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お飾りではなかった王妃の実力  作者: 鏑木うりこ


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第63話 番外編 シルビオレという女性3

「シルヴィー! また勘定を間違えているぞ!! お前は俺をまた殺す気か!」

「うるさいっ! 私がこんな暮らしをしているのはアンタのせいじゃないっタイラー!!」


 

 そしてシルビオレは花が咲き乱れ、美しい月夜の晩にタイラーを結ばれ……手に手を取って逃げ出した。美しい希望と……そして幻想に生きた逃避行だったが、すぐに皆に気づかれた。


「は……? フ、フレジット様の……こ、婚約者!? そんなこと、一言もいっていなかったのに」

「……残念だよ、タイラー。流石に息子の婚約者を篭絡する商人をウチに出入りさせるわけにはいかないよ」


 事がバレたタイラーはハイランド家から縁を切られてしまう。当然と言えば当然だが、この辺り一帯に勢力を伸ばしていたハイランド家から切られるということはこの辺りで商売は出来ないと言うことだ。

 今まで懇意にしていた商会からもすべて手を引かれた。


「分かるだろう? ハイランド伯爵家から睨まれたらどうなるかくらい」


 ハイランド家はそんなことはしないだろう、だがハイランド家に寄り添い、寄りかかって生きている商人は好んで心証の悪いタイラーと取引をしようとは思わない。しかも古くからの商家でもないタイラーは一気に何も出来なくなった。

 にっちもさっちもいかなくなったタイラーはシルビオレのアメリア家に助けを求めるが、そこではもっとひどい罵声を浴びることになった。


「お前の、お前のせいで! 何故その顔を我が家に出せたのだ!! 婚約の違約金、今までの融資分、ハイランド家からの贈り物の数々……! 我が家は終わった、破産したのだよ!! お前らのせいで!!」

「ひ、酷い……お父様、だって……私は辛かったのよ……!」

「結婚前に男に股を開くあばずれは私の娘でもアメリア子爵家の娘でもない!! もう二度と顔を見せるんじゃないっ」


 あばずれと呼ばれ、シルビオレは崩れ落ちるもそれも自己責任なのだ。もしこれが体を許していなかったら、ハイランド家でも穏便に済ませようと思ったかもしれない。


「行こう……シルヴィー」

「……タイラー……」


 二人は店を畳み、東へ向かった。ちょうどマルグ国とは逆側に位置する国へ居を移し、新しくやり直そうとした。しかし、店の会計を任されたシルビオレがやらかしたのだ。仕入れや帳簿など手伝ったこともなかったが、自分は出来ると信じていた。あのフレジットですらやっているのだから、私は完璧にできると信じ込んでいたのだ。

 そのシルビオレの言葉を信じ、貴族令嬢なのだからきちんとした教育を受けていると思い込んだタイラーも悪かった。シルビオレは大失態を犯し、タイラーが今まで溜めてきた貯金をすべて補填で埋めなければならなくなった。


「シルヴィー! 何度いったら分かるんだ。ウチはもう金はない! それなのにこんなに服を買ってどうしようっていうんだ!」

「でもっ! 毎日同じ服なんて着れないわ、当たり前じゃないッ私は子爵家の娘なのよ」


 持ち前の根性で、死ぬことは選ばなかったタイラーだったが、気位ばかり高く謝る事をしないシルビオレ。そして家から勘当され、平民となったのに貴族であった頃が忘れられないのか贅沢ばかりしようとするシルビオレに愛想が尽きる。


「次に何かやらかしたら離婚だ!」

「離婚!? そしたら私はどうなるのよ!」

「知るか! 別の男でも引っ掛ければいいだろうよ!」


 数日後には離婚届と、自分で作った借金の督促状に囲まれて粗末な家の床に一人で座り込むシルビオレの姿があった。タイラーに隠れ、シルビオレはあちこちから借金をしていたのがばれた結果だ。


「なんで……どうして……私は、私は選ばれたのよ? フレジットなんかより、タイラーなんかよりもっと素敵な旦那様が私を迎えに来てくれるはずなのに、どうして……? 私は何も悪くない、悪くないのに!!」


 もうシルビオレを迎えに来るのは借金取りしかいない。シルビオレは何も悪くないだけを繰り返して、これから生きて行かなければならないのだった。



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