まで苦しんでから死んでほしいものだ。
「わ、私の取り巻きになら何してもいいから。私はたずけで!」
「取り巻き? ああ、あいつらね」
そういえば、一緒に運んだ連中がいたな。
ま、こいつを見逃す気はないんだけど。
「そう! だから……」
「あいつらならもう死んだぜ? 存外すぐに死んじまったから今回はしっかり加減をしないといけないって思ってたんだよ」
「……え?」
「お前が最後なんだよ。だから、お前を始末したら全員まとめて冷凍して粉々にしてから海にまく。これで証拠は残らねぇんだ」
代々松井家がしてきた敵勢力の始末方法だ。
何十年もこうしてきているが未だに見つかったことがない。
「た、たすけ……」
「無理だな。恨むなら馬鹿なことをした自分自身を恨むんだな」
それから拷問に近しい行為を続け三時間が経つ頃には西宮は何も言葉を発しなくなっていた。
「さて、これで終わったな。あとは、医療班を呼んでっと」
西宮は本気で殺されると思っていたのだろうが、そんなことをするわけがない。
こんな奴らに手を汚すのも嫌だし、そもそも松井家の敵勢力の始末方法は本物だがここ数十年実行した例なんかない。
「ま、お灸を据えるのには十分じゃないかな。このことを他言なんかできないだろうし」
少し後に倉庫に入ってきた医療班に西宮が運ばれるのを見届けてから俺も倉庫を後にする。
「さてと、紅葉の見舞いにでも行こうかね」
俺は少しだけ軽くなった気分で、紅葉の病室に向かうのだった。
◇
「おかえりなさい。春斗くん」
「ただいま刹那。何もなかったか?」
「車で迎えに来てもらって何かがあったら流石に不味くないですか?」
家に帰るとすぐに刹那が出迎えてくれる。
こうしていると、もう婚約者ではなく妻では……?
と思ってしまうわけだけど、そんな馬鹿な考えは置いておくことにする。
「兄様おかえり。用事は済んだの?」
「バッチリと。これで問題はあらかた解決したから後はゴールデンウイークに向けて頑張るだけだな」
噂の発生源だった西宮の問題は今日片付いた。
刹那の幼馴染の件も夜桜家の件もすでに片が付いている。
これで刹那を取り巻く厄介な問題はすべて解決したとみていいだろう。
「だねだね! 楽しみだなぁ~温泉旅行」
「ですね。本当に温泉旅行ったことなくて。今からソワソワしてきました」
「早い早い。ゴールデンウイークまであと一週間あるんだぞ?」
まあ、自分が経験したことのないことをするときってワクワクするのはわかるんだけども。
今からソワソワしてたんじゃあ気疲れしてしまう。
そんな不器用な刹那も可愛いわけだけど。
「そ、そうでした。あと、一週間もあるんですね」
「そうですよ! でも、きっとあっという間ですよ」
「それはどうか知らんけど。ま、張り切って頑張ろうか」
「「おお!!」」
三人して手を合わせて残る一週間を全力で乗り切ることを誓う。
勉強したり、他のことをしていたら一週間なんてあっという間だ。
「じゃあ、今日こそは爽夏さんと夕飯を作るので楽しみにしててくださいね春斗くん」
「そうだよ兄様! 今日こそはちゃんと食べてもらうんだから!」
「楽しみにしてるよ。じゃあ、ちょっと着替えてくる」
二人の作る夕飯を楽しみにしながら俺は自分の部屋に行って部屋着に着替える。
その後すぐにスマホに着信が入ってくる。
「もしもし?」
「もしもし春斗か?」
「ああ、親父か。何日も連絡がつかなかったけど、何してたんだ?」
「私もいろいろと忙しくてな。なかなか連絡することができなかったんだ。悪いね」
電話の相手は今まで音信不通だった親父だった。
本当に神出鬼没というか、こちらからコンタクトを取りにくい人だ。
「それはもういいんだけど、何かあったのか? 親父から電話してくるなんて」
「いや、桜元の娘がリンチにされたと聞いてね。その後始末が終わったから一応連絡したんだよ。西宮家は完全に潰した。その取り巻きの家もね」
「ありがとう。助かったよ」
「いや、いいんだ。名家ってのは面子が大事だからな。舐められたらいけないんだよ」
いつもと何一つ変わらない声音でなかなかに恐ろしいことを言う。
親父はいつも笑みを浮かべていて、声音も特に変わらない。
だからこそ、何を考えているのかわからないから怖いのだ。
「それと、近々本家のほうに戻るからその時に婚約者を紹介しておくれよ。母さんも会ってみたいと言っているからね」
「わかった。ゴールデンウイーク終わりくらいでもいいか?」
「私たちはいつでもいいよ。しばらくは本家のほうにとどまる予定だし、君たちの都合のいい日に来てくれ」
「そうさせてもらう。それじゃあ」
「ああ。会える日を楽しみにしているよ」
こうして俺は電話を切った。
久しぶりに親父が本家に帰ってくるので、ゴールデンウイーク後の予定も決まってしまった。
◇
「これ、すごくおいしいよ」
「本当!? やった!」
「爽夏さんすごく頑張ってましたもんね」
「すごいな爽夏。この短時間でここまで料理の腕が上達するなんて」
刹那と爽夏が作ってくれた夕飯はすごくおいしくて、感動した。
こんなにおいしい夕飯を食べられる俺はなんて幸せなのだろう。
本気でそう思った。
妹の成長を間近感じられて嬉しい。
「えへへ~姉様の教え方がうまいんだよ」
「そんなことないですよ。爽夏さんが覚えるのが凄く早くて、教えている身としても楽しかったですから」
二人は本当の姉妹のように仲睦まじく会話をしていてなんだかほっこりする。
こんな生活がずっと続けばいいのに。
そう思う。




