第25話: 生産的なカオス
五日後。
「"なぜロミオはロミオでなければならないの?お父様を否定して、その名を捨てて——"」
「ちょっと待って、カットッ!!」
ハナの声がストップウォッチの隣からリハーサルを切り裂いた。必要以上にシーンを伸ばすより、タイミングよく止める方が価値があると学んだ者の正確さで。
舞台の上で身振りの途中だったマコトが止まった。
「え?何が起きた」
脇で腕を組んで見ていたマミコが彼を見た。
ハナがノートを確認した。
「マコト、第二幕第二場の三分四十二秒で台詞のミスを二回犯したわ。それに一行まるごと即興したでしょ」
「どの即興?」
とマミコがやや困惑した様子で尋ねた。
「マコト君が『まあ、ロミオが言いたいのは、苗字なんてどうでもよくて、大事なのはその人自身だってことだよね』と言った部分よ。元の台詞の代わりに」
「でも、それは言い換えであって、即興じゃないから技術的には問題ないんじゃないか」
舞台からマコトが言った。
「それでも違いは重要よ」
「そう?でも違いはそんなに大きくないだろ」
「シェイクスピアはそう書かなかったわ」
「でも同じことを言ってる」
「違う言葉で」
「元の文よりわかりやすい言葉でね」
マミコはこの五日間の個別稽古で磨いてきた表情で彼を見た。何かが正しいのに、認めると面倒になるから認められない、そういう顔だ。
「もういいわ……時間の割には素晴らしい結果よ」
ハナが、この二つの個性の間を上手くくぐり抜けるいつもの外交的な穏やかさで言った。
「特に五日前にマコト君が舞台の正しい袖を知らなかったことを考えれば」
「正しい袖がどっちか、まだ完全にはわかってないんだよな」
「あなたの右よ」
「客席からの右?それとも私から見た右?」
「あなたの右よ。今週だけで三回目の説明なんだけど、しかもまだ月曜日よ」
「わかった、わかった。じゃあ、客席から見ると左ってことだ」
ハナは無限の忍耐力をもってしても、両手を髪にやって深く息を吐いた。
「マコト君」
「何?」
「それが覚えられないなら……椅子がない方の袖から入ればいいわ」
「あ、それいいじゃん。そっちの方がわかりやすい」
客席のどこかで、笑いをごまかそうとした咳払いが漏れた。部員たちは五日間かけて、マコトとのリハーサルはハルカとのリハーサルとは質が違うということを身につけてきた。
より良くも悪くもなく、ただ——違う。
ガラスの上を歩くのと、土の上を歩くのとの違いのように。片方は恐怖心から注意を払い続ける。もう片方は、次に何を踏むかはわからないのに、どういうわけかいつも確かな地面が見つかるから注意を払い続ける。
「じゃあ、十分間休憩しましょう」
マミコが拍手をして言った。
部員たちは、集中していた人間がいきなり集中しなくていいと言われた時の、あの特有のエネルギーで散り散りになった。
ケンジはまっすぐ鞄に向かって水を探した。
ハナはメモの見直しを始めた。
がっしりした男子は、今日はもう背中が限界だという人間のほっとした様子で客席に座り込んだ。
そして残りの部員たちは小さなかたまりに分かれて話し始め、ハルカがいた数週間の間に失われ、今また当然のように戻ってきたあのざわめきをオーディトリアムに取り戻していった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◆ ◇
マミコはグループから少し離れた。
遠くではない。部のざわめきが前景ではなく背景になるくらいの距離だけ。
少し一人になる時間が必要だった。
舞台の袖の壁に背をもたせかけ、評価ではなくただ見るという視線でオーディトリアムを眺めた。
(五日間)
(五日前、マコトは演技のための呼吸すら知らなかった)
