第31話: 二つのお知らせ
ロミオとジュリエットの幕が下りてから数週間後、進天学園はいつもの状態に戻っていた。
つまり:予測可能なカオスに。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
朝八時の2-Aは、いつも通りだった。誰かが朝ごはんにたこ焼きを持ってきていて、当人が席に着く前にクラスの半分がそれを知っていた。奥の方では二人の男子が、どう見ても授業に関係のないことで言い合っていた。横の窓は寒いのに開いていた。誰かが開けて、誰も閉めようとしなかったから。
花は席でスケッチブックを開いて、電車の中から描き始めたイラストに手を加えていた。オーディトリアムを後ろから見た構図の、シンプルなやつ。なんとなく毎日そのページに戻ってしまっていた。理由はよくわからなかった。
「それ、いいね」
健二が、もう許可を求める必要のない人間の自然さで隣に座りながら言った。
「……まだ終わってないけど」
「知ってる。でもいいよ」
花は何も返さなかったけど、スケッチブックを閉じもしなかった。健二に見せたまま閉じないというのは、彼女の個人的な基準で言えば、感謝のスピーチをするのと大体同じくらいの意味があった。
三席離れたところで、星野 誠は先週のノートを「文化的な交流」として借りることを友達に説得しようとしていた。コピーじゃないと言い張りながら。
友達は納得していなかった。
「俺もその週のノート、ないんだよね」
「じゃあ同じじゃないか、問題なし」
「お前がノートを必要としてる側なのに、どこが同じなんだよ」
誠はそれを処理した。
「……確かに、それは一理ある」
と認めて、自分のノートを見た。最初のページに何か書いてあって、あとは白紙が三ページ続いていた。
(人生は難しい、あのロマンスアニメさえ見なければこうならなかったのに)
と、特に落ち込む様子もなく考えた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
2-Bは違った。
猫子は席でノートを広げて、ボールペンを速く動かしながら演劇部の次のプロジェクトについてメモを取っていた。ロミオとジュリエットが終わってから、彼女の中の何かがまた灯り始めていた。計画して、整理して、ゼロから何かを作ることを楽しむ、あの部分が。
周りでは二三人のクラスメートが話していた。誰かが長い間ずっと面白い存在でいると自然に生まれる、あの気軽な親しみやすさで。猫子は書くのをやめずに会話に参加していた。技術的には不可能なことなのに、彼女はそれをやった。
数週間前から猫子が評価していた声を持つ女の子、水嶋 葵が二席先にいた。視線が一度交わった。
猫子が笑った。
葵は少し緊張した様子で笑い返した。
(そう……もうすぐあなたは私のものよ……)
猫子はノートに目を戻しながら考えた。
部屋の反対側では、善狐が三つのドキュメントを同時に開いたタブレットを持っていて、静かに読める状況で世界が正しく機能していると感じる者の、完全な安らぎの中にいた。
2-Bは相変わらず2-Bだった。定義されたグループ、確立された力学、それぞれが知っているテリトリーの中に。
よく見ると、猫子と善狐の表情には、数ヶ月前と比べてわずかに違うものがあった。
重さが少ない、とでも言うか。
あるいは何かへの恐れが、どちらも絶対にそうは言わないだろうけれど。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
午前の中頃、放送で二年生全員に体育館への集合が呼びかけられた。
続いたのは、両クラスで二十五人がそれぞれ違うスピードと緊急度で荷物をまとめるという、あの特有のプロセスだった。
誠は十秒で全部まとめて、さっき入れたばかりのボールペンを探すのにさらに二十秒かけた。
花は取り出した順番と逆に、外科的な正確さで全部しまった。
健二は黙って花を待った。花はそれに気づいて、何も言わなかった。
体育館に向かう廊下で、2-Aと2-Bが合流した。混ざりたいのかよくわからない二つの川が合わさるような、あの自然さで。
2-Aは自分たちに割り当てられた以上のスペースを占領した。悪意があったわけじゃない。ただそういう動き方をする人たちだった。
2-Bはより整然と到着して、いつも部屋で一番整理されている側の人間の表情で2-Aを見た。
