第24話: 史上最悪の生徒
午後4時の神天学園の講堂は、一日の他の時間帯とは違う光に包まれていた。
作業場のように感じさせる午前中の強烈な光でもなく、映画のワンシーンのように染め上げる夕暮れのオレンジ色でもない。それは単なる気取らない「午後4時の光」であり、誰もいない舞台と、良いアイデアがどれほど最悪な結果を招くかを知ろうとしている二人の人物をただ照らしていた。
狸子 団蔵は舞台の中央に立ち、閉じた台本を小脇に抱え、誠がすでに学習した「プロモード」の表情を浮かべていた。それは、これから始まることに規律と真剣さが必要だと彼女が判断したときに現れる顔だった。
星野 誠は彼女の向かいに立っていた。開いている台本のページが間違っていることには、まだ気づいていない。
「よし」
と、団蔵が言った。
「最初から始めるわよ」
「最初の最初から?それとも昨日終わったところの最初から?」
「完全な最初からよ」
「それって……?」
「呼吸」
誠は彼女を見た。
「呼吸?」
「演技は呼吸から始まるの。呼吸をコントロールできなきゃ、他の何もコントロールできないわ」
「俺はちゃんと呼吸してるぞ。物心ついた時から16年間ずっとやってるからな」
団蔵はそれを聞き、攻撃的な言葉を返す前に、一度深呼吸をして心を落ち着かせた。
「違うわよ、誠。生きるための呼吸と、演技のための呼吸は別物なの」
誠はその言葉を処理しようと黙り込んだ。
「……誠、わかってないでしょ?」
「全くだ」
団蔵はもう一度息を吸い込んだ。
「いい?演技のために呼吸するときは、空気をここまで入れるの」
団蔵は、これまで何百回も説明してきた者の自然な動作で、片手を横隔膜に当てた。
「ここじゃないわ」
手を胸に移動させる。
「ここよ」
再び横隔膜に手を戻す。
「わかった?」
「ああー、なるほど。完全に理解した」
「よろしい。じゃあ、呼吸してみて」
誠は息を吸い込んだ。
彼が出した音は、客観的に見て、かなり大きな誕生日用の風船を膨らませているような音だった。
団蔵は彼をじっと見た。
「……そこまで吸わなくていいわ」
「深く入れろって言っただろ」
「深いっていうのは、講堂にある酸素を全部吸い尽くすって意味じゃないわよ」
「はあ!?じゃあ、どれくらいだ?」
「普通よ。でもコントロールされた普通」
「コントロールされた普通?」
「そう」
「矛盾してるな」
団蔵は三度目の深呼吸をした。
それは先ほど誠に教えたような呼吸法ではない。このプロセスが計算していたよりもはるかに長くなることを悟り始めた人間の呼吸だった。
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姿勢が第二の障害となった。
ロミオはただのキャラクターではなく、「存在」そのものだと団蔵は説明した。彼がどのように空間を占めるかは、台本のどんなセリフと同じくらい雄弁に語るのだと。優雅さは表面的なものではなく機能的なものであり、適切な姿勢の体は全く違う形でエネルギーを放ち、観客は理由がわからなくてもそれを感じ取るのだと。
誠は、脳内で必死にメモを取るような集中力でそれを聞いていた。
そして、それを実践しようと試みた。
その結果は、「優雅さ」という言葉の説明だけを聞き、物理的な手本を一切見ずにゼロからそれを再現しようとした人間の姿だった。
団蔵は彼を見た。
「一体何をしてるの?」
「ロミオの姿勢だろ。お前が言った通りにな」
「じゃあなんで肩がそんな風になってるの?」
「そんな風って?」
「まるで誰かに背中を叩かれるのを待ってるみたいじゃない」
「ああ……後ろに引くってのは……」
「後ろに引くけど、自然によ。板みたいに反り返るんじゃないの」
「は?自然な板と不自然な板の違いってなんだよ?」
団蔵は一秒間彼を見つめた。
「見て」
彼女は彼の前に立ち、さっきまで説明していた姿勢をとった。肩を引いているが、力みはない。体重は均等に分散され、頭は少し上がっているが傲慢さはない。
「こうよ。わかる?」
誠は彼女を見た。
観察した。
模倣しようとした。
結果として、いくつかの点では改善したが、他の点ではさらに悪化した。
「マシになったか?」
誠が尋ねた。
団蔵は、舞台での存在感を評価するときのあの臨床的な目で、誠を上から下まで観察した。
「歩いてみて」
「どこを?」
「舞台の上よ。ここから、あそこまで」
誠は歩き出した。