(そして今……)
十分前のリハーサルのことを思い出した。技術的には長すぎるのに、それでも機能する間を置いて台詞を言っていたこと。舞台の文脈の中で彼女のいる方向を見るとき、なぜかオーディトリアムがいつもより静まり返ること。
(なんでこんなに早く覚えるんだろう?何か秘訣があるのかな、それとも星野家の血筋かも……)
技術の話ではない。技術はまだ相対的に見て惨事だ。でも技術の下にある何か、ハナが初日に言葉にしようとして、部員たちがいまだに正確な名前をつけられずにいるあの何か。
(そして部員たちも……)
小道具の位置について誰かと熱く議論しているケンジを見た。赤いマーカーを持って自分の判断で何が重要かを決めながらメモを見直しているハナを見た。三週間前に全てキャンセルしようと言っていたがっしりした男子が、今は以前の諦めでも諦める前の様子でもない表情で客席に座っているのを見た。
(戻ってきてる)
(自分たちらしくなってきてる)
(ハルカに作られたロボットじゃなく、自分たち自身に)
胸の中にあったのはちょうど安堵ではないけれど、その近い親戚のようなものだった。
そしてちょうどそのとき、自分の思考に一番深く沈んでいたまさにその瞬間、誰かが肩に触れた。
反射は即座で、無意識で、状況に対して完全に不釣り合いだった。
踵を軸に振り返った。手が完璧な弧を描いて飛んだ。
パチン!!
往復びんたの音がクラブの声をも超えて響いた。
マコトがあらゆる物理法則と重力に逆らいながら後ろに飛んで、木の床に鈍い音を立てて仰向けに倒れた。
マミコは瞬きした。自分がやってしまったことに気づいてパニックが顔を満たした。
「マコト!大丈夫!?」
明らかな答えがあったにもかかわらずマミコが尋ねた。
マコトは三秒間、オーディトリアムの天井を見つめた。それからゆっくりと手を上げて赤くなった頬をさすった。
「なんで……いつもびんたするんですか」
ぼんやりとした声で言葉を引きずりながら言った。
「もう偶然じゃないですよね、マミコさん。白状してください……俺のことが嫌いですよね?」
「違う、違うの。防御反射なのよ」
「それは言い訳になりません。二週間足らずで三回びんたされました」
「三回じゃないわ、それより少ない……」
やや恥ずかしそうに言った。
「嘘です。きっかり三回です。全部数えてあります」
一本ずつ指を立てて数え始めた。
マミコは口を開けた。
閉じた。
「あなた……あなたのせいよ」
「俺が?俺がびんたされるのが俺のせい?」
「違う、でも予告なく後ろから肩を触るから人が驚くでしょう」
「肩ですよ。最高機密の金庫のアラームじゃない」
「私にとってはそうなの」
マコトは立ち上がり、いつかは起きると分かっていることが起きてしまった人間の諦めで頬をさすった。
「マミコさん、正直に言っていいですか」
「たぶん何か的外れか馬鹿げたことでしょうね」
「そうですね……でも俺のことが嫌いだと思ってます」
「嫌いじゃないわよ!」
「二週間で三回」
「三回じゃないってば!」
「三回です、マミコさん。楽屋で一回。火曜日のリハーサルで一回。そして今日」
マミコは彼を見た。
数えることは彼に軍配を上げることで、軍配を上げることは沈黙より悪かったから、何も言わなかった。
「邪魔するつもりじゃなかったんです」
マコトがトーンを変えて言った。
「わかってる」
マミコも同じようにトーンを変えて答えた。
「じゃあ……何の用?」
「調子を聞こうと思って」
マミコは彼を見た。
いつもの警戒ではなく、この特定の瞬間にこの特定の質問を予期していなかった人間の驚きに近いもので。
(最後にいつ誰かに調子を聞かれて、本当に答えを聞いてもらえたのだろう?)
