1:娘から両親へのフルーツケーキ後編
目の前で無情にも閉まってしまった扉。向こう側から聞こえる夫妻の会話は徐々に遠のいてしまい、セデルは一人扉の前で立ち尽くしていた。依頼人からの荷物を届けに来たというのに、目の前で強烈なまでに受け取り拒否をされてしまったのだ。
そう長くはない仕事経験の中でも初めての出来事で、咄嗟にどういう風に対応すれば良いのか分からない。呆然としつつもセデルが行ったのは、手にしていた荷物、依頼人である菓子職人のメリッサが作ったケーキと彼女が書いた手紙を、『収納』の中に片付けることだった。
何せ、生ものである。手にしたまま体勢を崩して落としてしまっても大変だ。なので、一先ず『収納』にしまい込むことにしたのである。ほぼ無意識でそこまでやってから、セデルはやっぱり扉の前で立ち尽くした。
荷物をお届けするまでがセデルの仕事である。この地に持ってきただけでは意味がない。ちゃんと相手に渡さなければいけないのに、拒否をされた状態。このままでは仕事失敗である。
どうしようかしばらく逡巡した後、セデルはとぼとぼと肩を落として家の前から離れていった。エイダンのあの様子では、今声をかけても罵声を浴びせられるだけのように思えたからだ。一先ず今日は宿に戻って、明日の朝にでももう一度行ってみようと考えたのだ。
現実逃避と言われるかもしれないが、下手に刺激するのも怖かったのだ。セデルにはこういう状況での経験が足りていない。しょんぼりと歩く後ろ姿は、年齢よりも彼をさらに幼く見せていた。
そんな風に歩いていたセデルの耳に、声が届いた。
「待って、待ってちょうだい……!」
「……あ、エミリーさん」
慌てたように走ってきたのはエミリーだった。その姿にセデルは足を止める。彼女はセデルの側にまでやってくると、呼吸を整えてから口を開いた。
「先ほどは夫が失礼しました。あの、娘からの荷物と手紙を、いただけますか?」
「あ、はい。それは勿論です。……でもあの、大丈夫でしょうか?」
「夫のことは、何とかしますから」
「分かりました。それではどうぞ、お受け取りください」
真剣な表情のエミリーの言葉に頷くと、セデルは『収納』から荷物と手紙を取り出した。それをエミリーに渡した後、手にした書類にサインをもらう。きちんと荷物を受け取ったという証拠に必要なのだ。
エミリーのサインを確認し、書類不備がないことも確認して、セデルはぺこりと頭を下げた。
「確かにサインもいただきました。それでは、これで失礼します」
荷物を渡せたならば、それでセデルの仕事は終了だ。どんな事情があってエイダンが受け取りを拒否したのかは分からないが、エミリーが受け取ってくれたのならば、確かに依頼は完了なのである。
そしてセデルは、途方もない宝物でも抱くように荷物を抱えるエミリーに見送られて、その場を立ち去った。目指す先はこの村の宿酒場だ。宿屋と酒場を併設した施設は大抵の集落に存在する。セデルのような配達屋だけでなく、商人や冒険者が使うからだ。
帰りの馬車は明日の午後なので、ここから先は自由時間だ。こうして仕事で遠方に赴く度に、セデルはその土地の美味しい物を食べるのを楽しみにしている。元々美味しい物を探して食べるのは好きだったのだが、配達屋の先輩に余所の土地で食事をする為に仕事を引き受けているような食い道楽が一名おり、その人の話を聞いてから自分も遠出した時には一泊してご飯を食べようと考えるようになったのだ。
宿の部屋を取り終えたセデルは、うきうきと酒場の方へと足を運んだ。宿酒場は酒場と名前がついているものの大衆食堂のような側面も持っており、近所の家族連れと思しき姿も見受けられる。端的に言うとほのぼのとした雰囲気だ。
