第30話: 中立地帯
進天学園の図書館には、誰もが知っている不文律があった。
本についてでも、時間割についてでも、図書館が通常ルールを持つようなことについてでもない。司書の福田さんについてのルールだった。六十代の女性で、ほとんどの教師よりも長くこのポストにいて、長年かけて特定の眼差しを磨き上げた。二秒以内にどんな生徒でも黙らせるのに十分な眼差しを。
何も言う必要がない。ただ見るだけ。
そしてそれを全員が知っていた。
猫子も知っていた。
善狐も知っていた。
つまり図書館は、技術的に言えば、中立地帯だった。
そうしたかったからではなく。
そうじゃなければ、福田さんが二人を見て、二人とも追い出されるから。
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猫子が先に着いた。
ちょうど四十秒だけ。
自分を告知はしないが、それでも空間を占領するあのやり方で入ってきて、一番奥の机に鞄を置いた。窓からも福田さんからも一番遠い席。ノートのフォルダーを取り出した。
四十秒後、善狐が入ってきた。
二人は目が合った。
「団蔵」
「善狐」
その交換の集合的な熱量は、おそらくゼロだった。
善狐は計画を実行していて特にコメントの必要のない人間の自然さで猫子の向かいに座った。タブレットを出した。開いた。
猫子はそれを全部、完璧に愛想よくて何も良いことを意味しない笑顔で見ていた。
(時間通り、当然ね。もちろん時間通り。移動時間を三つのマージン変数で計算したんでしょう……考えるだけで疲れる)
善狐はタブレットから目を上げずに、似たようなことを考えていた。
(先に着いて席を選んだ。計算通り)
(ただし選んだ席は照明の効率が最も悪い)
(私に有利を与えないためにそうしたんだろう)
(かなり予測可能)
二人の間の沈黙は、言いたいことが山ほどあって、それをどれも今は言わないと暗黙のうちに合意している二人特有の質を持っていた。
福田さんがカウンターから二人を見た。
二人は同時に、示し合わせることなく、真面目に勉強している生徒の表情を作った。
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「星野くんはどこにいるの?」
猫子が、完全にさりげないトーンで言った。
あまりにさりげなくて、善狐すら少しペースを乱された。
「え、なんで私に聞くの?」
善狐が同じトーンで答えた。
「ディベート部の人だから」
「演劇部でもあるけど」
少し間。
「へえ……今日来なかったの?」
「ディベート部には来なかった」
「演劇部にも来なかった」
二人は黙ってそれを処理した。
(彼女と一緒にいるの?)
猫子が考えた。
(彼女と一緒にいるの?)
善狐が考えた。
どちらも声に出さなかった。声に出すと、なぜ気になるのかを説明しなければならなくなるから。
「何か用事があったんでしょ」
善狐がようやく言った。
「そうね」
猫子が同意した。
そして二人はそのテーマは終わったと決めた人間の決意で、それが明らかに終わっていないにもかかわらず、それぞれの資料に戻った。
(きっと演劇部で彼女と一緒にいるんだわ)
善狐は裏付けるデータが何もないのに確信を持って考えた。
(きっとディベート部で彼女と一緒にいるんだわ、完全に押さえられてる)
猫子も同じように証拠なしで考えた。
誠はその瞬間、自分の部屋で手に接着剤をつけて、床に段ボールを広げて、午後三時に一週間あると余裕だと思って始めたのに四時には戦国時代について何も知らないことが判明した出来かけのジオラマと格闘していた。
「なんで寝てしまったんだよおおお」
でももちろん、どちらも知らなかった。
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「私の提案はこれ……大阪の陣」
善狐がタブレットを猫子に見えるように向けながら言った。
猫子は見た。
よくできていた、認めないわけにはいかない。整理されていて、寸法があって、入手可能性とコスト順に並べられた材料リストがある。先にやることを考える人間だけが作れるドキュメント。
「悪くないわね、善狐……でも私は関ヶ原を提案する」
猫子がフォルダーを机の中央にずらしながら答えた。
善狐は見た。
こちらもよくできていた。戦場のスケッチ、視覚的な参照、二つの陣営をインパクトのために異なる色で表現する方法についてのメモ。作る前に何かがどう見えるかを正確に知っている人間が作るドキュメント。
二人は相手のドキュメントを見た。
それから顔を見合わせた。
「いいスキームね……でも大阪の陣の方が扱いやすい」
善狐が言った。
「かもしれないけど、関ヶ原の方が視覚的なインパクトがある」
猫子が言った。
「視覚的なインパクトで物流的な複雑さは補えない」
「物流的なシンプルさでつまらない結果は補えない」
「つまらいとは言っていない」
