11話 村長は働く
「もういないみたいね。戻ろうか」
「そうですね」
「了解っす」
俺達はすぐにその場を離れた。旧鼠は悪食のせいか肉も質が悪く肉うどんには向いていない。
「しかし、廃村とはいえこんな近くまであんなのがいるもんなんすね」
「まあ、都会は、モンスター対策がしっかりとられてるんだろうけど、田舎は小さい台風みたいな天災扱いだったよ」
魔物で死んでしまうなんて少なくない。
都会が異常なくらいだと俺は思う。
だから、俺がいない間に村が滅んだのも、運が悪かったんだなと受け止めることが出来た。
「あと、この辺りでは見掛けなかっただけで、もっと危険な場所もあるしな」
「そんなところに住んでたんすか……よく生きてましたね」
「まあ、田舎の人間は慣れてるんだよ」
そう言いながら拠点へと戻る。
戻ると、クアケが抱きついてくる。
俺は、その頭を撫でてやると、クアケは気持ち良さそうな表情を浮かべた。
「ちょっと、なにそのやりとり」
スゥさんが、撫でる手の袖を引っ張りながらこっちをじっと見てくる。
「ああ、いや、こうしないとクアケのヤツ離れてくれなくて」
「これが、ワタシとサヌキ様の【日常】なのです」
クアケがそういうと再び二人が睨み合う。
「ああそう。じゃあ、今は同じ村民だし、私の日常でもそうなってもいいわけよね。さあ、どうぞ」
そう言って、スゥさんは何故か両手を広げて待ち構えている。
だが、まあ、しろというならするだけだ。
俺は、スゥさんの頭も優しく撫でてあげた。
クアケの髪が一本一本しっかりして艶のある髪の毛なら、スゥさんは細くてさらさらとしていた。例えるなら、うどんとそうめ
「ちょっと、サヌキ、失礼なこと考えてないわよね」
「考えてないです」
じっと上目づかいで睨んでくるスゥさんの目が見えないよう頭頂から前髪にかけてを丁寧に撫でると、スゥさんは嬉しそうにはにかんでくれた。危なかった。
そして、サラダもなんかして欲しいオーラを出していたので、同じようにしてやる。
すると、サラダは顔を真っ赤にして怒りだす。
「なっ!? なんすかこれ! 子供じゃないんすからやめて下さいよ!」
そう言うと、プイッっとそっぽを向いてしまった。
「え? 嫌だった?」
「……別に……嫌じゃないっすけど……」
「なら、良かった」
サラダは、恥ずかしさを隠すように黙ってしまった。ただ、頭はこっちの方向いているから撫でろという事なんだろう。
俺が笑ってサラダの頭を撫でていると、スゥさんに肩を叩かれた。
「サヌキ、私もお願い」
「い、いや、俺さっきスゥさんの頭撫でましたよね……?」
「私、一番、短い」
言葉遣いが変なんだが。
だが、なんだか逆らわない方が良い気がしたので、黙って撫でる。
「わ、わかりました」
「サヌキ様、私は? 私も足りてないですよ?」
クアケがアピールしてくるが、流石に今は無理だ。スゥさんがめっちゃ睨んでる。
俺も命は惜しい。
「後でな」
クアケには少し申し訳ないが、スゥさんには逆らえない。
スゥさんが満足するまで俺は頭を撫でたけど、時間は平等じゃなかった気がする。
そして、ようやくうどん作りに入れる。
「よし、それじゃあ、早速作るか!」
「「おおー!!」」
「……おー」
スゥさんとサラダは元気良く返事をしたが、クアケは小さな声で言っただけだった。
俺は、小さく溜息を吐くと、指示を出し始める。
「スゥさんは、薪を集めてきてくれ。サラダは水汲み頼む。俺が料理を作るから」
「わかった」
「了解っす」
スゥさんが外に出ていく。
「サヌキ様! 私は何を?」
「あー、ほれ、頭撫でてやるから出せ」
「え?」
「村民の元気がないと、村長は困るんだよ」
俺がそう言うとクアケは素直に自分の頭を差し出す。
俺は、クアケの頭をポンポンッとしてやった。
クアケは嬉しそうな表情を浮かべたが、どこか不満そうな感じでもあった。
「何が気に入らないんだ?」
「……もっと優しく愛情を込めて撫でてください」
注文の多い奴だ。
だが、それで喜んでくれるのならば、と、今度は丁寧に髪をすくようにして、撫でてみる。
すると、クアケは気持ち良さそうに目を細めた。
「ふぅ~幸せです~」
「お、おう……」
なんだか照れる。俺の顔も赤くなってしまっているかもしれない。
「クアケばっかりずるい」
スゥさんの声だ。見ると、スゥさんが、不機嫌そうな顔で立っていた。
いや、あんた撫でたでしょ。
「サヌキ、こっち来て」
「いや、あの、俺今忙しいんですけど……」
「いいから」
その後、俺はずっと頭を撫でさせられ、サラダに怒られ、サラダの頭を撫でたらすげー怒られた。
そして、漸く俺はうどん作りを始めることが出来た。
村長って大変なんだな。
ポーターの呟き「ああ、どうかしてるっすよ、あの人に撫でられただけでこんな……こんな……!」
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