給仕に席に案内されたセデルは、『収納』の中から一冊の手帳を取りだした。それなりに使い込んでいるので革のカバーがしんなりとしている。ぱらりと開いた手帳の中には、各地の特産品や郷土料理、そしてどの店が美味しいかなどといった情報が書き込まれていた。
「えーっと、前に聞いた話だとこの村の名物はカブとベーコンのシチューで、特産品はリンゴだったっけ……」
ページをめくって情報を確認するセデル。先輩に教えて貰った情報を自分で書き留めている手帳には、セデルが行ったことがない土地の情報がみっちり詰まっていた。その中から目当てのページを見つけて、ふむふむと頷く。来る途中でも確認しておいたが、間違ってはいないようだ。
そうとなれば、注文する料理は決まった。美味しい物をセデル以上に知っている先輩のオススメを食べない理由はないのだ。セデルが選んだ本日の食事は、カブとベーコンのシチューと、瑞々しいシードルだった。シードルについての情報はなかったが、特産品がリンゴならばきっと美味しいだろうと思ったのだ。
「美味しい……!」
シチューを食べて、セデルは噛みしめるように呟いた。食べやすい大きさに切られたカブはとろとろに柔らかく、根菜特有の甘味をたっぷりと蓄えている。そこに、贅沢に厚切りされたベーコンが旨味を加え、ミルクの優しい味わいがシチュー全体を包み込んでいるのだ。
シンプルなシチューだが、だからこそ素材の美味しさが生かされていると言えた。このシチューの旨味の素はベーコンかもしれないが、主役は間違いなくカブだった。ほんのりとした甘さが上品で、優しくて、スプーンがどんどんと進んでしまう。
そもそも、スプーンで簡単に切れてしまうほどに柔らかいのに、決して煮崩れしていないのが素晴らしい。職業柄色々な所へ出かけて様々な料理を食べてきたセデルだが、今まで食べた中で一番美味しいカブ料理はこれかもしれない、と思った。
「カブだけでも美味しいし、ベーコンだけでも美味しいけど、シチューと一緒に全部食べるとすごく美味しい……!」
まるで幼い子供のように全身で美味しいと表現するセデル。自分は今とても美味しいものを食べているのだ! みたいな感じだった。一日の疲れもこれで吹っ飛ぶというものである。
そうしてシチューに舌鼓を打ちつつ、グラスに入ったシードルへと手を伸ばす。まだ成人して数年のセデルは酒にはあまり強くないが、果実酒は口当たりが優しく飲みやすいので手を伸ばすことが多い。そろりと口に含んでみると、リンゴの爽やかさが口の中にふわりと広がる。
確かに酒精はある。間違いなくお酒だ。だが、セデルが頼んだのは初心者でも飲みやすい甘口のもので、フルーティーな仕上がりだ。リンゴの香りが鼻腔からも伝わってきて、飲みやすさも相まってまるでジュースのように思えてしまう。
給仕の話では辛口のもの、微炭酸のもの、酒精が強めのものなど色々とあるらしい。その中でも初心者にオススメですよと言われたのが甘口のこれだった。確かに甘いが甘ったるくはないので、料理と一緒に飲んでも調和を崩すことはなかった。
「……美味しいけど、飲み過ぎないようにしなくちゃな……」
調子に乗って飲み過ぎて、二日酔いになってしまってはいけない。自分に言い聞かせるように呟いて、セデルは再びシチューへと手を伸ばすのだった。
そんな風にくるくると表情を変えながら食事を楽しんでいたセデルは、酒場の入り口でキョロキョロと誰かを探すような人物がいることに気づいた。シードルのグラスに口を付けながら小首を傾げると、その人物と目が合った。
「あぁ、良かった……!」
「エミリーさん? あの、何かありましたか……?」
「娘の手紙を読みました。貴方が特殊な『収納』の持ち主で、だからこそあの子が作ったケーキを届けて貰えたのだと」
「あ、はい。食糧を傷めずに運ぶことが出来るので、今回の仕事を引き受けました」
「本当に、本当に……、ありがとうございます」
