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公爵令嬢ルイーサは、好きな人を追いかけて冒険者になった〜無自覚で無双して、気付けば有名になっていました〜  作者: ゆらゆうら


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ep2 公爵令嬢、依頼を受ける

最初は、恋愛要素少なめです。徐々に増えていく予定です。

「冒険者になる。……なんて意気込んだのはいいものの……、こっちを疎かにはできないもんね」


 山積みの書類を前に、公爵令嬢ルイーサは、大きな溜息を吐いた。


 冒険者になると意気込んでから一週間。すぐさま冒険者となって、公爵令嬢としての務めを放棄するほどルイーサは馬鹿ではなかった。自分がいなくなることで、困る人たちがいるのを知っていたからだ。


(でも、この一週間で準備は整った。これで、ある程度の魔物との戦闘も問題ないはず……)


 この一週間、何もして来なかったわけではない。公爵令嬢としての務めも完璧にこなし、空いた時間で鍛錬に励んでいた。


 隣国の経済情勢の資料を爆速で読み終えると、ルイーサは勢いよく立ち上がった。


「よし、今日の役目は終わり! 後は、この分身を置いて……っと」


 自身の身体に魔力を込めて、自分の分身を出現させる。ものの数秒で、ルイーサの目の前には本物と遜色ない姿の分身が現れた。


「じゃあ、よろしくね。公爵令嬢ルイーサ・ベールメント」


「えぇ、任せて。冒険者ルイーナ」


 分身にそう告げると、分身はまるで本物のように言葉を発した。再現精度は完璧である。


 そうして、分身ルイーサに見守られながら、ルイーサは窓から屋敷を抜け出していった。


◇◇◇


「ほほ〜、ここが、冒険者ギルド……」



 王都最大級の冒険者ギルドの前。ルイーサは腕を組み、仁王立ちで目の前の建物を見つめていた。


(それにしても、この仮面……めちゃくちゃ前が見えないんだけど……)


 髪色は変えられても顔までは変えられない。

 そのため数刻前に、顔を隠すための仮面を購入したルイーサ。路地裏の怪しい露店商人が、防御魔法が施された一級品だと如実におすすめしてきた仮面であった。


 値段もそこそこした。貴族のルイーサがそう思うほどの金額。つまり、冒険者からしたら手も足も出ない金額であった。


 それだけ価値のあるものなのだと思って、購入に踏み切ったルイーサであったが、『買う』と言ったときのあの商人のしたり顔が忘れられないでいた。


(つけると視界は数センチしかない……、仮面としての性能は最悪ね)


 だが、ルイーサにとってはそれほど致命的な欠点ではなかった。元々、顔を隠すため、包帯を巻いて、視界さえも遮ろうとしていたのだ。

 

(数センチでも視界が見えて、かつ防御魔法も付与されているんだもの……数十万の価値はあるよね)


 そう、ぼったくられたことを正当化しようとルイーサは自分に言い聞かせていた。


(まあ、魔力探知を常に発動してれば、別に困ることはないか)


 魔力探知で周囲の人の数や動きを把握していれば、人にぶつかることはない。


(さて、さっさと冒険者登録してこよっと。中でシューリのことも聞けるといいんだけど……)



◇◇◇


 冒険者ギルドの中は活気付いていた。勝利の杯をかざしているパーティーや、掲示板の前で依頼を見比べているもの、パーティーメンバー募集を呼びかけているものなど。


(シューリもどこかのパーティーに所属しているのかな……、そこに入れてもらえればそれが一番なんだけど……)


 辺りをキョロキョロしていると、後ろから近づいてくる人影を感知した。


「何かお困りでしょうか? 冒険者登録でしたら、受付へご案内いたしますよ?」


 優しそうな女性の声。敵意は全く感じられない。振り向くと、そこには、ギルドの受付らしき女性が立っていた。


「仮面……?」


 受付の女性は、ルイーサの仮面を見て不思議そうにそう呟いた。顔を隠しているのだから怪しく見えるのは当然だろう。


「顔に酷い傷があって……、それを隠しているんです」


「そっ、そうでしたか……、失礼致しました」


 心優しい人なのだろう。頭を下げられそうになったのでルイーサは慌てて手で静止した。


「い、いえ! 慣れてるので気にしないでください。えっと、ひとまず冒険者登録をお願いしてもいいですか?」


「……はい! では、こちらへどうぞ」


◇◇◇


 受付嬢から丁寧に説明を受け冒険者登録は無事に終了した。事前に調べていたとおり、身分証とかは必要ないようであった。


 つまり、簡単かつ、自らが志願すれば誰でもなれる職業ということだ。その事が、冒険者という職業がいかに危険かということを皮肉なほどに示していた。


 ルイーサに渡された冒険者を示すタグにはFの文字が記されている。名には『ルイーナ』と、冒険者としての偽りの名が刻まれていた。


「掲示板にFランクから受けられる依頼があるので、受けたい依頼があれば魔力印を押しておいてください。依頼達成が確認できましたら、その功績に応じてランクも上がります。……他に何か聞いておきたいことはありますか?」


 魔力印。つまり、依頼書に魔力を込めるだけでいいという簡単な受注方法である。

 ランクの仕組みは聞けた。後は、目的の人物、シューリの情報を聞くだけ、のはずだった。


「一つお聞きしたいんですが、冒険者のシュー……」


 そう言いかけて、ピタリと言葉を止めた。


「ルイーナさん?」


「……いえ、何でもないです。大丈夫です。では、ありがとうございました」


 そう告げて、深々とお辞儀をし、掲示板の方へと向かっていった。


 なぜ、シューリのことを聞かなかったのか。それは、聞く直前にもしものことが頭をよぎったからだった。


(ありえないし考えたくもない……、けど)


 シューリが生きているとは限らない。そんな嫌な考えが頭をよぎったしまったのだ。


(ううん、シューリはそんな簡単にくたばる奴じゃない……、多分ランクを上げて活躍しているはず……)


 シューリの実力は低ランクの冒険者で留まるほどのものではないとルイーサは確信していた。ただ、今の自分がすべきことは、シューリに今すぐに会いにいくことではない。

 低ランクの自分でシューリに会いにいくことは、ルイーサのプライドが許せなかった。


 まずは、実力をつけること。そして、シューリと同等の強さを手に入れてから、仲間になりたいと伝えよう。


(そのためにも、まずは依頼を……。あ、これは!)


 手に取ったのは低級魔物の討伐依頼書だった。記載されている低級魔物は、畑を荒らす害獣である。


(確か、この害獣のせいで被害が拡大している地域があるって、領地報告書にも書いてあったっけ)


 公爵令嬢として目を通していた領地報告書に各地の農作物被害、魔物被害をまとめたものがあったことを思い返す。


(お父様には、一応私の案を伝えてはみたけど、まだ動いてなさそうだった)


 貴族に送られてきた報告書だけでなく、冒険者への依頼としても出されているということは、解決に時間がかかっていることを示していた。


(私が討伐すればこの問題は解決するかもしれない……、よし! これにしよう!)


 ルイーサが初めて受けた依頼は、東にある農村を縄張りとする"グンショクダヌキ"の討伐であった。


 しかし、ルイーサは知らなかった。この依頼を数刻前に受けていたDランクの冒険者パーティーが、その場所ですでに全滅していることを。


 それを受けて、王国騎士団が動いていたことを。

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