意図を持って。ロミオの存在を念頭に置いて。過去20分間に団蔵が説明したすべての要素を、舞台の端から端へ移動しながら自分の体に同時に体現させようとしながら。
その道半ばで、リハーサル用に舞台袖に置かれていた椅子――ここ2週間ずっと同じ場所に置かれていたその椅子――が、まるで宇宙がこの特定の瞬間を待ち望んでいたかのような正確さで、誠の足と衝突した。
「なんでいつも俺なんだ、クソッ!」
誠がつまずき、半ばバランスを立て直そうとしたものの、最終的に袖幕にしがみつく音が講堂に響き渡った。
沈黙。
「誠……大丈夫?」
舞台の中央から、団蔵が尋ねた。
「ああ、たぶん」
幕にしがみついたまま、誠が答えた。
「椅子は大丈夫か?」
間。
「椅子は全く問題ないわ……」
団蔵は一秒間、目を閉じた。
そして開いた。
「もう一回」
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誠がさらに2回椅子につまずき、問題は椅子にあるのではなく「稽古場における家具の非直感的な配置」にあると彼が断定した後に、「鏡」の練習が始まった。
団蔵は彼を1.5メートルほど離れた自分の正面に立たせた。
「よし、次は『鏡』と呼ばれる練習をするわ」
彼女は教師のような声で言った。
「私がやることをそっくりそのまま真似するの。全ての動き。全てのしぐさ。同じリズムで、同じ意図を持ってね」
「なるほど、理解した。だが……何のためにやるんだ?」
「流暢さを養うためよ。頭でいちいち承認しなくても、体が自然に動くようにするため」
「それがロミオの役に立つのか?」
「すべての役に立つの」
「ああー、わかった」
団蔵が始めた。
右手を使ったシンプルな動き。上へ、横へ、そして元へ戻す。
誠はそれを真似た。
それは、実行する前にすべての指示を意識的に翻訳している人間特有のぎこちなさを伴っていた。スローモーションで動きを確認してから通常の速度で動いているようであり、元の流暢さは微塵もなかった。
団蔵は次のしぐさをした。
誠はそれをコピーした。
まあ、おおよそだが。
団蔵が頭を少し右に傾けた。
誠が頭を少し右に傾けた。
団蔵が腕を伸ばした。
誠が腕を伸ばした。
団蔵が手首を回した。
誠が手首を回した。
練習にリズムが生まれ始めた。優雅ではない。滑らかでもない。しかし、確かにリズムがあった。
そしてその時、彼女の鼻がむず痒くなった。
劇的なものではない。ただ、集中力が求められる作業の最中に、体が「お前には鼻があるぞ」と思い出させるタイミングを的確に突いてくるような、あの微かで間の悪い痒みだった。
団蔵は無意識に、少しだけ鼻にシワを寄せた。
誠が少しだけ鼻にシワを寄せた。
団蔵は自分の無意識の反射に戸惑ってまばたきをし、思わず集中している時のように小さく口をとがらせた――それは彼女が何かを処理していて、誰も見ていない時にだけ現れるしぐさだった。
誠が口をとがらせた。
残りの練習で見せていた流暢さの欠如からは考えられないほどの、無駄に高い忠実度で。
団蔵は彼を見た。
誠は、まだ口をとがらせたまま彼女を見つめ返していた。自分がどんな顔をしているかには気づいていなかった。
別の状況であれば感心するほどの速さで、団蔵の頬が赤く染まった。
「ま、待って、ストップ……」
彼女は少し慌てた様子で言った。
「ああん?どうした?」
「なんでもない。練習を変えるわ」
「は?鏡はもう終わりか?」
「鏡は終わり」
「なんでだよ?」
「終わったからよ」
誠は一秒間彼女を見つめた。何か裏があることはわかっているが、あえて追及しない術を学んだ者の表情だった。
「わかった」
と彼は言った。
そして、団蔵が再び彼を直視するまでに少し余分な時間がかかったことに気づいたとしても、彼はそれを口にしないことにした。
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「さて」
気を取り直してから、団蔵は言った。
「自分が木になったと想像して」
誠は彼女を見た。
「木?」
「嵐の中の木よ。これは物理的な存在感の練習なの。抵抗と服従の間にある、正しい緊張感を体に見つけさせるのが目的なのよ」
「本物の木みたいに?」
「本物の木みたいに」
誠はその言葉を処理した。
じっと立ち止まった。
完全に静止した。
団蔵は何か起こるのを期待して、5秒間彼を観察した。
何も起きなかった。
「誠くん……」
「なんだ」
「木になってる?」
