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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
堕ちた英雄

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412/414

下剋上 2

続きです。



◇◆◇



「ふぅ〜…」

「お疲れ様でした、ネメシス殿。」

ーお疲れ〜ー

「ああ…」


上手い具合に女神・アスタルテを“封印”する事に成功したネメシスは、しかし大きな力の行使をした影響でその場に座り込んでいた。


そこに、危険はもうないと判断したハイドラス(とセレウス)が近付いて来て、声をかけた、という流れであった。


「“封印”は無事に成功した様ですね。」

「…ああ。とりあえずこれで、当面の大きな問題は一つ片付いた事になる。少なくとも、この世界(アクエラ)がいきなり壊滅する事態は、未然に防ぐ事が出来たな。」

ーっつっても、まだ問題は山積みだけどなぁ〜。カエサルの件もあるし…ー


しばらく休憩していたお陰か、何とか立ち上がりながらそう言うネメシスに、セレウスは追い討ちをかける様な事を言った。


「それも、だが、それとは別に、まだまだ片付けなきゃならん事はある。」

「人間族と『新人類』達の対立、ですね?」

「ああ。…すまん。」

「いえ。」


ふらつくネメシスを手を貸しながら、ハイドラスがそう合いの手を入れた。


ーいやいや。アスタルテはいなくなったんだし、そっちはすぐに解決すんだろ?ー

「ところがそういう訳にもいかん。確かに、人間族と『新人類』達との争いにアスタルテの存在が大きな影響を与えた事は事実だが、そもそも彼女が『新人類』側につく前から始まった事だからな。彼女の存在がなくなったからと言って、“はい、じゃあ仲直りしましょう”にはならないのさ。」

ーあぁ〜…ー


一度始めてしまった紛争というのは、その落としどころが非常に難しいのである。


お互いにかなりの被害を被っているので、相手側に対する悪感情や憎悪は高まっているし、もちろん、長らく続いた紛争に嫌気がさして、講和を求める風潮が高まってはいても、それを成す為にはかなりの労力が必要となってくるからである。


「…もっとも、ネメシス殿の尽力によって、その下地はすでに出来上がってはいるがな。」

ー…そうなのか?ー

「おいおいセレウス。俺が遊んでいた様に見えたのか?」

ー…そういや、何か色々とやっていたよな?ー

「「………」」


あいかわらず、自分の興味のない事にはとことん無関心なセレウスに呆れつつ、その場から離れ、遠くで見守っているカエサル達のもとに向かいながら、ハイドラスが推測を含めた説明を始めた。


「知っての通り、今現在は人間族と『新人類』達は実質的に停戦状態だった。となれば、そのタイミングで停戦合意に漕ぎ着けられればもっとも良いのだが、そうは言っても当然ながら様々な思惑が交差するタイミングでもある。組織が大きくなればなるほど、様々な主張が出てくる訳で、このまま和平交渉を推し進めるべきだと主張するグループも存在すれば、いやいや、更なる力をつけて、次なる戦いに備えるべきだと主張するグループも存在する事だろう。そしてそれは、両勢力のどちらにも存在する、筈だ。」

「実際、これは“アドウェナ・アウィス”が裏で糸を引いていたからでももちろんあるが、『新人類』達の中にも、徹底抗戦を主張していたグループが存在する。まぁ、こっちに関しちゃ、アベル達にも手伝ってもらって、講和ムードにする様に働きかけてもらってはいる。女神・アスタルテがいなくなった以上、客観的に見れば『新人類』側の戦力は大きくダウンするからな。どっちにしても、長期的に見れば、これ以上争うのは『新人類』側にメリットがない。」

ー…確かに。ー

「だから、『新人類』側の世論操作を含めて、流れを変える事はさして難しくないんだ。問題となるのは…」

ー人間族の方、か…ー

「そ。」


実質的にネメシスは、『新人類』側の総司令官の様な立場にあるので、『新人類』側にそうした風潮をもたらす事はそう難しくはない。


だが、対抗勢力である人間族は、そうもいかないのである。


「争っている相手である人間族側を操る事は、当然ながら難しい。とは言えど、向こう側も一枚岩ではないから、反戦派、講和派と呼ばれる陣営は必ず存在する。仮に停戦合意に漕ぎ着けるならば、彼らの力を借りるのがもっとも合理的かつ手っ取り早い。」