「なんでそんなこと聞くの?」
「だって五日間、俺に演技を教えて、舞台を準備して、部を仕切って、生徒会や顧問の先生にメールを返して、誰もマミコさんの調子を聞いてないから」
マミコはすぐには答えなかった。
「それが今週気づいたことの全てです」
何の強調もなくマコトが付け加えた。
「それで?」
やや緊張した様子でマミコが答えた。
「誰かが聞くべきだと思って」
沈黙。
マミコはステージを見た。
そしてマコトだから、マコトと話すと何か他の誰かと話すときとは違う形で言葉が出てきてしまうから、正直に答えた。
「幸せよ」
最初にそれを言った。
「本当に。部が部らしく戻ってくるのを見ている……どれほど恋しかったか分かったのは、またそれを手にしてからだわ」
少し間を置いて。
「あなたも……思ったより早く伸びてる。準備ができてるとは言わないけど。でも伸びてる。それだけでも何もないよりずっといい」
「二週間で俺に言ってくれた中で一番優しい言葉です。まだ傷ついてますけど」
「大げさにしないで」
「俺が演劇史上最悪のロミオだって言いましたよね」
「それは五日前の話よ」
「もう変わったってこと?」
マミコは彼を見た。
「依然として演劇史上最悪のロミオよ。でも今は最悪の中で最高」
マコトはそれを処理した。
「まだ傷つくけど、良いことに受け取るしかないか。ちゃんと傷ついてますけどね」
誇らしげに言い、そして——
「でも?」
マミコは彼を見た。
「でも、何?」
「幸せだって言った。でも"でも"があるでしょ。違う?」
マミコはでもという言葉を言っていなかった。それでもマコトはそれを聞いていた。物事に対するその過程のない確かさで。
マミコはずっと止めていた息を吐き出した。
「まあ、気づいてたのね。実は……疲れてもいる」
と言った。
「なんで?」
「午後に教えるのに加えて、他の全てのことも仕切っているから。生徒会がもう日程を決めたの」
マコトは静止した。
「え?いつ?」
「一週間後」
「一週間後って何が?」
「全部よ、マコト君」
マミコは鞄から一枚の紙を取り出した。列と項目と領域ごとに違う色で区分けされた、きちんとした紙。数日かけてこれを考え、思考を構造に変えた人間だけが作れる種類の書類だ。
差し出した。
マコトは受け取った。
見た。
もっと見た。
「これは……何個あるの?」
「必要な数よ」
「でも多すぎる」
「わかってる」
「ひどいな……舞台を準備するのって、椅子を並べればいいくらいのことだと思ってた」
マミコは、それを以前にも聞いたことがあって、聞いた当人を理解しようとしている人間の、いら立ちと理解の混ざった表情で彼を見た。
「じゃあ今知ったわね」
「まあそうですね」
少し間を置いて。
「みんなに伝えるべきじゃないかな」
マコトが言った。
「そのつもりだったわ」
「あ、すごい。手伝っていいですか?」
マミコは彼を見た。
そしてちょうどそのとき、紙を手に持ち確認ではなくただ待っているような顔をしているマコトを見て、胸がまたあの動きをした。
(この人)
(三週間前に舞台を準備するのに椅子を並べる以上のことがあると知らなかったこの人が、今は手伝っていいかと聞いている。まるでそれが当たり前のことみたいに)
「ええ、まあ、ありがとう」
と言った。
「手伝っていいわよ」
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話は短かった。
マミコに言いたいことがなかったからではなく、最近の数ヶ月で、短い話は長い話より遠くまで届くと学んだからだ。
「一週間です」
ステージに集まった部の前に立って言った。
「生徒会が決めた日程、それだけの時間しかない。カバーが必要な領域はこれ」
読み上げたリストには、衣装担当のハナと裁縫経験のある一年生二人。小道具担当の四人のグループ、既に材料を持ち込み始めていた。照明担当は、誰よりもオーディトリアムのシステムに詳しいいつもの男子。チケットとポスター担当は、ケンジと字のきれいな二年生。全体のスケジュール管理は、頼んでもいないのに部で一番几帳面なハナも兼任。音楽と音響効果担当は、先週ラップトップを持ち込んで既に仮の再生リストを持っている二人の部員。
