第14話 夜桜家の終わりとゴールデンウイークに向けて
「ねえ、兄様」
「なんだ?」
刹那を甘やかし終わってお風呂に入っている時に爽夏がこちらに来て隣に腰を下ろす。
「姉様の家ってどうなったの?」
「なんだよ藪から棒に」
「いや、姉様の家庭環境がよろしくないのはわかってるし。兄様が何からの対応をしたんじゃないかなって思ったんだけど違う?」
相変わらずの勘の良さに関心半分、呆れ半分といった感じだ。
優秀な妹を持つ兄と言うのは複雑な心境になる物なのだな。
「まあ、対応はしたな。なんならさっき」
「やっぱりそれ関係で外出してたんだ。それ姉様には言ってあるの?」
「言ってない。あんまり俺のこういう面を見せたくないしな」
「ふふ、兄様が人の視線を気にするようになるなんて。私ちょっと嬉しいかも」
「お前は俺の母さんか何かか」
大げさな手振りで目元を拭って見せる爽夏に突っ込みを入れる。
でも、言われてみれば昔は誰にどう見られても全く気にしなかったのに。
「違います~妹です~で、どうしたの?」
「父親がうちの経営してる会社の役員だったから解雇にした。その後の対応は検討中だ」
「中々えぐい事をするね。でも、他に何をしようとしてるの?」
「刹那が元々通っていた高校で悪評が流れてるんだ。その悪評を払拭するのがまずは優先かな」
いつまでも彼女がいないところで悪評が流れ続けるのは正直言って気分が悪い。
それに、彼女が何の気兼ねなく、のびのびと過ごせるようにしたい。
「なるほどね。そうなったら姉様の元カレにも何らかの対応をするの?」
「それは今の所考えてないな。こちらに接触をしてくるのなら考えるけど、そうでないのなら今の所は放置で行く」
「それがいいね。まあ、今更元カレが兄様に敵うはずもないと思うけどさ」
それはわからない。
刹那が元カレのことをどう思っているのか、刹那が俺の事をどう思っているのか。
それが俺にはわからない。
他者に今まであまり気を使ってこなかったから他の人が何を考えているのかあんまりわからないのだ。
「どうだかな。と言うわけで刹那の実家の件はおそらく片付いたと思うけど、何か気づいたことがあったら俺に言ってくれ」
「了解! まあ、兄様が何とかしたのなら何もないと思うけどね」
「爽夏は俺のことを過大評価しすぎだ」
夜桜家はもう終わりだろうな。
でも、あのプライドが高そうな夜桜栄華が何をしでかしてくるかわからない。
しばらくは警戒しておいた方がいいだろう。
「そんなことないと思うけど。というか、兄様たちそろそろテストだよね?」
「ああ、もう少ししたらな。ゴールデンウイークが終わって少し経ったくらいに」
「じゃあ、ゴールデンウイーク三人でどこかに遊びに行こうよ!」
爽夏は受験生だし、遊びに行くのはどうかとも思ったけどずっと勉強というのも可哀そうか。
せっかくなら息抜きに良いのかもしれないな。
「わかった。後で刹那にも話しておく」
「ありがと! 兄様大好き~」
「おいこら、抱き着くなって」
嬉しかったのか満面の笑みを浮かべて抱き着いてくる爽夏を引きはがそうと格闘を繰り広げるのだった。




