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お飾りではなかった王妃の実力  作者: 鏑木うりこ


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第58話 番外編 似た者の末路1(ネリーニ

ダルク公爵には娘のネリーニの他に息子がいる。エリド・ダルク次期公爵であり、彼には妻のシレーヌ、そして彼女との間にに息子と娘もいて順調に領地と領民を守り、家を盛り立てて行く力をつけていた。


「信じられない!」


 そんなエリドの完璧な人生に暗雲が、王城からやって来た。


「ネ、ネリーニ? 何でお前がこのダルク家に? 何の用だ」


 突然何の連絡もなく、しかも建国祭の最中に戻ってきた妹をエリドは歓迎しなかった。ネリーニの事をエリドは嫌っていたからだ。


「また醜聞か……」


 エリドの人生は何度も何度もこの馬鹿な妹に足を引っ張られ続けて来た。極め付けは学生時代にネリーニには勿体ないと思っていた婚約者を裏切り、馬鹿なカエル王に取り入った事だ。

 馬鹿は馬鹿同士仲良くなんて言っている場合じゃない。ネリーニの元婚約者は伯爵家ながら、広大な土地を有し資金も潤沢な素晴らしい家だったのにすべて台無しにされたのだ。折角の縁を捨て、アイリーン・ハイランドなしでは何もできない愚王にその身を委ねた!


「伯爵家より国王に決まってるじゃない」


 馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがこれ程とは。しかしエリドの父である現公爵はそれを良しとし、ネリーニは側妃に収まった。


「まあ、王家に預けてしまえばもうダルク公爵家とは縁が切れる。これ以上馬鹿な事はすまい」


 と、エリドは胸を撫で下ろしたのに。


「エルファードとは離婚しました! もう王宮へは戻りません!!」


 とんでもない災厄がまた目の前に立ったのだ。


「意味が分からぬ。王家に嫁いだ娘が帰るなど、どれほどの醜聞か!! 帰れ、ネリーニ!!」

「嫌です! お兄様。王宮にあった私の荷物もすべて持って帰って来ます。さあ、私の部屋に運びこんで」

「お前の部屋などない!!」


 当然だ。出て行った妹、しかも王家に入ったのに帰ってくる事などあり得ない。しかもネリーニの部屋は日当たりも良く、警備もしやすいのでエリドの子供達の部屋になっている。それを出戻りがよこせだと? ふざけるのもいい加減にしろ!


「はあ? 何を言ってるのかしら? お兄様は。仕方がないわ、客間に入れます。早く部屋を開けてくださいませ」

「いいから王宮へ帰れ!」

「ですから離婚致しました!」


 馬鹿な妹は馬鹿な事を叫ぶ。


「側妃とは言え、そう簡単に離婚なぞ出来るわけがないだろう! それに建国祭はどうした?! 何故側妃のお前が出席していない!」

「側妃ではありませんわ! 私は正妃です!」


 いよいよ、妹は馬鹿を通り越して病気になったのだとエリドは確信する。正妃はアイリーン妃だ。アイリーン妃がいなければこのナザール国は終わると言うのに、こいつは何をいっているんだ?

 むしろアイリーン妃がいたから、馬鹿なネリーニでも側妃をやっていけたのに。エリドは溜息を吐くしかない。


「はあ……それで? 正妃様ならばもっと建国祭にいなければならないだろう? あれはただの祭りではない。あの期間にどれほどの情報を仕入れ、どれだけ有利な契約を結べるかで我が国の行く末が決まるのだから」

「え? そんなこと知らないわよ。建国祭はお祭りよ、楽しい楽隊の音楽を聞いて美味しい料理を食べて商人から試供品を山のように貰える日なのよ?」


 しばらく会わないうちに妹の愚かさは加速したようだ。とにかくこいつと話をしていても頭痛が増えるだけだと気がついたエリドは父の姿を探した。

 ネリーニよりまだマシだろうと信じて、どっと疲れた様子で戻ってきた父を捕まえ質問、いやもう詰問した。


「父上ッ! 何故ネリーニが我が家にいるのですか、しかも離婚しただとか自分が正妃なのだとか妄想も甚だしい。それに建国祭はどうしたのですか? そうでなくても我が家は父上の我がままで遅れて出席しているのに! どれだけ我が家が毎年出遅れて損害を被っていると思っているのですか。ニールス国との取引はまとめて頂けたのでしょうね!?」


 矢継ぎ早に畳みかけてくるエリドに頭痛が増すが、ダルク公爵は答えなければならない。


「エリド、良く聞け。私が見た真実を話す。エルファード王はネリーニと共に王妃アイリーンを追い出したらしい。建国祭には客が誰一人残っておらず、エルファード王とネリーニは諍いを起こし、二人とも離婚をすると宣言した」

「は……?」


 エリドは言葉を失う。


「ネリーニは……自分はアイリーン妃と同じだけ能力があると常日頃からいっていた。そして自分も政治に携わっているのだと。むしろ自分がいるからこそ、これだけナザールは栄えているのだと」

「は?」

「だから私は……大丈夫だと思いネリーニに手を少しだけ貸した。そして知恵も入れた。ネリーニがエルファード王の子を産めば我がダルク家と王族の繋がりは強固なものとなる……」


 エリドは自分の父の甘さをこれほど憎んだことはなかった。



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