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幼馴染を実の姉にNTRされ絶望のどん底にいた女の子を拾った俺は、全力で幸せにすることにした  作者: 夜空 叶ト


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第19話 噂を流した犯人と甘える刹那

「ハルって本当に刹那ちゃんのこと好きだよね」


「何だよいきなり」


「いや、そんなハルに噂の出どころを見つけたから教えてあげようと思って」


「マジ?」


「大マジだよ。同じ学園の西宮にしみや 流歌るかって子知ってる?」


 西宮流歌、聞いた事のある名前だな。

 確か、親父から送られてきたお見合いの相手の名前にそんな奴がいたはずだ。

 それと、西宮家っていうと野心家で有名な一族だったはず。


「知ってるな。婚約を断った覚えがある」


「それだね。西宮さんは広隆寺家の婚約者になりたかった。でも、断られた。だから今の婚約者を引きずり降ろして婚約者の座を得ようとしてるんじゃないのかな」


「だとしたらすごく厄介だな。ちなみにだけど、西宮って学園ではどれほど影響力があるんだ?」


「う~ん、最近調べ始めたばかりだから詳しくはわからないけど。そこまで影響力はないはずだよ。性格が悪いって女子の間では評判が悪いみたい」


 まあ、刹那の悪いうわさを嬉々として広めているような人間だ。

 性格が悪いという評価はあながち間違いではないのだろうな。

 にしても、西宮家か。

 まさか、あんな小物が関わっているとは思わなかった。


「だろうな。で、そんな西宮は何がしたいと思う?」


「そんなの聞くまでもないでしょ。刹那ちゃんをハルの婚約者から引きずりおろして自分がハルの……広隆寺家の婚約者になりたいんでしょ」


「だよな~本当にめんどくさいな。どうやってやめさせるべきか」


 家同士の問題にはあまりしたくない。

 正直してもいいのだけど、西宮のような小物を相手に家を出したくないのだ。

 家柄では圧倒的に広隆寺のほうが上。

 そんな相手に家を持ち出すなんて恥も良いところだし、何よりもこれは俺と刹那の問題だ。

 家を使うわけにはいかない。

 これは俺のプライドの問題だ。


「素直に直接言ってやめさせるっていうのが一番なんだけど、そう簡単にも行きそうにないよね~」


「だから困ってるんだけどな。噂ってどれくらい広まってるかわかるか?」


「そうだな~学年にはまあまあ広まってる感じ。他学年にはそこまで広まってないと思う。そろそろ止めないと収集つかなくなるギリギリのラインだね」


「わかった。何とかしてみるよ。教えてくれてありがとな紅葉」


「いえいえ。あたしも友達の悪い噂が流されてるのは気に食わないからね。喜んで協力しますとも」


「お前みたいないい奴が幼馴染で俺は幸せだよ」


 苦笑を浮かべながら紅葉に背を向ける。

 休み時間に階段の踊り場で話すのにも慣れてきたとはいえ、あまり遅いと刹那を不安にさせてしまうかもしれない。

 そう思って俺は一足先に教室に戻ることにした。


「春斗くん、また紅葉さんと内緒話ですか?」


「そんなところだ。浮気とかするつもりはないから安心してくれ」


「そういう心配はしていません。でも、少し嫉妬してしまう婚約者の気持ちも考慮してください」


「ごめん。今度からは刹那を不安にさせないように頑張るよ」


 刹那の頭を撫でながら謝罪を口にする。

 まさか、刹那が嫉妬をしてくれるとは思いもしなかった。

 なんだか嬉しいし、ちょっと頬を膨らませている刹那はすごくかわいかった。


「全然いいんですけどね。でも、今日家に帰ったら甘やかしてください。少し不安になってしまったので」


「わかったよ。と言っても、何かしてほしい事でもあるのか?」


「……それは家で二人っきりになったら言いますね」


「……あ、ああ」