ーなるほど…。つまりネメシスは、すでにそうした連中と密かに繋がっている、と?ー

「ああ。」


どんな組織にも、主流とは別の主張をするグループは存在する訳だ。


もちろん、特に“イケイケどんどん”の状態では、そうした声は無視させる事となる訳であるが、何らかの要因で主戦派の勢いが衰えてくると(今回の場合は、“アドウェナ・アウィス”の力を借りて台頭したプトレマイオスとイアードとなるが、ご承知の通り、彼らは“アドウェナ・アウィス”の一方的な都合によって見限られているので、元々そこまで大した力のない彼らの求心力は低下し、しかも実質的に停戦状態となっている事もあり)、そうした勢力が勢いづいてくる。


しかも、ネメシスがそうした勢力を密かに支援していたので、その勢いは更にうなぎ上りとなる。


「何度も言うが、“戦い”ってのは、何も真っ向勝負の事だけを指す訳じゃない。こうした策略や外交も含めて、一つの大きな“戦略”だからな。」

ー…っつ〜事は、やっぱりそっちも簡単に片付くんじゃねぇ〜かっ!ー

「「………」」


ネメシスとハイドラスの説明に、セレウスは至極真っ当なツッコミを入れた。

深刻そうな顔をしてるから何かと思えば、すでにそっちも根回しが済んでいたからである。


もちろん、セレウスの発言もその通りではある。

だが、まだ不安要素がない訳ではないのである。


「確かにお前の言う通り、このまま何もなければ、人間族と『新人類』の争いは終結に持っていく事が出来るだろう。()()()()()()、な。」

「だが、不確定な要素はまだ存在する。さっき、お前が言った通り、カエサルが今後どういう動きを見せるか分からないし、“アドウェナ・アウィス”がまたちょっかいをかけてくる可能性も否定出来ないからだ。」

ー…ふむ。ー


カエサルが“アドウェナ・アウィス”の手に落ちた事は、少なくともこの三人の間ではほぼ確定であると認識していた。


しかし、だからと言って、いきなり問い質す訳にも行かないのである。

下手をすれば、カエサルと全面的に争う事にも成りかねないからである。


同じ釜の飯を食った仲間と争うのは、人情としてはなるべくなら避けたいし、もしかしたらカエサルも、別に“アドウェナ・アウィス”に完全に操られていない可能性も否定出来ない。


もちろんこれは、希望的観測に過ぎないが、いざとなればネメシスやハイドラス、セレウスは、かつての仲間だろうと戦うだけの覚悟や信念が存在するが、ここで問題となるのは、(アベル達はともかく)ルドベキアとアルメリアの存在なのである。


彼女達は、カエサルが“アドウェナ・アウィス”の手に落ちた事は知らない。

と言うか、あえてまだ伝えていないのだが、それを知った時、カエサルとの付き合いは、彼女達が一番長い事もあって、彼女達がどう動くかも未知数なのである。


もちろん、二人とも聡明な女性である事はすでにネメシス達も十分に理解しているが、人である以上、感情と行動が一致しない事も往々にしてあるのである。


“アドウェナ・アウィス”という、ある種何の思い入れもない、それどころか、この世界(アクエラ)に生きる者達にとっては恩恵ももたらしたが、同時に厄災もばら撒く様な存在()にかける情けはないかもしれないが、それが自分の知る、しかも、長い時を共に過ごした者の形をしていると、途端に判断が鈍る可能性は高い。


なんだかんだ言って心優しい彼女達が、完全に闇落ちした(かもしれない)カエサルを討てない可能性は高く、最悪の場合、カエサルを取り戻す、という理由でカエサルの側につく可能性もあるのである。

(逆に言えば、人としての感情はすでに無くしているにも関わらず、人の弱点を的確に突いて来る“アドウェナ・アウィス”という存在が、いかに厄介でいやらしい存在であるかが窺える策略であると言えるだろうが。)


「いずれにせよ、彼女達に話すにしても、カエサルの真意をハッキリさせる必要がある。もちろん、今の内に打ち明けておくという手もあるが…」

「…そうしたいのは山々だが、彼女達の近くには常にカエサルがいるからな…。彼自身がそう判断してそう行動しているか、あるいは“アドウェナ・アウィス”がそう操っているのかは定かではないが、こちらに対する十分な牽制であると言えるだろう。」