エミリーはセデルの前で深々と頭を下げた。セデルは酒場の隅っこの席にいるのでそこまで目立ってはいないが、ちらほら視線が向いている。けれど、この場にいるのは村の住人で、何らかの事情を知っているのだろう。それ以上の追求はなかった。
ただセデルだけが、エミリーが何故ここまで感動しているのかが分からなかった。ただ娘の手作りケーキが届いたことを喜んでいるというには、あまりにも感情の動きが大きすぎる。
不思議そうな顔をするセデルに、エミリーは目尻に涙を滲ませたまま理由を話してくれた。
「あの子は、滞在先も告げずに王都へ飛び出して行ったんです。出て行ってから、初めての連絡でした。それが、あの子がずっと憧れていた菓子職人としての仕事の成果であるケーキで、私も夫も、どれだけ驚いたことか……」
「……え、そんなことが……?」
「父親と大喧嘩をして出て行った手前、なかなか連絡をよこせなかったみたいで……。こちらはあの子が王都を目指したことは分かっていても詳細は分からないままだったので、連絡も出来なくて……」
そう告げるエミリーを見て、セデルはぱちくりと瞬きを繰り返した。そして思い出す。荷物を受け取りに行った時に、メリッサが少し微妙な表情をしていたことを。ちゃんと届けると告げたセデルに、届いたら嬉しいみたいなことを言っていたことを。アレはこういった事情があったからか、と思った。
……思って、出来れば先に言っておいてほしかった……! と心の中で叫んだ。もしかしたら受け取り拒否されるかもしれないとあらかじめ教えておいてくれたら、セデルだって初手の対応を色々と考えたのだから。
セデルに迷惑をかけたと思ったのだろう。エミリーは父娘が抱える事情を説明してくれた。エイダンはこの村で生計を立てる家具職人であり、家業はメリッサの兄達が引き継ぐ為に頑張っている。メリッサに家業を強制することはなかったが、末っ子かつ一人娘のメリッサには近い場所で生活してほしいという親心があった。
そもそも、村から出る人が少ないのだという。仮にいたとしても近隣の村や町なので、気楽に行き来が出来る。その中でメリッサは、長年の憧れを捨てきれずに王都で菓子職人になると決めてしまったのだ。娘の身を案じるエイダンは反対し、それに反発したメリッサは家出同然で村を飛び出していったのだという。
そんな風に拗れに拗れた父娘の、これはやっと訪れた歩み寄りなのだとエミリーは語った。彼女自身も心配していた娘が元気でやっていることを知って喜んでいる。
「あの、エイダンさんは……?」
「家で、あの子の作ったケーキを食べています。眉間に皺を寄せて、怒ってるみたいな顔で」
そんな風にエミリーは笑った。セデルは彼女の言い方から、きっと、そんな風に怖い顔をしながらも娘を思って、ケーキを食べているのだろうなと思った。門前払いをされた時は威圧を感じたが、理由を知った今となってはそれが愛情の裏返しだと思ったのだ。
不器用な父親の姿をエイダンに見てしまい、セデルは思わず小さく笑った。そんなセデルに、エミリーが真面目な顔で言葉をかけた。
「あの、もしもご迷惑でなければ、帰りにあの子宛の荷物を預かってもらえないでしょうか?」
「……荷物、ですか?」
「はい。ケーキが運べるなら、あの子に料理を届けてもらいたいんです」
「あ……」
家出同然で飛び出して、長らく故郷に戻っていない娘に手料理を届けてほしい。母親の愛情をそこに感じで、セデルはこくりと頷いた。
「明日の午後の馬車で戻りますので、それまでに届けていただければお引き受けします。その時に、依頼書にサインと料金の支払いをお願いすることになりますが」
「分かりました。よろしくお願いします」
「はい」
セデルが依頼を引き受けると、エミリーはホッとしたような表情をした。それではまた明日と告げて去って行くエミリーをセデルは見送る。きっと、今日中に娘に届ける料理を作ったり、手紙を書いたりするのだろう。新しい仕事に、気合いが入るセデルだった。