「そうかもしれないけど、意味としてそう言ってた」
「言ってない」
「まあまあ、あなたのトーンがそう言ってたわ」
善狐が口を開けた。
閉じた。
福田さんが二人を見た。
二人はまだ上がっていないけど明らかにその方向に向かっていた音量を下げた。
(この人……)
猫子が思った。
(この人……)
善狐が思った。
(私を狂わせる)
(私を狂わせる)
二人は同時に思った。
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問題は、どちらも間違っていないことだった。
それは二人とも知っていた。今この瞬間に声に出して認めることは完全に不可能だったけれど。
大阪の陣の方が扱いやすかった。一週間は短い。善狐が挙げた材料は入手可能だ。結果はしっかりしていて、よく文書化されていて、上田先生が求めたもの通りになるだろう。
関ヶ原には大阪の陣にないものがあった。視覚的に面白い。二つの陣営。緊張感。国全体を変えた結果。見た瞬間に重要だったとわかる種類のもの。
二人は、相手が何かについて正しいことを知っていた。
そして二人は、相手がそれを知っていることを知っていた。
だから認めることがさらに難しかった。
「これは馬鹿げてる……どちらも選ばなかったら?」
猫子がついに言った。
善狐が顔を上げた。
「第三の選択肢を提案してるの……何?」
猫子が続けた。ずっと何かを考えていて、言うタイミングと決めた人間のトーンで。
「何を」
「本能寺」
沈黙。
善狐が処理した。
本能寺の変。信長。光秀。1582年。場面が限定されていて、登場人物が少なく、炎、緊張感、戦国時代全体を変えた瞬間。視覚的に面白い。歴史的に重要。物流的に扱いやすい。
(いい選択肢……)
(というか妥当な選択肢)
(客観的に、今週の基準では二人が提案したものより優れている)
(でもそうそのまま言ったら……いや、こう言おう)
「妥当な選択肢ね」
善狐が言った。
猫子は彼女を見た。
「それは気に入ったってこと?」
「妥当だと言ってる」
「同じことよ、ねえ」
「いいえ、この意味では違う」
「同じに聞こえる」
「かもしれないけど、繰り返すけど違う」
猫子が笑った。
前の笑顔じゃなかった、完璧に愛想よくて何も良くないやつ。これは違う何かがあった。もう少し本物に近い何かが。
「本能寺にしましょう……」
と言った。
「本能寺……」
善狐がぼそっと確認した。
そして二人は、合意に達して、誰も途中で死なずに達したことを処理している人たちの表情で、それぞれの資料を見た。
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作業を始めた。
猫子は白い紙を取って描き始めた。早く、何かを描く前にそれがどう見えるかを正確に知っている人の自信で。中央に寺、炎、簡略化した兵士たち。
善狐はスケッチをしばらく見た。
「寺の比率をもっと大きくしないと」
「大きくすると、根元に炎が入らない」
「炎は上に行く、根元じゃなく」
猫子は考えた。
違う形で描いた。
その方がうまくいった。
声に出しては言わなかったけど、変えた。
善狐はタブレットで寸法の計算を始めた。土台の寸法、寺の高さ、要素の比率。
「炎の材料は?」
目を上げずに聞いた。
「クレープ紙。オレンジと赤。内側に細い針金を骨組みにすれば形を作れる」
善狐はメモした。
「寺は?」
「構造にプレスボード。細かい部分は手に入れば発泡スチロール材」
「発泡スチロール材は重さが増す」
「じゃあ土台を補強する」
「それでさらに重さが増す」
「じゃあ側面の材料を減らす」
善狐が止まった。
頭の中で計算した。
(理にかなってる)
言わなかった。
でもメモした。
猫子はメモしたことに気づいて、何も言わなかった。
二人は作業を続けた。
照明の問題は二十分後に来た。
猫子は内部の光の効果を加えたかった。炎が内側から光っているように見えるような何かを。
「土台にLEDテープ」
提案した。
「電池が必要になる」
「じゃあ小さい電池を使えばいい」
「不要な重さが増す」
「でも重さの問題はもう解決したんじゃ?」
「そうだけど、あなたがやろうとしていることは技術的な複雑さが加わる」
「私はLEDのつなぎ方を知ってる」
善狐は彼女を見た。
「LEDのつなぎ方を知ってるの」
「私の父は映画プロデューサー」
猫子はそれが全てを説明するかのように言った。
「それは質問の答えになってない」
「撮影現場で育った。あなたが想像するより照明については詳しい」
善狐はしばらく彼女を見た。
(かなり理にかなってる。そして本当なら、私が計算していたよりも効率的に問題を解決する)
「わかった」
と言った。
猫子は瞬きした。
「わかった?」
「わかった」
「議論なしに?」
「論拠は確かだった」
猫子は驚きと、分類するのに少し時間のかかる何かの混ざった表情で彼女を見た。
(今、誰も死なずに譲った?)
