第23話 春斗と壮太の復讐計画
「じゃあ、私たちはそろそろ帰りましょうかね」
「だな。いつまでも怪我人の病室に大勢で居座っていても迷惑だろうしな」
「迷惑ではないけど、時間も時間だからね。今日はお見舞いに来てくれてありがとね」
「ああ、俺は個人的に紅葉に用があるから春斗と刹那さんは先に帰っててくれ」
「そういう事なら。行こうか刹那」
「はい。お大事にしていてくださいね。紅葉さん」
俺たちは二人して病室を後にする。
壮太が気を利かせてくれたおかげで俺の昏い部分を見られなくて済んだ。
「それで、紅葉さんに何があったんですか?」
「……やっぱり気になるよな」
「気にはなりますね。もちろん、話せない理由があるって言うのなら無理に聞くことはしませんけど」
「いや、そう言うのじゃないんだ。だけど、ちょっとショッキングな内容だからね」
あまり聞いていて気持ちの良い話ではない。
でも、気になっているというのなら話しても問題ないだろう。
もちろん、刹那に話しても大丈夫な範囲でだが。
「そ、そうなんですか?」
「ああ、同級生にリンチに遭ったらしくてな。それを見つけたのがあの日の俺ってわけだ」
「そんなことがあったんですか!? でも、なんでわかったんですか? 紅葉さんがそんな目に遭ってるって」
「勘かな。妙な胸騒ぎがしてあいつを探し回ったんだ。そして、ボコボコになった紅葉を学校の屋上で見つけて救急車を呼んだんだ」
あの日あったことを簡潔に刹那に説明した。
もちろん、これから俺がやろうとしていることは伏せて。
「な、なるほど。とんでもない事があったんですね」
「だな」
「で、でも誰がそんなことをしでかしたんですか?」
「それはわからないんだよな。だから、明日から学校ではなるべく一人にならないようにしてくれ。何かあったら声をかけてくれて構わないから」
「わ、わかりました」
犯人自体はわかっているのだけど、刹那に伝えてしまったら何が起こるかわからない。
変な事態を避けるためにも、ここは伏せておいた方が賢明だろう。
「俺もなるべく刹那と一緒にいるつもりだけど、どうしても俺がいないときとかは壮太を頼ってくれ」
「はい。そうします」
壮太にも後で事情を話しておくことにしよう。
これで刹那の安全面は問題なくなっただろう。
まあ、注意しておきたいから学校ではしっかり目を光らせるつもりだが。
まあ、そもそもの問題明日さえ乗り切ればいい。
明日の学校終わりに西宮を潰す。
「じゃあ、今日は帰ってゆっくりするか」
「でも、私たちさっき起きたばかりですよ?」
「……そういえばそうだったな」
俺たちはあのまま昼過ぎまで寝ていたため、今日の夜眠れるか怪しい。
全く、変な時間に寝るものではないな。
「ま、勉強でもしよう。一か月後には中間考査があるわけだしな」
「それもそうですね。良ければ教えてください」
「もちろんだ。わからない問題があればすぐに言ってくれ。できる範囲で教えるから」
「ありがとうございます!」
こうして俺たちは有り余っているエネルギーを勉強に充てることにした。
おかげ様……というべきか勉強は大いにはかどった。
刹那もかなりはかどっているようでスラスラと問題集を解き進めていた。
何度か質問をされたが、一度教えるとすぐに吸収してくれるので教える身としてはすごくうれしい。
優秀な人間は見ていて気持ちがいいから好きだ。
◇
「春斗くん今日は帰りに用事があるんでしたっけ?」
「ああ。だから先に帰っておいてくれ。校門に爽夏と迎えの車を呼んでるから」
「わかりました。何の用事か知りませんけど、がんばってくださいね!」
「ありがとう。何もないと思うけど、刹那も気をつけて帰るんだよ」
校門で刹那が車に乗り込むのを見届けてから、再び教室に戻る。
すでに壮太は西宮と話しをしていることだろう。
俺も早く合流しなければ。
「よう、春斗。遅かったな」
「すまんすまん、刹那を見送ってたら遅れちまったよ」
「なら、仕方ねぇな」
「で、どういう状況だ?」
教室内には壮太と西宮、それに取り巻きの女子二人と男子数人が立っていた。
何やら話をしていたがうまく話は進んでいなかったらしい。