ー…チッ、面倒くせぇ〜ぜ。どうにかして、“アドウェナ()アウィス()”だけ叩き潰せねぇ〜もんかな…ー


苛立ちからか、セレウスはそんな事を言った。


「それが出来れば一番良いんだがな…。」

「残念ながら、“アドウェナ()アウィス()”をこの宇宙から排除する方法はないに等しい。“アドウェナ()アウィス()”は、この宇宙の何処にでも存在するし、また何処にも存在しないからな。それが可能だとしたら…」


ネメシスはそう言いかけて、ハッと気が付き言葉を最後まで言い切る事を止めた。


アスタルテには語ったが、ネメシスは“アドウェナ(同胞)アウィス()”とは別に、終わりに繋がる“鍵”を探している。


しかし、それはセレウスやハイドラスにもまだ知らせていない事であり、仮にその事を告げたとしたら、本格的に彼らをネメシスの事情に巻き込んでしまう、という思いがあったからかもしれない。


ー…何だ?ー

「…いや、何でもない。どっちにしたって、まだ見つかった訳じゃないしな。(ボソッ)まぁいずれにしても、()()()()()()()をしても仕方ないさ。理想的を語るよりも、現実的な策で“アドウェナ()アウィス()”に対抗するしかない。」

ー「………」ー


故に、ネメシスは、この場では言いかけた事を誤魔化す事とした。


セレウスもハイドラスも、ネメシスが何かを隠している事に勘付いていたが、自分達に言わない、言えない事ならば、何かしらの事情があるのだろうと、それ以上突っ込んで聞く事はしなかった。


「…とりあえず、今後の課題は、両勢力の行く末と、カエサルがどう動くか、ですね?」

「ああ。ここまで巻き込んじまって今更ではあるが、改めてお前らの力を貸してくれ。」

ー「………」ー


真摯な表情で頭を下げるネメシスに、セレウスとハイドラスは笑った。


「頼まれるまでもありませんよ。カエサルは私達の仲間で教え子だし、“アドウェナ()アウィス()”は、アクエラ人類、だけでなく、この宇宙に存在する知的生命体達にとっては、ある意味共通の敵ですからね。」

ーだから、お前に頭を下げられる理由はない、ってこった。…仮に頭を下げてお願いをするんなら、さっき言いかけた事を頼む時にするんだな。ー

「っ!!!」


ハイドラスとセレウスの返答に、ネメシスはハッとした。


以前にも言及したかもしれないが、ネメシスは全てを一人で背負い込む悪癖があった。


まぁ、あえて彼の擁護をするのであれば、彼が敵対している存在、すなわち“アドウェナ・アウィス”は元々同胞である、という人としての倫理的、道徳的な後ろめたさ(言うなれば、仲間を裏切っているという葛藤)もあるにはあるが、それ以上に、“アドウェナ()アウィス()”に対抗出来る存在は“アドウェナ()アウィス()”と同じステージに立っている者達だけなのである。


そんな存在は、この宇宙広しと言えど、ネメシスだけしか存在しない。

いや、しなかった、という方が適切かもしれない。


それ故に、彼は仲間を作ろうとしなかったのである。

下手に徒党を組むと、その者達が“アドウェナ()アウィス()”の“駒”になってしまうからである。


こうした背景もあり、彼は、これまで本当の仲間を持つ事が出来なかったのである。


しかし、セレウスとハイドラスは違う。


様々な偶然を経て、彼らは、ネメシスや“アドウェナ()アウィス()”に近しい力を持つ存在となり、少なくとも、“アドウェナ()アウィス()”から危険視される程度には、思い通りに行かない存在として認識されている訳である。


彼らが本格的に手を組めば、“アドウェナ()アウィス()”にとっては、これまでで最大の障害となる事はまず間違いなかった。


が、ネメシスにはまだ迷いがあったのだ。


それが分かっていながらも、それでも彼らを自分の事情に巻き込むのはどうなのか?、という葛藤であろう。


しかしそれすらも、ハイドラスとセレウスはお見通しだったのだ。


最初こそ、確かに巻き込まれた事かもしれないが、今や彼ら自身にも、“アドウェナ・アウィス”と対立する理由がある。


いや、ある意味では、この宇宙に生ける者達全てに、“アドウェナ()アウィス()”の身勝手な支配や実験を拒否する権利があると言えるだろう。

(まぁ、大半の知的生命体達は“アドウェナ()アウィス()”の存在自体知らないし、また“アドウェナ()アウィス()”に抗うだけの力がないのであるが。)


