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お飾りではなかった王妃の実力  作者: 鏑木うりこ


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第57話 番外編 誰もが君の幸せを願っている

「素敵……」


 ぽっと現れたその子供はとても素敵な紳士だった。


「皆さん、初めまして。レンブラントと申します。故あってこちらのマルグに越してまいりました。今日よりよろしくお願い申し上げます」


 優雅に微笑む第一王子、それがレンブラント・マルグその人だ。金茶の髪に、緑の瞳。表情は彼の母親であるアイリーン妃に似ているが、顔の作りは整っていて……本人はとても嫌がっているが、父親に似ている。レンブラントの父親は愚かなカエルと有名な前ナザール国王エルファードで、自らの体に流れる血の半分を毛嫌いしている。


「レンが自分を嫌っても、レンのことを大好きな人がたくさんいます。その人達のことを忘れないで」


 暖かく抱きしめてくれる人達のお陰で、レンブラントは少しづつ自分を大切にしようとしている最中だ。そんなちょっと影のある王子様が現れて、現在6歳前後の貴族の子供達は色めき立った。

 貴族は上位貴族、王族と所縁ができるよう王の子供達とご友人になれるよう子供を持つことが多い。王の子供がいない時期に産まれた貴族の子供達は「ハズレ」扱いされる。そんな「ハズレ」世代が一気に「当たり」に代わったのだ。

 「当たり」な上にレンブラントは実年齢より遥かに大人びていて、少女たちはすぐに夢中になった。


「レンブラントさま、レンブラントさま! ぜひわがやのおちゃかいへ!」

「いいえ、れんぶらんとさまはわがやのおちゃかいへ!」

「わたしよ!」

「いいえ!わたしよ!」


 まだ6歳の少女たちの言い争いも


「お茶会でしたら招待状をいただけますか? 素敵な招待状を楽しみにおまちしております」

「はいっ」

「はいっ」


 一言で諫めてしまう。頼もしいが、その頼もしさが悲しいと言われるほどの子供だった。



「義父上、母上。私は……」

「レン。大丈夫、分かっている者達ばかりだよ」


 どさりと積まれた釣書。レンブラントに届いた婚約者候補の絵姿の山だ。


「私としては他国へ出したくないんだよなあ。もっとレンと釣りに行ったり、乗馬をしたりしたいんだ」


 ひょいひょいとマルグ国王シュマイゼルは釣書を分別していく。


「わたくしも出来れば国内の方と婚約して欲しいと思っていますが……でも希望があれば他国でも良いのですよ? レンブラント。ナザール以外なら……」


 シュマイゼルが可としたものをアイリーンが広げて目を通している。どれも国内の有力貴族の長女だ。国外は最初から排除されていた。


「ナザールは私も絶対にお断りしたいと思います」


 レンブラントは基本的にシュマイゼルとアイリーンの決定に逆らわない。だが、ナザールが絡むと話は変わる。ナザールから追い出され、逃げてきた人々の中で一番元祖国を嫌がっているのはレンブラントだ。過去には戻れないものだが、万が一戻れたとしても絶対に戻りたくないと切に願っている。


「絶対に行かせる気はないから安心しなさい。わが国では女性も同権で後継者として認められているからね。ちょうどいい婿を捜している家も多いんだよ」

「ちょうどいい、ですか。なるほど」


 レンブラントの大人びた笑みをシュマイゼルとアイリーンは頼もしさ半分、悲しさ半分で見つめる。そしてレンブラントを年相応に扱ってくれる家を探さなくては、と慎重に釣書を確認してゆく。レンブラントはきっと言われれば何の不平も漏らさずに、婚約を結ぶだろう、自分の意見など一言も言わずに。

 だからそこ二人は慎重に慎重を機してレンブラントの婚約者候補を選ぶ。可愛い息子がもっと自分らしさを出せるような、伸び伸びと生きていけるそんな家を求めて。


 結局レンブラントは国内の公爵家の一人娘と婚約を結んだ。決め手はその娘が大のアイリーンのファンであったから、だったようだ。二人で会えばいつもアイリーンが素晴らしいという話しかしてないようで、アイリーン本人は心配したが、本人たちはご機嫌そのものだった。


「アイリーン様は素敵ねー! わたくしもああなりたいわ」

「リズレット嬢ならなれますよ」


 二人でブランコに乗りながらそんな話ばかりしている。アイリーンの心配を他所に、二人は順調に婚約者として過ごしている。


「よく考えてみたら、レンブラントはわたくしの父上と同じ性格でしたわ」

「あぁ、言われてみたらそうだね! 優しいんだけれど相当狸の癖に尻尾を出さない所がそっくりだ。やはり君の息子だなあ」

「ええ、ナザールで得た最も素晴らしいものですもの。レンブラントをわたくしの元に連れてきてくれた事だけはあの方を評価しておりますのよ?」


 それには同意だね、とシュマイゼルとアイリーンは微笑み合い、年相応の笑顔でブランコを漕ぐレンブラントを見守っていた。きっとこの子は幸せになると確信しながら。



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