「ああ、見りゃわかるだろ?」
「じゃあ、なんで動かないの?」
「論理的に考えて、俺が木なら筋肉はない。だから、自らの意思で動くことは不可能だ」
団蔵は彼を見た。
「それに、嵐が過ぎ去るのを待っているんだ」
誠は真顔で付け加えた。
「バカ……嵐は比喩よ」
「はあ!?でも、本物の木は比喩的な嵐なんて経験しないぞ」
団蔵は絶望の淵に立たされながら目を閉じたが、どうにか落ち着きを取り戻した。
そして再び目を開けた。
「あなたは本物の木じゃない。嵐の中の木の経験を演じている役者なの」
「筋肉がない架空の木が、どうやってそんなことするんだよ?」
「筋肉がある、あなたのその体を使うのよ」
「だが、俺が筋肉を使ったら、俺は木になってない。木を演じる『俺』になってしまう」
「それこそがまさに——」
「木になるのとは違うだろ」
団蔵は長い間、彼を見つめた。
「あのね」
ついに彼女は言った。
「木は忘れなさい」
「別の練習にするか?」
「ええ」
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視線のコントロールが、団蔵が次に選んだ練習だった。役立つからというのもあるが、木の後に、もっと単純な指示のものを必要としていたからだ。
「私の目を見て」
彼女は言った。
「お前の目?」
「そうよ、この場所に他の誰の目があるって言うの?不快感を持たずに視線を合わせ続けるのが目的なの。感情的な接触があるシーンでは不可欠なスキルよ」
「見ながら何をすればいいんだ?」
「何もしない……ただ見るだけ」
彼女は少し大げさに言った。
「ああー、なるほどなるほど。どれくらいの時間だ?」
「私がストップって言うまでよ」
「よし、いくぞ」
誠は少し気合を入れて言い、そして……。
誠は彼女を見た。
団蔵は彼を見た。
10秒。
20秒。
30秒。
誠はいつものように、何か特定のものを求めるわけでもなく、裏に何の戦略もない、ただ「そうしろ」と言われたから別の人間を見ているというだけの注意深さで彼女を見つめていた。
40秒。
団蔵は視線を保った。
50秒。
(大丈夫。これでいい。これは練習。私たちは練習をしているの。これが気まずくなる理由なんて何一つない)
60秒。
(彼はいつも私を見るのと同じように見ている)
(なんでそれが、余計に難しくさせるの?)
(難しくなんてない。私は完全に平気。私はプロの女優よ。これまで何十人もの相手と視線を合わせるシーンの稽古をしてきたわ)
(その誰一人として、誠じゃなかったけど)
70秒。
団蔵は視線を外した。
急にではない。練習が終わったと判断し、順序立ててそれを終了させる人間の動きだった。
「ストップ」
舞台の袖のほうを見ながら、彼女は言った。
「ようやく終わりか?」
「ええ」
「マジか!完璧だな。で、どれくらい経ってた?」
「十分よ」
「ん?……まあいい、それで俺は合格か?」
間。
「ええ」
と、団蔵が言った。
「合格よ」
まだ彼の方を見ようとせず、舞台の袖に向かってそう言った。
誠は、なぜその課題が存在するのかを完全に理解しないまま、与えられたタスクを完了した者の静かな満足感とともに頷いた。
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一時間後。
太陽は、いずれ夕方になることを約束する空の領域へと移動し始めていたが、まだそこには到達していなかった。
団蔵と誠は台本を開いて舞台に立っていた。バルコニーのシーン。前日に部員たちと試み、ある意味でさまざまな結果を生み出し――その結果のいくつかは多様な形の「大惨事」だったが――あの同じバルコニーのシーンだ。
しかし今は二人だけだ。
演劇部はいない。12対の目もない。結果に初めから期待していない連中に見られるという、特有のプレッシャーもなかった。
いるのは団蔵と誠、そして台本と、ロミオがバルコニーの下からジュリエットに向かって語りかけるセリフだけだった。
午後5時の段階で利用できる本物のバルコニーなどないため、この場合、舞台全体がその役割を果たしていた。団蔵は高さについては「比喩的」なものでいいと判断したが、あの木の事件の後だったので、その言葉を使うのはやめておいた。
「最初から」
台本を手に、舞台の一段高い端に立って団蔵が言った。
「読まずにか?」
「ええ。読まずにやってみて。もし忘れたら、いつものあなたみたいにアドリブを入れて」