つまりネメシスにとっては、自分が保護すべき存在ではなく、初めて対等に肩を並べて立てる存在が現れた格好である。


ネメシスは、ハイドラスとセレウスの言葉に意図せず微笑んでいた。


「………ああ。そうしよう。」

ー「………」ー


が、流石に今すぐ決断は出来なかったのか、そう言うに留めた。


それに、セレウスもハイドラスも、今はまだその時ではないのだろうと、それ以上は深く突っ込まず、コクリッと頷くに留めたのであったーーー。



◇◆◇



「『新人類』共は、滅ぼさなければならないっ!」

「「「「「………」」」」」


一方その頃、人間族側では大きな変化が起こっていた。


“アドウェナ・アウィス”の力を借りて台頭していたプトレマイオスとイアードがその力を失い、求心力も低下した事によって、所謂主戦派の勢いも低下したのはこれまで述べてきた通りである。


そこに、ネメシスが根回しした反戦派、講和派が台頭し、人間族側も停戦ムード一色となるーーー、と思いきや、そうは問屋が卸さなかったのである。


実際、実質的に停戦状態となり、正式な停戦合意に漕ぎ着けるべきだ、と主張するグループ、反戦派、講和派が力を増したのは事実ではあるが、ここへ来て、何故か衰退した筈の主戦派の勢いが、再び勢いづいてきていたのであった。


「…いえいえ。それはやはり現実的ではありません。『新人類』側の力が落ちているのは事実でしょうが、それは我々も同じ事。ここは、お互い無益な消耗は避け、正式に停戦合意に漕ぎ着けるべきだと考えます。」

「それは、我々も同意しよう。確かに私達の力が衰えたのは事実だからな。しかし、我々が主張しているのは、仮に停戦合意を結んだとしても、『新人類』共(奴ら)に心許すべきではない、という事だよ。」

「「「「「………」」」」」


アッサリと反戦派、講和派の意見を受け入れた主戦派の男だったが、彼はその先の事について言及していた。


「諸君もご承知の通り、『新人類』共(奴ら)は非常に危険だ。その力や能力は人間族を遥かに超え、魔獣やモンスターのみならず、とてつもないバケモノ共すら仲間に迎え入れている。仮に私達が平和を主張したとしても、相手にそのつもりがなければ、平和は維持されない。」

「し、しかし、そもそも我々と『新人類』側は、暗黙の了解でお互いに不干渉の筈だったのです。それを破ったのは我々の方であり、『新人類』達(彼ら)が力を蓄えるのは、これは致し方ない事でしょう。」

「無論、それも分かっている。ただ、我々が言っているのは、『新人類』共(奴ら)は、我々にとって潜在的な敵対者である、という事だよ。『新人類』共(奴ら)が本気を出せば、こちら側に壊滅的な打撃を与える事が出来るのはすでに明らかとなった。故に、これ以上の戦闘は無益な行為ではあるが、私達も、ただ黙って『新人類』共(奴ら)()()されるつもりはない。」

()()などと…」


主戦派の男の発言に、大半の者達は鼻で笑った。


彼らは分かっていたのだ。

『新人類』側にそうした意図はない、と。


ただ、降りかかる火の粉を払う為に『新人類』達(彼ら)は武装をしたに過ぎず、人間族側が手を引けば、あえてこちら側に侵攻してくる事はなく、『新人類』達(彼ら)が求めているのは、完全なる独立性と不可侵だけなのである。


しかし、主戦派の男は続けた。


「…絶対にない、と言い切れますかな?私達が一枚岩ではない様に、『新人類』共(奴ら)も決して一枚岩ではありますまい。仮にそうした勢力は少数派だったとしても、停戦合意に動く事によって、つまり、“こちら側に力がなくなった。”、“今こそ、こちら側に攻め入る好機である。”、と考えたとしても何ら不思議ではありますまい。」

「…まぁ」「…確かに」


主戦派の男の言葉に、反戦派、講和派の者達も、ちらほらと頷いていた。


「しかも、『新人類』共(奴ら)にしてみたら、大義は自分達にこそある、と考えるかもしれませんし、少なくとも頭の回る者ならば、少しでもこちら側の力を削ぐ事によって、再び衝突する事を未然に防いでおきたい、と考える事でしょう。言うなれば、そうした者達を公然と支援する事はないかもしれませんが、ある意味黙認する可能性もあるのです。」

