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お飾りではなかった王妃の実力  作者: 鏑木うりこ


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第62話 番外編 シルビオレと言う女性2

タイラーは商人である。古くからの商家の出てはなかったが、ハイランド家と取引をはじめ、素早い対応で信頼を集め今では店舗を2件構え、かなり売り上げを伸ばしている新進気鋭の商人だった。そのタイラーがハイランド家へ納品へ来た時の事だった。


「ん?」


 伯爵家の庭の人気のない場所で隠れるように、沈痛な表情を浮かべる下を向いた令嬢を見かけたのは。見た事がない年頃の令嬢にタイラーは首を捻った。


「アイリーン様ではない、この家に後は女子の子供はいない。すると……遠縁の子爵の令嬢ってとこか」


 遠縁、は外れたが子爵令嬢という事は鋭く見抜いた。タイラーですら高位貴族の令嬢と下位貴族の令嬢は見分けがつくのだ。それほどマナー、立ち振る舞いには教養の差が現れる。アイーダはこの差を何とか縮めようと頑張っていたのだが成果は芳しくない。

 不幸な事にシルビオレがフレジットの婚約者だとタイラーには結びつかなかった。フレジットの婚約者ならばもっと高位貴族の令嬢が相応しい。商売でしか顔を合わせたことがないからフレジットの残念な所を知らないタイラーはそう思っていた。だから気楽に声をかけてしまったのだ。

 子爵程度の令嬢ならば商家と婚姻を結ぶことは良くある。商家は貴族との縁を取りたがる。なら自分が声をかけても許される筈だと。


「やあ! 素敵なお嬢さん、下を向いてどうしたんだい? 綺麗なお顔が台無しだよ」

「……!」


 最初はシルビオレも警戒していたし、話もしなかった。しかし何度もハイランド家で会うようになり……タイラー自身は見た目が良かったのだ。金色の髪に緑の瞳で背も高く、力仕事もこなすが故に筋肉もしっかりついている。貴族の家に出入りすることからそれなりのマナーや礼儀も身につけているし、それに……。


「シルビオレ……シルヴィー。良かったらこれを君に」

「まあ……可愛らしいイヤリング……」

「君に似合うと思って買って来たんだ」


 贈り物も欠かさない。フレジットからはドレスすらほとんど貰ったことがなかったのでシルビオレはタイラーにどんどんひかれて行った。

 ただ、フレジットは何もシルビオレに贈らなかったわけではなかった。ドレスはというと


「まだシルビオレのダンスやマナーでは夜会には連れていけないわ」


 アイーダの判断で贈らずにいた。そしてその他の贈り物は女性のアクセサリーの好みがわからないフレジットが宝飾店で店員に言われるままに今年の流行を一人で買い、そしてシルビオレに直接渡さず、アメリア家に送っていたからだった。


「……なにこれ? 私の趣味じゃないわ。こんなの要らない、お母様とモーネットに上げる。これから送られてくるのも全部持っていいっていいわ」

「えっ! 良いの?? お姉様」

「良いわよ」


 一番最初にフレジットから届いたネックレスをみて、シルビオレはそう家族に伝えたのだ。残念な事にシルビオレは最新の流行にも疎かったし、物の価値を知る審美眼も持ち合わせていなかった。それにシルビオレ自身のセンスにも少し問題があった。そんなたくさんの事象が積み重なって、シルビオレはフレジットはケチな男だと信じ切って、彼女の中で最悪の婚約者になっていたのだ。


 フレジットがシルビオレに贈ったネックレスの100分の1以下のイヤリングに歓喜し、感動てしまっていたのだった。




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