そして全ての領域について同じように。
終わると、部員たちは拍手した。
誰かが話し終えた時の礼儀的な拍手ではない。何が自分に期待されているかを明確に伝えられて、自分にはそれができるとわかった時の拍手だった。
マコトも拍手した。
それから静止した。
自分の名前がどの担当にも出てこなかったことに気づいたから。
「マミコさん、一つ聞いていいですか」
「どうしたの、マコト」
「俺は何をするの?」
「台詞を覚えること」
「それはもちろん当然として、それ以外に」
「役に集中すること」
「それだけ?」
マミコは彼を見た。
「それだけよ。残りは部が全部受け持ってる。あなたは——」
「嫌です」
マミコは瞬きした。
「嫌ですって?」
「全員が働いているのを眺めながら自分だけ台詞の練習をするのはフェアじゃない。そんなことできない」
「一番効率的な方法は——」
「効率なんてどうでもいい。手伝いたい」
マミコはしばらく彼を見た。
計画していなかった決定を下そうとする直前のあの表情で。
「わかった……子供みたいなことを言うんだから」
最後の部分は自分に言い聞かせるように呟いた。
「告知をしてきて。知り合いに声をかけて。できればチケットを売って。部員の誰かが人手が必要なら、その手を貸す」
マコトは任務を受け取った人間のエネルギーで頷いた。
「わかりました、先輩」
マミコの胸があの動きをした。
今は調整しなければならないことが多いからしばらく無視することにした。
「先輩って呼ばないで……好きじゃないの」
マコトはやや青ざめた。
「最悪だ、なんで誰も先輩呼びを喜ばないんだろ。この前、善狐さんにも言われたし……」
そう言いながら他の部員を手伝いに離れていった。
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翌日は技術的な意味で生産的な混乱だった。
部員たちが材料を持って来た。衣装用の布地、舞台装飾用の板材、照明用のケーブル、ポスター用の紙。普段は整然とした静けさのあったオーディトリアムが、大工仕事の作業場と美術の授業と演劇リハーサルが同時に起きているような何かに変わった。
マコトは台本を脇に抱えて、自分がどのように貢献できるかはまだはっきりしないが貢献する準備ができているという顔で到着した。
最初に試みたのは装飾の手伝いだった。
彼が描いた木は、どんな木も置いてはいけない場所に置かれることになった。
誰も直接何も言わなかったが、装飾担当の男子は自分の作業計画を見直している人間の表情でそれを見た。
「他の何かを手伝った方がいいですか?」
マコトが聞いた。
「じゃあ……衣装をやってみて」
衣装担当のエリアでは、ハナが邪魔を受け付けない集中力で布地を計っていた。マコトはメジャーを持つことを申し出た。
メジャーを持った。
力を入れすぎて。
ハナの隣の椅子に立てかけてあったロミオの衣装の小道具の剣が、オーディトリアム全体に響く音とともに倒れた。
二つに。
沈黙。
「それ……直せましたか?」
マコトが聞いた。
「直せてた、過去形ね……」
ペットを失ったような目で二つの破片を見ながらハナが答えた。
「すみません」
「大丈夫よ。予備があったから」
「あ」
少し間を置いて。
「他の何かを手伝った方がいいですか?」
はしごが次の障壁だった。
誰かが舞台奥の高い位置に何かを掛ける必要があって、そこにいる中で背の高い方だったマコトが上った。
三段目まで辿り着いた。
四段目は体重の分布に異なる意見を持っていた。
傍で見ていたケンジによると、落ち方は「何も一緒に巻き込まずに済んだ点で技術的に印象的だった」らしい。
マコトは立ち上がった。
払った。
そしてもう一度上った。
今度は四段目まで辿り着いた。
五段目まで。
掛けるものを掛けた。
降りた。
ケンジを見た。
「どうだ?」
「よし」
ケンジが言った。
三週間前なら認めなかったであろう何かが、その声にはあった。
