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幼馴染を実の姉にNTRされ絶望のどん底にいた女の子を拾った俺は、全力で幸せにすることにした  作者: 夜空 叶ト


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第16話 刹那は幼馴染のことをどう思ってるんだ?

「ねえねえハルちょっといい?」


「ん? 別に良いけど何かあったのか?」


「うん。ちょっとついてきてもらっても良い? ここだと話しづらい事だから」


「ああ、それは別に構わないが」


 珍しい。

 紅葉が内緒話をしようとするのなんて今まで全くなかったというのに。


「壮太、ちょっと来てくれ」


「あ? どうかしたのか?」


「今から紅葉と人気のない場所で話をするから刹那に何かないか見て居てあげてくれ。何も無いとは思うけどな」


「わかった。任せとけよ」


 ニカッと白い歯を見せてサムズアップしてくる壮太に安心感を抱きながら俺は紅葉と二人で教室を後にして人気のない階段の踊り場に向かう。


「それで、わざわざこんな人気のない場所に呼びだして何の内緒話だ?」


「この学校はやっぱり終わってるってことが分かったから伝えておこうと思って。最近刹那さんの身辺を探るような動きがあるんだよね~」


「……なるほど、それは教室ではできない話だな」


「うん。あと、前の高校で刹那さんが浮気してたとか言う噂が流れ始めてるんだよね」


 それは中々に不味い問題かもしれないな。

 秋雨高校経由でうちの学校の誰かが知ったのだろう。

 面倒なことをしてくれる。


「誰が発信源かわかってるのか?」


「それは流石にまだわかってないよ。って、ちょっと落ち着いて。今のハル凄い顔してるよ」


「……すまん。少し冷静さを欠いていた」


 頭に上りかけた血を意識して下げる。

 血が上った状態では冷静さを保てないし、冷静でなければ正常な判断を下すこともできなくなる。


「いや、ハルが怒る気持ちもわかるよ。で、これからどうするかって話をしたくてさ」


「まずは噂の元を見つけ出すところか始めたいな。で、それから秋雨高校の噂を払拭しに行く。でも、それをするのは後だな。栄富学園の噂を消すところから始めないと」


「わかった。あたしもそれとなく友達に噂の発生源を聞いてみるね」


「ああ。頼んだ。それと、くれぐれも無理はしないでくれよ。紅葉に何かあったら意味が無いんだからな」


「わかってるって。ハルに心配をかけるようなことをする気は無いから」


 いつもの調子で元気に笑ってから紅葉は踊り場を後にした。

 紅葉の事だから何も心配はないような気がするんだけど、何故だか不安が拭えない。

 何かあるんじゃないかと無性に怖くなってしまう。


「なんなんだろうな。この胸騒ぎ」


 何かを見落としているかのような気持ち悪さ。

 そんな何かを感じて仕方がない。

 刹那に何かが起こるのか、それとも紅葉に何かが起こるのか。


「わからないのが気持ち悪いな」


 モヤモヤを抱えながら俺も踊り場を後にする。

 今回の件に夜桜栄華が関わっているのか否かはわからない。

 だが、今のあいつは失うものが何もない。

 そういった手合いは何をしでかすかわからないのが一番怖いのだ。


「今度からしばらく刹那から離れないようにしよう。離れるとしても信頼できる誰かをそばに置いておいた方がいいな」


 そう考えながら、俺も教室に戻った。


 ◇


「春斗くんってどうしてそんなに勉強ができるのですか?」


 学校が終わりリビングでくつろいでいるといきなり刹那がそんな問いを投げかけてきた。


「どうしてと言われてもな。なかなか難しい質問だ。逆に刹那はどうして料理がそんなに上手いのかって聞かれたら君は説明ができるのかい?」


「そうですね……私は昔からずっと料理をしていましたから。だって母は昔から私にだけご飯を作ってくれませんでしたから」


 少しだけ顔に翳を落としながら刹那は悲しそうにつぶやく。

 どうやら、刹那の触れてはいけない過去に触れてしまったようだ。

 全く、どうして刹那の母親はそんな風に娘を区別できるのか。

 俺は親になったことがないからその気持ちはわからない。


「悪いことを聞いたみたいだな」


「いえ。気にしないでください。昔は作業の様だった料理も今は春斗くんが笑顔で食べてくれてるので作り甲斐があるんです」


「それならいいけど。あと、さっきの質問に関する答えだけど俺にはよくわからない。一回やったことは大体初見で完全に覚えれるんだ。だからそこまで苦労をした覚えはない」


 もちろん、見たことのない問題は解けない。

 だから、過去に行われた模試の問題などを重点的に勉強しているわけだけど。

 正直こんな勉強法を他人に教える気にはならないな。

 自慢に思われかねないし。


「それはまた、すごいですね。ちょっと羨ましいです」


「そう言われてもな。こればっかりは生まれつきだからな」


「もしかしてですけど、料理とかも一回やったらすぐにできるようになるとかそんなこと言いますか?」


「……ノーコメントで」


 正直に言ってしまえばできる。

 勉強だけじゃなくて、運動でも家事でも一度見てしまえばある程度の完成度で再現できることができる。