夜が明けて翌日、エミリーは午前中にセデルに荷物を届けに来た。バスケットの中に入ったたくさんの手料理と、それなりの厚みになっている手紙だ。この村には配達屋ギルドもその出張所みたいなものも存在しないので、簡易ではあるが依頼の受注はセデルが行った。ギルドに戻ってから担当の者にきちんと処理してもらう必要はあるが、こういった形で依頼を受けることも可能だった。
大切な娘さんへの贈り物だと分かっているので、セデルは荷物を丁寧に受け取って『収納』にしまい込んだ。よろしくお願いしますと何度も頭を下げるエミリーに任せてくださいと笑うセデル。……結局、エイダンは一度も顔を出さなかった。
夫はまだ意地を張っているようだと困ったように笑うエミリーに、セデルはそうですかと言うだけだった。娘を思うあまりに雁字搦めになっているらしい父親というのも、大変だ。まだ成人して間もないセデルには分からない葛藤があるのだろう。
そんな会話をしてエミリーと別れたセデルは、家族や同僚への土産を買い求めて時間を潰し、午後一番に出発する乗合馬車で王都へ戻る為に待合所へ向かった。のどかな村の雰囲気を楽しみながら歩いていたセデルは、不意に肩を掴まれて驚いたように振り返った。
「……えっ!?」
「す、すまん……。その、頼みが、あるんだ」
「エイダンさん……」
息せき切ってそう告げたのは、エイダンだった。走ってきたのだろうエイダンの姿を見て、セデルは瞬きを繰り返す。けれどすぐに気を取り直して、何かありましたか? と問いかける。
そんなセデルに、エイダンはぎこちない動きで瓶詰めを差し出した。
「……瓶詰め、ですか……?」
「これを、エミリーの料理と一緒に、届けてほしい。……頼めるだろうか?」
「はい、大丈夫ですよ」
追加される荷物が多すぎる場合は追加料金などが発生することもあるが、セデルのように『収納』の許容範囲が広いとその辺りの融通がつく。それに、瓶詰め一つぐらいならば特に問題はない。
そして――。
「……バスケットの中に、まだ入りますから」
そう言って、セデルは『収納』から取り出したバスケットの蓋を開けた。エイダンはそれを見て目を見張る。エミリーが手料理を詰めたバスケットの中には、今エイダンが手にしている瓶詰めが丁度収まるような隙間があった。
「あいつ……」
自分の行動が妻に読まれていた事に対する様々な感情を詰め込んだようなエイダンの言葉に、セデルは笑った。どうぞと促すセデルに従うように、エイダンはそこに瓶詰めを、色鮮やかな野菜のピクルスを入れた。
瓶詰めがしっかりと入ったのを確認して、セデルはバスケットの蓋を閉める。そしてそのままバスケットを『収納』の中へと片付けた。
「それでは、ご依頼確かに承りました」
「……よろしく頼む」
「はい、お任せください」
深々と頭を下げるエイダンに、セデルは笑う。不器用な父親が見せた精一杯の歩み寄りに、思わず笑顔が零れるのを止められなかったのだ。馬車の待合所に向かうセデルの足取りは、実に、軽かった。
乗合馬車を幾つか引き継ぎ、セデルは無事に王都へと戻ってきた。懐かしの我が故郷! みたいな気持ちにはならないものの、戻ってきたなぁとは思う。そしてその足でセデルが向かったのは、職場でもある配達屋ギルドの建物だった。メリッサの元へ荷物を届ける前に、一度受付に顔を出す必要があったのだ。
「ただいま戻りました、エフェスさん」
「お帰りなさい、セデルくん。予定よりちょっと早かったかしら?」
「馬車の乗り継ぎがスムーズに出来たので」
「それは良かったわ」
そう言ってセデルを出迎えてくれたのは、配達屋ギルドの受付を担当するエフェスという女性だった。セデルがまだ新人だった頃から担当してくれている、頼れるお姉さんだ。