 なんだか色っぽくそういわれて変な意識をしてしまいそうになったけど、そんな邪な思考を吹き飛ばして意識を切り替える。

 いかんいかん。

 刹那にそんな他意はないのに、俺が変な風に勘違いを起こしてはいけない。


「そういう事ですので。家に帰ったら覚悟しておいてくださいね」


 彼女はウインクをしながら小悪魔のように微笑んだ。

 またもや、初めて見るような表情でドキリとする半面この顔を他の男子連中に見られてモヤっとする。

 一丁前に独占欲が顔を出している自分に呆れてくる。


「わかった。ちゃんと甘やかすから覚悟しておいてくれな」


「はい。楽しみにしてますね」


「お前ら……ナチュラルに教室でイチャつくなよな。胸焼けしそうだぜ」


「そんなにか?」


 壮太が呆れた視線を送ってくるが華麗に受け流して、自分の席に戻る。

 そういえば、最近は授業内容が難しくなってきていて真面目に聞いておかないと成績に響きそうだ。

 ジト目で見てくる壮太の視線を無視して、次の授業の予習を進めるのだった。


 ◇


「それで、甘えるって具体的に何をしたいんだ?」


「それは~ですね。少し恥ずかしいんですけど、抱きしめてもらったりしてもいいですか?」


 家に帰った俺は早速刹那を甘やかそうと、二人で俺の部屋に来ていた。

 なんやかんや長い時間一緒に暮らしてきて刹那が俺の部屋に入るのは珍しい気がする。

 大体はリビングで話してるし、何か理由がない限り部屋に来ることはないからだ。



「また、突然だな」


「だって、抱きしめてほしくなったんですもん。ダメですか?」


 潤んだ瞳で見上げられてしまっては断れない。

 こんなにも可愛い女の子に上目遣いでお願いされて断れる男性はいないと思う。


「ダメなわけない。じゃあ、抱きしめるぞ」


「は、はい。お手柔らかにお願いします」


 ぎこちない会話を交わしてから俺は刹那の背中に腕を回して抱きしめる。

 こんな風に誰かを抱きしめることが初めてだったので自分でもこうするのが正解なのかわからない。

 だけど、こうしていると刹那の存在を強く感じる。


「な、なんだか落ち着きます」


「そうか? 俺はすごくドキドキしてるんだが」


「それは私もですよ。でも、それ以上になんだか守られてる気がして安心するといいますか、落ち着くといいますか」


「ならいいんだけど。痛くはないか?」


 自分でも力加減がわからないので、少し不安になってしまう。


「全然大丈夫ですよ。むしろ、これくらい強く抱きしめられてる方が春斗くんの存在をより鮮明に感じられて安心できます」


「なんか、照れくさいな」


「ですね。でも、私は嬉しいですよ。今まで誰かにこんな風に抱きしめられたことなんてないですから」


「よかったよ。あと、言っておくが俺もこんな風に誰かを抱きしめるのは初めてだからな」


「知ってます。手が震えてますもん」


「言うなよな」


 言われてみれば、自分の手が震えていることに気が付く。

 だけど、いやな震えじゃない。

 こんな風に一番大切な人を抱きしめていられることが幸せで仕方がない。


「そういうところすごく好きですよ。私は本当に幸せです」


「刹那が幸せならよかったよ。これからも全力で幸せにしていくつもりだから覚悟しておけよな」


「それは楽しみですね。では、私は春斗くんに私を婚約者にしてよかったと思ってもらえるように頑張ります」


「すでに思ってるんだけどな」


「今以上に思わせて見せます」


 刹那の可愛らしい宣言を聞きながら、俺はしばらくの間刹那のことを抱きしめ続けた。

 刹那からはいいにおいがするし、全体的に柔らかい。

 それに、彼女の女性らしい部分が胸にあたって妙にドキドキする。

 自分が暴走しないように意識を裂きながら俺は幸せをかみしめるのだった。


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