(それは本物?)
その表情が顔に残りすぎる前にスケッチに戻った。
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六時十五分前に、善狐は午後の成果を見た。
猫子のスケッチには今、余白に寸法が書き込まれていた。ある部分は善狐の字で、別の部分は猫子の字で。材料リストは増えていて、入手優先度順に整理されていた。土台のスキームは確かなものだった。
ジオラマはまだ存在しない、計画だけが存在した。
でもいい計画だった。
どちらか一人が作ったものより良かった。
(思っていたよりうまく機能した)
善狐は到達したくなかった結論に辿り着いた人間特有の居心地の悪さで考えた。
(彼女が優れているとか劣っているとかじゃなく。私がカバーできない角度を正確にカバーしているから)
(それは……効率的)
(耐え難いけれど)
猫子は机の反対側で、誰かが見ていて演じるわけじゃないときに持っているあの整然とした動きで資料をしまっていた。
(そんなに悪くなかった)
同じ居心地の悪さで考えた。
(つまり、まだ彼女のまま。問題を方程式として、人を変数として扱う人のまま)
(でも作業するとき……本当に作業する)
(それは、認めないといけないけど、大したことよ)
声に出しては認めなかった、本当にどちらも認めなかった。二人とも自尊心が強すぎてそれはできなかった。
そんなわけで、猫子が立ち上がった。
「明日同じ時間、善狐」
と言った。
「ええ」
善狐がタブレットを閉じながら答えた。
猫子が鞄を持った。出口に向かって歩き始めた。
止まった。
計画したことじゃなかった。ただそうなった。演じていないときに猫子に物事が起きる形で。
「善狐」
善狐は名前で呼ばれたことに、少し意外そうに顔を上げた。
「そんなに悪くなかったわ」
一秒かけてそれを処理した。
「あなたも……猫子」
善狐が答えた。
二人はしばらく静止した。
前の沈黙じゃなかった、言いたいことでいっぱいのやつ。これは違った。もっと軽かった。
「慣れないでね」
猫子が言った。
「同じことを言おうとしてた」
猫子が先に出た。
善狐は一人で机に残って、ゆっくり荷物をまとめた。
二人で作ったスケッチを見た。
(まだ耐え難い)
と思った。
少し間があって。
(でも、思っていたより楽かもしれない)
ただの紙にしては丁寧すぎる扱いでスケッチをしまった。
そして図書館を出た。
福田さんは二人が出るのを見ていた。
それから二人がいた机を見た。
整頓されていた。騒ぎなし。問題なし。
あるべき形になったときの表情で一度うなずいた。
そして本に戻った。
第30話:完
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【作者より】
みなさんこんにちは~、お元気ですか?あなたのセクシーな作者がまた来ましたよ、もう一話届けにきました。約束通り、今週だけ毎日更新でいきます。
それはさておき、今回の話はどうでしたか?個人的にはかなり落ち着いた無難な話になったと思いますが、まあそれはそれで。とにかく物語はちゃんと進んでいます。
それとキャンプのことを忘れたんじゃないかと思ってる方へ——忘れてないです。今のこれは次の大きな「アーク」に入る前のちょっとした息抜きです。なので希望は捨てないでください。
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零時卿 より