一つに結わえた焦げ茶色の髪をバレッタでまとめて邪魔にならないようにしているのも相まって、仕事の出来るしっかり者という印象がある。実際、彼女は依頼を振り分けるのがとても上手で、頼りにされているのだ。
「依頼されたケーキの配達は完了しました。……したんですけどぉ」
「あらあら、何か問題でもあったの?」
「何とか受け取って貰えましたけど、初手で門前払いされましたぁ……」
「……セデルくんが?」
きょとんとした表情のエフェス。その表情からは、セデルへの信頼がうかがえる。礼儀正しく真面目に仕事に勤しむセデルが、依頼人やその関係者の不興を買うことは今までなかったからだ。
そんなエフェスに、セデルは半笑いみたいな表情で事情を簡潔に説明した。
「依頼人が家出同然で飛び出していたようで、お父さんがお怒りで……」
「それはまぁ、大変だったわねぇ」
「何とか丸く収まったんですけど、そういうのは教えておいてほしかったです……」
「そういうこともあるわよ」
何事も経験ね、みたいな感じであしらわれて、セデルはうーと小さく唸った。前向きに頑張るセデルであるが、初めて喰らった受け取り拒否の衝撃はやっぱり結構あったのだ。信頼出来るエフェスが相手なので、ついつい甘えるような愚痴が出てしまったのである。
そんなセデルを、エフェスは咎めない。お疲れ様と労ってくれる優しさがある。その姿は、弟を可愛がる姉のようであった。
そこでセデルは思い出したように書類を取りだし、エフェスに渡す。依頼完了を示す受取人のサインが入った書類と、新しい依頼書だ。
「こっちは受け取り完了の書類ね。それでこっちは、新しい依頼書……?」
「僕が食べ物を運べると分かって、ご両親がメリッサさんに荷物と手紙を届けてほしいということで、簡易ですが受付をしてきました。処理をお願いします」
「任せてちょうだい。少し待ってもらうけれど、良いかしら?」
「大丈夫です」
ぺこりと頭を下げるセデルに、軽くウインクをして奥へと引っ込んでいくエフェス。配達屋ギルドでは、届いた依頼を受付が処理してセデルのような配達を担当する職員に振り分けている。今回のように配達屋ギルドや出張所が存在しないので依頼の処理が出来ない場合は、簡易で配達員が受付した後にギルドで処理をする必要がある。依頼内容の修正の場合も、同様の処理が必要だ。
それらは、どこでどうトラブルが起きるか分からないので、証拠を残すという意味でもある。書類に残しておくというのは、それだけで有事の際に正確な判断をする役に立つので。
エフェスが処理をするのを待ちながら、セデルは思わず呟いていた。
「メリッサさん、喜んでくれるかなぁ……」
『収納』の中に預かった手紙と手製の料理のことを考えて、セデルは表情を緩めた。両親にケーキと手紙を届けてほしいと頼んだメリッサは、受け取って貰えないかもしれないと思っていたのかもしれない。その彼女に、両親がちゃんと受け取ってくれたこと、そして、彼らからの荷物を預かってきたことを告げた時、どんな顔をしてくれるだろう。
断ち切られていた親子の絆を、交流を、時間を、セデルがつなぎ直す手伝いを出来たということだと彼は思っている。自分の仕事に誇りを持って、胸を張って、やり遂げようと思うのはこういう時だ。誰かの為に、誰かの幸せの為に役立っている。そのことは、幼い頃に基本恩恵しか持たずに揶揄された過去を持つセデルにとって、今の自分を誇れる立派な理由だった。
誰かに喜んでもらえるように、誰かの役に立てるように。幸せを届けて、優しい世界を広げる為に。いつの日か、セデルでなければと言われるような配達屋になるのが、彼の夢だった。
一つ一つ依頼をこなし、業績を積み上げて、そうして歩んでいく彼の未来はきっと、多くの人に愛されるものになるだろう。彼の願った通り、幸せを運ぶ配達屋として。