 こういうこともあり、日常が退屈に思えてしまうのだ。


「春斗くんは今後絶対に料理をしないでください。私の立つ瀬がなくなってしまいます」


「立つ瀬がなくなるなんてことないと思うんだけどな」


「だって、春斗くんは何でもできるじゃないですか。料理くらいは春斗くんに勝っておかないと婚約者としての面目が丸つぶれです」


「本気で気にしなくてもいいんだけどな」


 俺はそういうステータスみたいなものをそこまで気にしていない。

 刹那と一緒にいることが一番好きで、刹那を笑顔にすることが俺の第一目標なのだから。


「春斗くんが気にしなくても、私が気にするんです。まあ、しょうもない悩みかもしれませんけどね」


「しょうもなくなんかないさ。君は君のしたいことを言ってくれればいい。俺は刹那が笑っている姿を見るのが大好きだからさ」


「……そういうのを真っすぐいうのズルい。照れる」


「ごめんごめん。でも、本心だからさ」


 最近分かったことなのだが、刹那は焦ったり照れたりすると敬語が外れるときがあるのだ。

 普段はクールな感じで美人系なのだが、こういう時は可愛い系に一気に様変わりする。

 それがギャップを感じてドキドキするのだ。


「知ってる。春斗くんはこういうことを素で言ってくるから困る」


「ごめんって。でも、そういう刹那もかわいくて好きだよ」


「またそうやって……」


「ただいまで~す。って、なんですかこの甘々雰囲気は!?」


 俺たちがTHE青春のような会話を繰り広げていると爽夏が学校から帰ってくる。

 しょっぱなから萎れた表情を浮かべる爽夏に苦笑いを浮かべながら爽夏の頭を撫でる。


「むむ、なんで頭を撫でるのですか? 兄様」


「いや、やっぱり爽夏は可愛いなと思ってな。それよりも今日は結構遅かったけど何かあったのか?」


「生徒会の仕事だよ。全く生徒会長も楽じゃないよ」


「えっ!? 爽夏さん生徒会長だったんですか?」


 そういえば言ってなかったな。

 爽夏は中学の生徒会長を務めている。

 俺も中学の頃はやっていたけど、高校に入学してからはやる気をなくしてしまって立候補すらしていない。


「そうですよ~というか、兄様が二年生から三年生のころまで会長を務めて私がその後釜で二年間勤めてる感じです」


「つまり、爽夏さんの通う中学は最近では広隆寺家の人が会長をしてるというわけですか」


「そうなるな。まあ、大したことじゃないけどな」


「ですね~もう少しで生徒会ともおさらばと思えるとなんだか少し嬉しいくらいです。で、兄様と姉様はリビングでイチャイチャしてたというわけですか?」


「人聞きが悪いな。まあ、否定はできないわけだけどさ」


 イチャイチャしてたと言われればそうなのかもしれない。

 ま、可愛い刹那を見られたから良しとしよう。


「爽夏さん、お腹すいてますか? 今から夕飯の支度をしようと思うのですが」


「めっちゃすいてます! 姉様の夕飯楽しみにしてます!」


「ふふっ、そんな風に喜んでもらえると作り手冥利に尽きますね。では、行ってきます」


 刹那がキッチンに行ったのを見送ったら、爽夏が俺に抱き着いてきた。

 昔からこんな風にスキンシップをしてくることが多かったけど、最近はそんなことがなかったから、何かあったのかと不安になってしまう。


「どうした?」


「いや、兄様がなんだか暗い顔をしてたから何かあったのかと思ってね。こうして爽夏ちゃんが慰めてあげてるの」


「本当にお前には隠し事ができないな。ありがと。ちょっち元気でた」


「良いってことよ。私も兄様にはたくさん助けられてるし、お互いさまってやつだよ」


「本当に爽夏は良い妹だよ」


 頭をくしゃくしゃ撫でながら感謝を伝える。

 いつもこの妹には隠し事ができないな。


「そんなの知ってるよ。それで、兄様は何に悩んでるの?」


「ちょっと、刹那の悪いうわさが学園で流れててな。どうやって払しょくしようかなと」


 道筋は見えている。

 でも、今回に関してはその過程で何か問題が起きる気がしてならない。

 些細な問題であればいいのだが、起こる問題が取り返しのつかないものであると不味い。


「やっぱり姉様のことで悩んでたんだね」


「まあな」


「大丈夫だよ。兄様が思うほど姉様は弱くないからさ」


「そうかな」


「そうだよ。兄様は過度に姉様を守ろうとしすぎてる。過保護なんだよ」


 過保護……か。

 言われてみればそうかもしれないな。

 流石に過保護が過ぎると嫌われてしまうか。


「確かにそうかも。ありがとな」


「なんでお礼を言われたのかわかんないけど。どういたしまして!」


 爽夏に助言をもらい今後の方針を新たに決めた俺はキッチンにいる刹那のもとに向かう。


「春斗くん? どうかしましたか?」


「いや、一つ無神経なことを聞いてもいいか?」


「春斗くんが本当に無神経な質問をしてくるとは思えませんし、いいですよ。私に答えられることならなんでも答えます」


「刹那は幼馴染のことをどう思ってるんだ?」


 確認しておきたいことだけど、確認しにくいことを俺は刹那に聞いてみるのだった。

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