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午前十一時頃、一年生の部員が印刷されたポスターとチケットの箱を持ってマコトに近づいた。
「星野君、マミコ様が進天学園全体に貼ってきてほしいって」
マコトは箱を受け取った。
見た。
ポスターはよくできていた。マミコが文章を考えて、マコトより達筆な誰かがきれいに清書した。正確な情報が入っていた。日付、時間、オーディトリアム、演目名。
「チケットは?」
「売れるなら売ってきてほしいって」
「いくら?」
部員が値段を教えた。
マコトは頷いた。
そして箱を脇に抱えてオーディトリアムを出た。使命があって、どう遂行するかはまだ完全にはわかっていないが、とにかくやり遂げるつもりの人間のエネルギーを持って。
ポスターは、複数のことを同時にしながらどれにも完全な注意を払っていない人間の効率で学校全体に貼られた。綺麗に中央に貼れたものもあった。わずかに傾いたものもあった。三階の廊下に一枚、上下逆さまに貼られたものがあったが、後になるまで誰も教えてくれなかった。
ポスターを貼り終えると、廊下の真ん中に立って誰にチケットを売るべきかを考えた。
そのとき、アイデアが浮かんだ。
段階的にではない。突然、振り返ってみれば明らかなのになぜか今まで思いつかなかったアイデア特有のはっきりさで。
(ディベート部)
(二十人くらいいる)
(一人一枚買えば……)
マコトは北棟の方向を見た。
チケットの箱を見た。
また北棟の方向を見た。
(善狐さんに殺される)
(でもチケットは勝手に売れないし、そもそもどれくらい最悪の展開になるんだろう)
そう考えながら、ディベート部の部室に向かった。
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ディベート部の部室には、うまく機能するグループが集中して各自の作業に取り組む時の共有された集中力のある、あの生産的な静けさがあった。
入ると、何人かの部員が顔を上げた。
マコトを認識した。
既に見慣れた風景の一部として扱う馴染みやすさで挨拶した。
「星野君」
「どうも」
マコトは箱をテーブルに置いてポスターを一枚取り出した。
「みなさん。演劇部が来週公演をやります。ロミオとジュリエット。メインのオーディトリアムで」
部員たちが見た。
「それで?」
誰かが聞いた。
マコトはそれにどう答えるかを一瞬考えた。
「見に来てほしいんです」
明るく言ったが、明らかに誰も驚いていなかった。
「なんで?」
「なぜかというと……」
少し間を置いた。
(そうか。ここでコノカさんなら論理的で説得力のあることを言うだろう。マミコさんならドラマを使って人を引き込む。でも俺は何をすればいい?)
しばらく考えてわかった。
(そうか、俺がすることは……)
「演劇部のみんなが、心を込めて全力で準備してきた。外の人間が、彼らが成し遂げたことを見に来る時間を取る価値があると思うから」
沈黙。
「しかも演劇部の部長は団蔵 猫子で、みんなご存知のように進天学園で一番の女優と言ってもいい。そしてロミオが俺で、おそらく進天学園史上最悪のロミオ。どちらの方向に転んでもどこかで見応えのあるものになることは保証します」
部室の誰かが笑い声を上げた。
次に別の誰かも。
「チケットはいくらですか?」
マコトが値段を言った。
三人が同時にお金を取り出した。
三人が五人に、五人が八人に、八人が十二人になった。グループ特有のダイナミクスで、何人かの決断が残りの人間に自分の決断を再考させた。
マコトは中央テーブル横の椅子に上ってより広く見渡せる位置を確保した。
そのまま椅子からテーブルの上に直接上がった。席からの配布は物流的に複雑だったから。
こうして少し騒がしい時間が過ぎ、正面の扉が開いた。
狐乃香 善狐。
ディベート部の部室に戻ってきたのだ。生徒会に書類を届けに行っていたのだ。そして最初に目に入ったのは、中央テーブルの上に立ってクラブの十二人の部員にチケットを配っている星野 誠だった。部員たちは何となく列に見えるものを作って並んでいた。