「了解した。シェイクスピアをアドリブでやってもいいんだな?」
「それは昨日決めたでしょ」
「ああ、わかってる。確認しただけだ」
「よろしい。じゃあ、始めて」
誠は団蔵のいる方向を見た。
息を吸う。今回は適切な量の空気であり、それは一つの進歩だった。
そして、言った。
「『だが、待て。あそこの窓から漏れ出る光は何だ?』」
間。
「『あれは東』」
さらに間。
「『そしてジュリエットは……』」
団蔵を見た。
「『……太陽だ』」
団蔵はその位置から彼を見た。
一秒間、何も言わなかった。
「続けて」
「『昇れ、美しき太陽よ。そして嫉妬深い月を殺せ』」
彼は続けた。
おそらくシェイクスピアが望んだであろう速度よりもゆっくりと。間を置くべきでない場所に間を入れながら。しかし、読まずに。次のセリフは何だと尋ねることもなく。
そして、ロミオがジュリエットの目を描写する部分に差し掛かった。
台本を開いた。
それを見た。
閉じた。
そして、言った。
「ええと。台本には、お前の目は空を散歩しに出てきた2つの星のようだ、と書いてある。あまりに明るいから、鳥たちが昼間だと勘違いして夜に鳴き出すだろうってな」
彼は間を置いた。
「だが、それは科学的に意味が通らない。星は散歩しないし、鳥もそんな風には勘違いしない。それに、もしお前の目が本当にそんなに明るかったら、誰かを見る時にサングラスが必要になるはずだ」
再び、間。
「俺が思うに、シェイクスピアが言おうとしてるのは、単純にお前が綺麗な目をしているってことだ。そしてその目を見ていると、自分が何をしていたのか忘れてしまうってことだ」
講堂は静まり返った。
団蔵は彼を見た。
この練習中ずっと、何年もかけて築き上げられたような効率性で所定の位置に収まっていた彼女の「監督としての仮面」が、台本のどこにも書かれていない反応を示した。
ひび割れたのだ。
ほんの少しだけ。
誠の過程をすっ飛ばした論理が、いつも隙間を見つけるまさにその特定の場所で。
「それは台本にはないわ」
いつも通りの声を出そうとして、完全には成功していない声で彼女は言った。
「ああ、わかってる」
「でも……いい?シェイクスピアは理由があってその情景を選んだのよ」
「どんな理由だ?」
「詩的だからよ」
「じゃあ、俺が言ったことは詩的じゃないのか?」
団蔵は口を開いた。
閉じた。
(彼の言ったことは、技術的な意味では詩的ではない)
(でも、完全に正直だった)
(そして彼が『その目を見ていると、自分が何をしていたのか忘れてしまう』と言った時……)
(キャラクターとして話していたの?それとも、彼自身の言葉だったの?)
(誠のことだから、全くわからない)
(誠のことはいつだって何もわからない。きっと善子さんでさえ、時々誠が何を考えているのかわからないはずだ)
(そして、それこそがまさに問題なのだ)
「次のセリフを続けて」
団蔵が言った。
監督の声で。
だが今回は、指示というよりも盾のように響いた。
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講堂の後ろのドアから――通りかかった者が気づかれずに中を覗き込める絶妙な隙間だけ開いていたそこから――健二と花は様子を窺っていた。
計画していたわけではない。健二は忘れた台本を取りに戻ってきただけだった。花は廊下にいたから彼についてきただけで、好奇心が勝った結果だった。
そして今、二人は半開きのドアの前に静かに立ち、天気の話でもするような自然さで、誠が団蔵に「目が綺麗だ」と告げるのを目撃していた。
「あいつ、シェイクスピアでアドリブやってんのか?」
健二が囁いた。
「みたいね」
花も囁き返した。
「で、なんで彼女は止めないんだよ?」
花は舞台上の団蔵を見た。
普段なら、テキストから少しでも外れれば、基準を持ちそれを維持する者の効率性で即座に遮るはずの団蔵が、花が以前見たことはあるものの、この状況では決して見たことのない表情で誠を見つめていた。
「止められないんだと思う」
と、花は言った。
健二は彼女を見た。
「止められないのか、止めたくないのか?」
花は一秒間考えた。
「両方ね」
と答えた。
そして二人はドアの隙間から、これが正確には稽古ではなく、かといって全く別の何かというわけでもない、という特有の感覚を抱きながら、黙ってその様子を見つめ続けた。