「ん~簡単に言うと、西宮たちが紅葉をリンチしたことを認めたうえで開き直ってる感じだな」
「救えないな。じゃあ、今からどうしようか」
「ま、待ちなさいよ! なんで広隆寺君がここにいるの!?」
「なんでって、幼馴染をリンチにされたんだ。落とし前くらいツケに来るだろ」
そもそもの話、広隆寺家と源家は盟友だ。
何かがあったらお互いに助け合うのが当たり前。
そして、今回紅葉がリンチにされたのなら俺はお礼参りしないといけない。
「は、はぁ! そもそも、あの女が私のことをコソコソ嗅ぎまわるからでしょ!」
「いや、そもそもはお前が刹那の悪い噂を流したのが始まりだな。これ以上問答をする気はないし、どうする?」
「ど、どうするって?」
「いや、もう謝ってもお前らは家ごと潰すことにした。この件には源家の現当主と広隆寺家の現当主に話を通してある」
二人ともアッサリ了承してくれた。
まあ、大事な愛娘と盟友の娘がリンチに遭ってるのだから当然か。
「そ、そんなのって……」
「お前らみたいな小物が出しゃばりすぎたんだよ」
こいつらが地獄に落ちるのは確定事項。
で、このまま素直に破滅するかは別の話だろう。
「はぁ、春斗。キレてるのはわかるけどそんなに挑発すんなよ。人数不利だぞ?」
「余裕だろ。俺一人で十分。お前は見ててくれ」
「言われなくてもそのつもりだ。お前の巻き沿いを食らいたくはないしな」
身体を少し動かして異常がないかを確認する。
幸いなことに身体はしっかり動く。
「に、西宮さん。こいつもリンチにしちまえばいいでしょ。人数ではこっちのほうが上です」
「そ、そうね。で、私たちの家を潰すことをやめさせよう!」
「……単純な思考回路で少し羨ましいよ」
あそこまで楽観視できたら俺ももう少しは幸せに生活できるかもしれないな。
でも、楽しさを得る代わりに愚かになるのなら別にいらないな。
「やっちまえ!」
そういって三人の男子生徒が俺を囲むようにして突進してくる。
全く、三人程度で俺を抑えられると思ってるのか。
呆れてくるな。
「先に言っとくけどやりすぎるよ。春斗」
「わかってる。骨折しないくらいに抑える」
「ならいいや。早めに頼むわ」
めんどくさそうにそういいながら壮太は後ろに下がる。
昔から二人で荒事をしてきたけど、こんなに簡単な作業はなかったな。
「さて、やりますか」
まずは、正面からこぶしを振りかぶっている男子生徒に最小限の動作で掌底を顎に叩き込む。
そのまま左足を軸にして右側にいた男子生徒の脇腹を蹴り抜く。
左にいる男子生徒への対応が遅れて、パンチを食らいそうになるがスレスレで躱す。
「あぶねぇ~なっ!」
避けてからもう一度蹴りを腹部に叩き込む。
気が付けば俺を囲んでいた三人の男子生徒が地面にうずくまっていた。
「はぁ、これだから群れることでしか粋がれないカスは嫌いなんだ。口で言う事だけ大きくて実力が伴っていない」
「そういうなって。そもそもお前に喧嘩で勝てる奴なんかそうそういるかよ」
「こ、広隆寺君って喧嘩も強かったの!?」
「なんだ、西宮知らなかったのか? 春斗が苦手なことなんて人の感情を読むことくらいだぞ?」
「おい、俺を人の心がないみたいに言うな」
腰を抜かして地面に座り込んでいる西宮を見下ろしながら壮太に返答する。
こいつは人のことを何だと思っているのか。
「じゃ、抵抗してもらったところ悪いけど地獄に落ちてくれ」
「ひ、ひっ!?」
涙目で俺を見つめてくる西宮だが、どんな顔をされても助けるつもりはない。
絶対に許さないし、こいつらの家が潰れるのは既定路線なのだ。
「春斗、こいつらの身柄俺が預かってもいいか?」
「別に好きにしてくれ。もう、広隆寺家と源家がこいつらの家を経済的にも世間的にも潰してる頃だろうから」
「んじゃ、ありがたく。連れてってくれ」
壮太がそういうと教室内に黒服を着た男が数人入ってきて西宮たちをどこかに連れて行ってしまう。
これから何が行われるのか知らないが、きっと彼女等にとって幸せなことではないのは確かだ。
「何気に俺はお前を一番敵に回したくないよ」
「ははっ、それは俺もだぜ」
壮太はニッコリ笑顔を浮かべながらそういうが、今はその笑顔が恐ろしいものにしか見えなかった。