鞄を半分開けたまま廊下を進んでいた誠は、反対側から来た善狐とぶつかりそうになった。
二人が止まった。
「星野くん」
「善狐さん、おはよう」
嬉しそうに言った。
「もう十時十五分よ」
「それで?おはようはいつ言ってもいいものだよ」
善狐は一秒見て、諦めたようにため息をついた。それから三ヶ月前の彼女には技術的に不可能だったような自然さで言った。
「集会が何のためなのか、知ってる?」
「いや、全然」
「……いつも通り頼りになるわね」
でもそれは以前のような刃がなかった。批判というより、ただの事実の確認みたいに。
誠がいつもの笑顔で笑った。
善狐はその表情が処理系に変なことをする前に視線を外した。
【ただの二年生の集会。集中して、善狐……】
二人は同じ方向に歩き続けた。同じ場所に向かっているから同じ方向なのであって、それ以上の意味は何もなく、善狐は必要以上に二回それを頭の中で繰り返した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
体育館に集まった進天学園の二年生全員は、かなりの量の社会的エネルギーが閉じた空間に凝縮されたものだった。
猫子は数ヶ月かけて調整されたレーダーの正確さで、人の中から誠を見つけた。
「誠くん」
「あ、猫子さん」
「何のためなのかわかる?」
「善狐さんに二分前に同じことを聞かれた」
猫子が瞬きした。
「善狐さんに話しかけられたの?」
「うん」
「誰も死にそうにならずに?」
「うん」
猫子はうまく形にならなかった笑みで処理した。
(……なんか、面白いわね)
もっと何か言おうとしたところで、先生たちがなんとなく静かな状態を作り出した。三回試みて、上田先生の登場を経て。彼女の存在だけで集団のミュートボタンになるのだった。
中村先生、二年担当の先生で、長い間多くの人に多くのことを説明してきた人の声を持つ彼が、咳払いをした。
「皆さん、集まってくれてありがとう。お知らせが二つあります」
書類を探す間の、意図せざるドラマチックな間があった。
「一つ目です」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
キャンプだった。
三日間。二泊。山、バスで二時間。ホテルじゃなくて二段ベッドのある小屋。食事付き、ただしメニューは「シンプルで栄養バランスの良い」もので、学校用語でそれは誰も嬉しくないが誰も飢えないということを意味した。野外活動、ハイキング、チームワーク、二日目の夜にキャンプファイヤー。
二年生全員、必須。
先生が日程とスケジュールを説明し続ける間、体育館はリアルタイムで情報を処理していった。
「三日間?」
誰かが囁いた。
「二段ベッド?」
別の誰かが囁いた。
「ハイキング?」
三人目が、「活動」という概念についての自分と学校の定義が全く違うことを今発見した人のトーンで言った。
誠は説明のどこかの時点で手を挙げた。
「質問です、インターネットはありますか?アニメのエピソードを事前にダウンロードしておかないといけないので」
上田先生が殺意のある目で見た。
誠は手を下げた。
「学術的な興味からの質問だったんですが、そんなに大げさにしなくても」
と呟いた。
中村先生は免疫があるように続けて、全てを爆発させた部分に辿り着いた:
「キャンプの活動は、2-Aと2-Bの生徒を混ぜた混合グループで行います」
そして体育館が爆発した。
文字通りではない。でもほぼそれに近かった。
「私は田中くんと行きたい!」
「私たちもう五人いる!」
「まだグループ作れない!」
「なんで2-Aを見てるの?」
「友達だから!」
「グループは先生が決める!」
「え、マジで!?」
先生たちは、五十人の二年生が同時に急を要することがあると決めた時に大人がいつも成功する程度の成功で、秩序を取り戻そうとした。
そのカオスのどこかで、猫子は誠を見た。
(混合グループ)
と考えた。
(自由か強制かどっちでもいい。選べる可能性があるなら、誠くんは私と一緒。一番自然でしょ。同じ部活だし、全部理にかなってる)
(それに)
完全に合理的ではない部分が付け加えた。
(三日間は三日間……何か面白いことができるかもしれない)
四メートル離れたところで、善狐はまったく同じ方向を見ていた。
【混合グループ。自由選択があれば、星野くんと作業するのが最も効率的。動き方はもうわかってる。既に確立されている。適応の時間を必要としない……】