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試行は続いた。
誠はセリフを忘れた。そして、感情は合っているが韻律はめちゃくちゃな独自のバージョンに置き換えた。一度は舞台の反対側から入場してしまい、ロマンチックなはずの瞬間を一時停止させたまま、小声で団蔵と立ち位置の交渉をしなければならなかった。
しかし、瞬間もあった。
彼の中で、彼自身が意図しない何かが合致する瞬間。その結果は「技術」ではなく「存在感」――前日に花が説明しようと試み、演劇部の12人のメンバーの誰も正確な名前をつけられなかったあの感覚だった。
たとえば、午後に入って12回目の試行でのこと。ロミオがジュリエットに、そこにとどまることの危険性や、乗り越えてきた壁、そして彼をそこへ導いた愛について語るシーンに差し掛かった時、誠は本当に重要なことを話す時のあの低く、誇張のない声でそのセリフを口にした。
そのように練習したからではない。
その瞬間、舞台上の団蔵を見つめながら、技術的な言葉では説明できずとも、彼の中の何かがロミオの語っている内容を理解したからだ。
そのセリフの後、講堂は静寂に包まれた。
いつもとは違う静寂。
団蔵はすぐには「もう一回」と言わなかった。
彼女は彼を見た。
そして、自分が何か違うことをしたことに気づいていない誠は、指示を待つ者の表情で彼女を見つめ返した。
「ダメだったか?」
彼が尋ねた。
「ううん……」
団蔵は言った。
ただ、それだけ。
それ以上の分析もない。技術的な訂正もない。普段ならどんな試行の後にも続く評価の言葉もなかった。
ただ、「ううん」とだけ。
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7時15分、二人は台本を片付けていた。
誠の台本は、この練習中に書き込まれた余白のメモで埋め尽くされていた。中には役立つものもあったが、その時には重要だと思えただけで、実用的な価値が全くないテキストへの考察もあった。
団蔵の台本は綺麗なままだった。何十年も前から知っているテキストに、彼女はメモを必要としなかったからだ。
講堂は今や完全に無人となり、人々が去った後の広い空間特有の、音響だけが独自の残響とともに残されたあの静けさに包まれていた。
団蔵は台本をカバンにしまった。
しばらくの間、彼女は舞台を見つめていた。
部長としての表情でもなく、練習中ずっと被っていた監督としての表情でもない。
それは、遥が現れる前の、すべてが複雑になる前の、演技が完璧という名で偽装された恐怖に変わる前の彼女に、どこか似ていた。
(私がこれを最後に楽しんだのは、いつだったっけ?)
彼女が招いたわけでもないのに、その問いは勝手に浮かび上がった。
(講堂にいることが、絶え間ない評価の場ではなく、自分の居場所のように感じられたのは、いつが最後だった?)
彼女は誠を見た。彼は、その作業に積極的な注意を必要とする人間のような集中力で、リュックのファスナーと格闘していた。
(このバカは3時間も転び続け、セリフを忘れ、シェイクスピアを読んだこともない、いや、本自体読んだことがないんじゃないかっていう論理でシェイクスピアをアドリブで演じていたのに、それなのに……)
(それなのに、あの12回目の試行の瞬間、自分でも気づいていなかったようなあの声でセリフを言ったとき……)
(長い間、感じていなかったものを感じた)
(この先にあるものを見たい、という気持ちを)
「まだ、足りないものがたくさんあるわ」
彼女は、ほとんど深く考えずに口にしていた。
誠はリュックから視線を上げた。
彼女を見た。
そして、上品さなんて微塵もない、あの彼らしい笑顔を浮かべた。
「じゃあ、明日も続けよう」
すでにその事実を処理し、受け入れた人間のような自然さで、彼はそう言った。
団蔵は彼を見た。
そして、まさに必要だった長さの、その一秒間だけ静止した。
なぜなら、その一秒の間に、彼女はまだ処理していなかったあることを噛み締めていたからだ。
遥が神天にやってきて以来、毎日は生き延びるための何かでしかなかった。試練。到達すべき基準。応えるか、さもなくば失敗するかという期待の重圧。
それが今、夕暮れの光が差し込む誰もいない講堂で、人生最悪の生徒として3時間を過ごし、まるで世界で一番シンプルなことのように「じゃあ、明日も続けよう」と言い放った少年の前にいる……。
明日が来るのが、楽しみになっていた。
