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第一話 「無色の世界」1

 私の趣味はもっぱら音楽鑑賞と粘土細工だ。退屈はいけない、退屈は人を狂わせてしまう。だから、人は時間という概念と上手に付き合っていかなければならない。ゆえに、一人でいる時であればあるほど、何か時間を潰せる、退屈を紛らわせる趣味が必要だ。この病院という真っ白な鳥籠の中に、私自身を沈めてしまわないように。

 私は触れたものの形を覚える。音や匂いだけでは足りない情報を触れることで補っていく。そして、その形を再現し、より鮮明な記憶とするために粘土細工を覚えた。

 例えば、人は声質一つで年齢や性別の判断がある程度つくけど、体格までは分からない。特にどんなヘアースタイルなのか、痩せているのか、太っているのか、それは触れて確かめるのが重要だ。

 手の大きさ、筋肉と脂肪のバランス、服装や身長、触れてからやっと分かることは驚くほどにたくさんある。そうした意味でいえば、私にとって新しい発見は、日々生きている日常の中に転がっていると言えるのかもしれない。

 でも、触れても分からないことも多くある。例えば美形の特徴を知っていても、触れるだけでは美形かどうか判断は出来ず、人がどんな価値判断で容姿の比較をして、美人か不細工かを決めているのかは永遠の問いだ。

 実際は、デリケートな問題であるから、触れることができるのは親しい相手に限られるのだけど、私は今でもそうして父のことを覚えている。誰よりも頼り甲斐ある筋肉質な大きな身体。力を込めると固くゴツゴツしていて、女性とは違う丈夫な身体をしているのがよく分かった。とは言っても、大人の男性に直接触ったことがあるのは父だけなので、他の人が同じような体格であるかは見当もつかないのだけど。


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