そして彼女の中に……別の思考が浮かんだ……
【……純粋に論理的な判断よ】
【完全に論理的】
【それ以外の何でもない……】
二人は全く同じことを望んでいた。
全く違う角度から。
そして相手が同じことを考えていることをまだ知らなかった。
宇宙は、いつも通り、メモを取っていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
「静かにしなさい!」
上田先生だった。当然。
体育館は他の文脈では印象的だったはずの速さで静まった。
中村先生がもう一度咳払いをした。
「ありがとう。繰り返しますが、グループは事前にお知らせします。まだ決まっていません」
安堵と失望が場合によって入り混じった集団的な呟き。
「そして」
中村先生が書類を見ながら続けた。
「まだ終わっていません。二つ目のお知らせがあります」
それで呟きすら止まった。
彼のトーンが違った。もっと慎重な感じ。
「本日より、進天学園に新しい二年生の生徒が来ることになりました」
沈黙。
それから二秒後に騒ぎになる種類の沈黙。
なぜなら、そんなことは起きないから。進天学園は学期途中に誰かが来るような学校じゃない。入学の手続きは長く、待機リストはさらに長く、学年途中に二年生に転入するのは、相当特別な事情がないと起きないことだった。
「転校生?」
「今頃?」
「誰?」
猫子はすでに三つの仮説を持っていた。善狐はこの時期に進天学園に来ることができる様々な理由の統計的確率を計算していた。
誠は考えた:
(あ、新しい生徒か)
そして、特に急いですることがない人間の余裕で待った。
「どうぞ」
中村先生が体育館の扉の方を向いて言った。
扉が開いた。
一人の女の子が入ってきた。
背が高い。黒い髪、まとめ方がだらしなく見えるけどたぶんそうじゃない。進天学園の制服を、誰かに良く見せようとしていない人間の特有の無頓着さで着ていた。ポケットに手を入れて歩いていた、規則違反だったが、どうやら気にしていないようだった。
体育館を見た。
体育館が彼女を見た。
彼女は瞬きしなかった。
それから、知らない人だらけの体育館に一人で入るという状況に合わない落ち着きで、中村先生の隣に立って待った。
「彼女は星野 ケイさんです」
中村先生が発表した。
そして三つのことが同時に起きた。
猫子はその苗字を聞いて、頭の中に何かが記録された。
善狐はその苗字を聞いて、目がすぐに2-Aのグループの中の誰かを探した。
そして星野 誠は、ずっとあの落ち着いた状態でいたのに、完全に静止した。
今、自分と同じ苗字を聞いたから。
別の人物について言われた。
進天学園の中で。
女の子を見た。
女の子は、視線を感じたかのように、彼を見た。
何も言わなかった。
ただ見た、ちょうど一秒だけ、誠が分類できなかった表情で。
(まさか……進天学園に他にも星野がいたの?)
第31話:完
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
【作者より】
「そして三日目に、消えた作者たちの中から復活し、ついに待望の新章を投稿した」
……と言いたいところですが、三日どころか四週間も消えていました。なんてこった。
まあ何はともあれ、皆さんこんにちは!お元気ですか?
僕はというと……まあ何と言えばいいのか、三、四週間ほど失踪していましたが、その理由は世界で最も恐ろしい病「恋」にかかっていたからです(笑)。そう、この作者も恋の毒牙からは逃れられませんでした。まあ、なっちゃったものは仕方ないですよね!
とにかく、ついに戻ってきました!今月こそは目標の第45話まで到達したいところです(7月からずっと同じこと言ってますね、ハハハ)。
というわけで、大変お待たせしました、本作の第31話です!こんなに長く空けるのはもうやめますし、今度からは(できれば)事前に連絡しますね。
あ、それと「星野ケイ」が誰なのか気になった方は、ぜひ
【傷跡が教えてくれた愛】
をチェックしてみてください。そこからそのまま連れてきたキャラです。ただ、ケイはあくまでサブキャラで、主役は誠と彼のふたりのヒロインですのでご安心を!
それでは今回はこのへんで。うまくいけば今週の土曜日に第32話を投稿します!もし土曜日に間に合わなくても、来週の月曜日には絶対にお届けしますので!
最後まで読んでいただきありがとうございます。第31話、楽しんでいってください!