続いた沈黙は即座で完全だった。
十二人の部員が善狐を見た。
善狐がマコトを見た。
マコトが善狐を見た。
そして、正当性が完全に固まっていない何かをやってしまって、一番知らなくていい人間がたった今それを知った時の、あの特有の冷たさを認識した。
「……こんにちは、善狐さん、いや……おはようございます?こんにちはですか?」
明らかに緊張した笑顔で言った。
善狐はテーブルを見た。
チケットを見た。
列を作って並んでいる十二人の部員を見た。
またマコトを見た。
「全員……」
完全にニュートラルな声で言った。
「出て」
部員たちはそれを聞いて部室から飛び出した。
そうする許可を待っていたかのような速さで。
マコトはテーブルから降りて集団退出に加わろうとした。
善狐の手が彼の手首を止めた。
正確で、力強く、何の努力も感じさせないやり方で。
「全員……あなた以外」
マコトは小さく呻いて、悲しい運命を受け入れた。
善狐は彼をまるで雑巾のように引っ張って自分の椅子まで連れてきて、向かいに座った。
しばらく見た。
「こんにちは……かな。まあ何でもいいけど」
マコトが言った。前向きに始めようとした。
「今度は何をやらかしてるの?」
強調なく質問が来た。ただ必要な情報として。
「あ、えっと……演劇部のイベントを宣伝してました」
明らかに緊張していた。それが善狐をやや苛立たせた。
「進天学園にある全ての場所の中で、演劇部のことを宣伝するのに私のクラブの部室を選んだの?私のクラブの?」
「そ、それはですね——」
「しかもテーブルの上に乗って」
「視認性を高めるためです」
善狐は彼を見た。
「理由を聞かせなさい、今ここで」
マコトは一瞬完璧な言い訳を考えた。
「ディベートの人たちも、論理だけじゃないものを見るべきだと思ったから。感情も大事だと思うし。ロミオとジュリエットはその両方がある」
少し間を置いて。
「それにここの人たちは知ってる人たちだし」
善狐はもう少しの間彼を見た。
それから目を閉じて、頭の中で何かを考えて整理した。
軽く溜息をついて目を開けた。
「次にこのクラブで何かを宣伝したいときは、テーブルの上に乗らないこと。それと事前に私に知らせること」
マコトは瞬きした。
「え……それって、はい、ってこと?」
「これは条件よ」
「はいと言うための条件?」
「今起きたことへの罰がない条件よ」
マコトはそれを処理した。
「わかりました、受け入れます」
善狐は頷いた。
そしてマコトは、このような瞬間の価値を正確に知っていたから、箱から一枚のチケットを取り出した。
最前列。
テーブルの上に彼女の前に置いた。
それからポケットから何かもう一つ取り出した。
レモンキャンディだった。
チケットの隣に並べた。
善狐はそれを見た。
最前列の席のチケット。レモンキャンディ、マコトと友達になってからずっと彼が持ってきてくれるのと全く同じやつ。
胸の中で何かがあの動きをした。
まだ名前のない何かで、でも温度があって、周りのものがいつもよりわずかに鮮明に見えるようになるあれ。
手に取った。
両方とも。
何も言わずに。
マコトは立ち上がり、箱を手に取り、やり遂げたことがある人間の足取りで扉に向かった。
「ありがとう、善狐さん。イベントの宣伝を許可してくれて」
「お礼はいいわ。これは商業的な取引よ」
「でもキャンディは商業的な取引じゃないです」
善狐はわずかに黙った……
「そうね」
認めた。
「そうじゃないわ」
マコトは笑った。
そして出た。
扉が閉まった。
善狐はディベート部の部室に一人残された。片手にチケット、もう片手にキャンディを持って。
見た。
そして、望まなくても避けられないことを考えた。レモンキャンディと最前列のチケットが、どんな論理的な論拠でも完全には説明できないあの特定の温かさを胸に残す理由について。
キャンディをジャケットのポケットにしまった。
いつもそこにしまっている場所に。
そして仕事に戻った。