「…つまり、何が仰っしゃりたいのですかな?」


ある意味、要領を得ない主戦派の男の言葉の真意が見えず、反戦派、講和派の男の一人が結論を促した。


「つまりですな。私達も、『魔法技術』に成り代わる、新たなる抑止力を持つべきだ、と言っているのです。先程も述べた通り、我々も今更停戦合意そのものに反対はしません。しかしそれと同時に、相手方が先程述べた様な動きを見せた場合、それを牽制する(すべ)は持っておくべきだ、とね。」

「…ふむ」「新たなる抑止力、ですか…」


主戦派の男の結論に、反戦派、講和派の者達も納得していた。


今回の紛争によって、人間族側が持つ『魔法技術』は絶対の優位性を持つ技術ではなくなった。


何故ならば、『魔法技術』を持たない筈の『新人類』側と、その条件で五分五分だったからである。


もちろんそこには、ネメシスなどの圧倒的強者の存在もあったのであるが、単純に『新人類』側が持つ力や能力が、想像以上に強力だった事もある。


もっとも、だからと言って『魔法技術』の利便性や公益性が損なわれる訳ではないのであるが、単純な戦争の道具として見た場合、やはりその脅威は一段下がる事となるのである。


となれば、『魔法技術』はその抑止力としては機能しなくなる。

少なくとも、以前ならば、“相手は『魔法技術』があるから攻めるのは止めておこう”という牽制機能が低下する事は避けられない事実であろう。

(もちろん、先程述べた通り、『新人類』側に人間族側を侵略する意図はないのだが、絶対とは言い切れない状況なのである。)


そこで、『魔法技術』に成り代わる抑止力となる技術を、主戦派の男は持つべきである、と主張した訳である。


「…しかし、急にそんな事を言っても、『魔法技術』以上のものとなると…」

「…うむ」

「それについては、私達に心当たりがあります。」


流れがこちらに傾いたと見るや、主戦派の男は待ってましたとばかりにそう切り出した。


「…そう言えば、貴方は()()()()の出身でしたな。」

「ああっ…!」

「ええ。“神々”が残した遺産の中には、『魔法技術』以上のものも存在するのです。もちろん、我々はそれを実用化した訳ではありませんが、少なくとも、一から『魔法技術』を超える技術を生み出すよりも現実的ではないかと愚行致します。」

「…なるほど。」


ラテス族。

あくまで偶発的ではあったとは言えど、“神々”、すなわちセルース人類達が最初に接触した民族、部族だった為、『魔法技術』を受け継ぐ事となった者達である。


それ故に、“自分達は選ばれた民である”、という選民思想に毒された背景もあったが、それとは別に、高い技術力を持つ民族、部族である事も周知の事実となっていた為、ただ漠然とした“『魔法技術』を超える技術”、というものを、確かに彼らならば獲得出来るのではないか、という説得力があったのである。


「私達にお任せ頂けるならば、必ずやそれを見付けて御覧にいれましょう。」

「…ふむ」「「「「………」」」」


そう締めくくった主戦派の男、ラテス族の男の言葉に、反戦派、講和派の男達は素早く目線で会話を始めた。


無意味な争い自体、これ以上続けるべきではないと考えている彼らではあるが、だからと言って、別に『新人類』達を全面的に信用している訳でも、個人的な好意からそう言っているのでもなく、あくまで政治的な判断のもとそう主張しているだけに過ぎない。


そんな彼らにとっても、手札は多いに越した事はない。

少なくとも、協議を有利に進める為にも、ラテス族の言ったものは、切り札の一つとなるであろう。


彼らは無言で頷いた。

それに、彼らの代表格らしき男も無言で頷く。


「あい分かった。そちらに関しては、あなた方に一任する事としよう。」

「ハッ!恐悦至極に存じます。」


…それに、今更主戦派の者達に場をかき乱されるよりかは、適当な役割を与えて、議論の中心から遠ざけておく狙いがあったのかもしれない。


いずれにせよ、こうして人間族の間では、停戦合意に向けた動きを見せながらも、その一方で新たなる力を求める動きが矛盾なく同時進行する事となった訳であったがーーー。



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

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ぜひ、よろしくお願い致します。

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