明日が完璧な日になるからではない。
明日も、まさにこれと同じになるからだ。
めちゃくちゃで。 おかしくて。 疲れ果てて。 そして、どうしようもなく、救いようがないほどにリアルな。
「ええ、そうね……明日もまた、挑戦し続けましょう。誠くん」
彼女は最後にそう言った。
それは、飾り気のない、ただの彼女自身の声だった。
誠は数分間の格闘の末、ようやくリュックを回収することに成功すると、それを肩に担ぎ、ロミオらしさは微塵もなく、どこまでも誠らしい足取りで出口へと歩き出した。
彼はドアの前で足を止めた。
そして、振り向いた。
「おい、団蔵さん」
「なによ」
「俺、やり遂げられると思うか?」
団蔵は彼を見た。
そして統計的に見て確率は低く、何年もの訓練を積んだ役者たちでさえもっと簡単な役で失敗するのを見てきたという、正直な答えを考えた。
それから、遥なら口にしたであろう、観察されたパフォーマンスの臨床的な評価と、データに基づいた改善の予測を考えた。
そして最後に、自分が本当に言いたいことを考えた。
「わからないわ」
彼女は言った。
「でも、他の誰にも真似できないやり方で、あなたは挑戦するんだと思うわ」
誠は一秒間、その言葉を処理した。
そして、頷いた。
まるで、それこそがまさに自分が求めていた答えだったかのように。
「まあ……俺にとっては、その『わからない』で十分すぎるくらいだ……じゃあ、おやすみ団蔵さん。気をつけてな、寝る前に歯を磨くのを忘れるなよ」
誠は疲れ果てながらも、嬉しそうに言った。
「ええ、まあ……おやすみなさい、誠くん」
講堂のドアが彼の後ろで閉まった。
団蔵は舞台の上に一人、取り残された。
「なんて奇妙な別れの挨拶かしら……あんな風に送り出されたの、初めてだわ……」
誰もいなくなった講堂のその後の静寂が、全員が去り、空間とその記憶だけが残されたときにしか存在しない、あの独特な平穏で彼女を包み込んだ。
彼女は舞台の端に腰掛けた。
つい先ほどまで誠がいた場所を見つめた。
そして、西園寺 遥がその空間を狭く感じさせるほどの存在感を放って講堂に足を踏み入れて以来、初めて、狸子 団蔵は舞台が再び自分のものになったと感じた。
遥のものではない。彼が残していった恐怖のものでもない。
自分のものだ。
そして明日は、二人のものになる。
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後ろのドアのところでは、健二と花がまだそこに残っていた。
健二は花を見た。
花は健二を見た。
「俺たち、破滅ってないよな?」
健二が言った。
花は一秒間、考えた。
「わからないわ」
と、彼女は答えた。
「でも、あの二人も破滅ってはいないと思う」
健二は、団蔵がまだ腰掛けている舞台を見つめた。
「彼女があんな風にしてるの、最後に見たのはいつだ?」
「あんな風って?」
「あんな風に、さ」
花は団蔵を見た。
あの姿勢。あの表情。まるで長い時の後にようやく再会したかのように、講堂の空間を見つめるあの眼差し。
「いつだったか思い出すとしたら……間違いなく、遥が来る前ね……」
花は言った。
健二はゆっくりと頷き、自分の仮説を確信した。
そして二人は、静寂のままにしておいた方がいいものもあると分かっていたため、音を立てないよう注意深くドアを閉めた。
第24話:完
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本編を始める前に、一言お詫びをさせてください。今週の更新が数日遅れてしまい、申し訳ありません。主な理由は、現在学業が完全にキャパシティオーバーしているためです……(誰か助けて!)。
しかも最悪なことに、来週は試験が山積みで(本当に、ものすごくたくさんあるんです……)。なので、しばらくはあまり更新に時間を割けないかもしれません。ただ、今週分の更新を待ってくれている皆さんのために、今日から明日にかけて、できるだけ急いで更新しようと思います!
団蔵と、あのバカな誠の特訓ももうすぐ終わりです。ついに狐乃香が帰ってきますが、そこまではもう少しだけかかりそうです。それまでの間、もし物語が気に入っていただけたら、お気に入り登録などで応援してもらえると本当に嬉しいです……というか、何でもいいです!
それでは、今回はこの辺で。零時卿でした。
(頑張って全科目合格してきます!それじゃあ、また!)