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マコトがオーディトリアムに戻ったのは午後三時近かった。
朝残してきたカオスは、それを構成する人間たちが何をやっているかわかっている時に、カオスが進んでいく特定の方向へと進化していた。
彼が間違った場所に描いた木は、修正されていた。消されたのではなく、不本意なミスのおかげで元の案よりも良くなった背景デザインに組み込まれていた。ただし誰も直接それを教えてくれなかった。
壊れた剣は予備のものに交換されていた。
三階に上下逆さまで貼られたポスターは、方向感覚のよい誰かによって正しく直されていた。
そしてオーディトリアムは、朝は材料と未完の作業を持った人間のかき集めだったものが、今は目的を持って作られているものの見てわかる形を持っていた。
マコトはセンター通路で立ち止まった。
ステージを見た。
舞台の床には本来あるべきでない場所に塗料がついていたが、舞台の背景はそうあるべきとされていたものに近い形を取り始めていた。衣装用の布地はラベルを付けて脇に掛けられていた。照明システムには誰かが色テープで整理した新しいケーブルがついていた。
ケンジは奥で装飾の要素の高さについて誰かと活発に議論していた。はっきりした意見を持つ人間のエネルギーで。
ハナはリアルタイムで進捗を記録している人間の集中力でノートを持ってステージを横切っていた。
一週間もしない前に全てキャンセルしようと言っていたがっしりした男子が、ステージの脇で何かを、今これをやるなら本気でやるという決意をした人間の集中力で描いていた。
そしてマミコ。
マミコは全ての中心にいた。
物理的な中心だということではない、ほぼそうではあったが。でも違う領域の間を動き回る彼女のやり方、ここで指示を出し、向こうの質問に答え、必要なときは自分の手で調整する、そのやり方が、自分が何をしているかを正確に知っていてそれを楽しんでいる人間のやり方だった。
(ハルカが来る前、こんな風だった)
マコトは探さずにそれを思った。
(これが全てが複雑になる前に存在していたマミコだ)
床に塗料がついていた。
笑い声があった。
ケンジが何かの高さに文句を言っていた。
ケンジの言葉にハナが笑っていた。
二週間前には誰も予測しなかったほど丁寧に、がっしりした男子が描いていた。
完全なカオス。
そして完全に、紛れもなく、自分たちのもの。
(やっと)
マコトは思った。
(やっと、自分たちらしくなった)
そして笑った。
誰かによれば大事なことを大事にする要素を何一つ持たない、あの笑顔で。
ただの笑顔。
本物の。
自分が居るべき場所に正確にいる人間の。
第25話:完
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【作者より】
やあみんな、帰ってきたよ!
約2週間の試験と精神崩壊を経て……ついにやり遂げたぞ!全科目合格だ、っしゃあぁぁ!(あ、数学は祈るしかないけどね笑)
とにかく、忌まわしい試験がようやく終わって、ついに最高のお休み(むふふ)に突入するわけだ。
これが何を意味するかと言うと、これからの更新ペースが「週1回」から、おそらく「週3回」にアップするってこと!みんな、大いに喜んでくれ!
さて、今回の第25章、個人的にはかなりいい感じに仕上がったと思っている。「団蔵と誠」のエピソードももうすぐ終わりを迎える。おそらく、舞台での最終公演がその締めくくりになるはずだ。
そしてその後は、ついに次の「編」(そう呼ぶべきかわからないけど)に突入する予定だ!そっちの構想もすでにバッチリ練ってあるからね。
ついに俺も本気を出す(エンジン全開!)から、みんな覚悟しておいてくれ!
もし今回の話を気に入ってくれたら、お気に入り登録で応援してもらえるとすごく嬉しい。コメントは……ここの読者のみんなはなぜかすごく無口だから無理には言わない(なんであんなに静かなのか未だに謎だけど笑)。でも、お気に入りをもらえるだけで俺は十分満足だよ!
それじゃあ今回はこの辺で。第26章でまた会おう!
零時卿 より




