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第三話 「静寂が覚める前に」1

 その日の朝を迎えることを、私も真美もずっとドキドキワクワクしながら待ち望んできた。砂絵に描かれた景色を見に行きたいと、私の気持ちを真美に伝え、お互いに決心を固めてから、二週間近くの日々が流れた。

 目的地の砂浜までの道のりの計画はほとんど真美が決めてくれた。持ち物も、海までの道順も、当日のスケジュールも、病院を無断で抜け出すために必要な警備体制の調査までも。私はほとんど真美の考えたことに頷くだけで、気づけば真美に任せっきりになっていた。それだけ真美が真剣に考え抜いてくれた提案が、疑問の余地がないほどに私の希望通りであったともいえる。

「この行順(ぎょうじゅん)であれば、十分日帰りで帰って来れるわ。海水浴場に使われていない砂浜海岸だから、人と接触することなく安心してゆっくりできるでしょう」

「ありがとう……。私一人じゃ、調べるのに時間がかかって計画を立てるだけで苦労しちゃうから、真美がいてくれて助かるよ」

「いいのよ。私も病院での生活に退屈してたから。この旅はいい気晴らしになりそうだわ」

 当日を迎えるまでの日々の中で真美は普段以上に活き活きとしていて、充実した様子で計画を立てていた。私がスマートフォンに搭載されたアクセシビリティの中にある、読み上げ機能を使って調べ物をして計画を立てるよりもずっと早く、真美は的確なアドバイスをくれた。それはまるで、私を外の世界へと導いてくれる天使のようであった。


 当日の朝、静寂に包まれた深夜未明から準備は始まった。足音一つ聞こえない、寝静まった病院内。誰にも気づかれることなく病院を抜け出すにはみんなが起床する前にここを出発しなければならない。もしも、途中で誰かに見つかってしまったら、この計画はその時点で頓挫((とんざ)してしまうから。

 緊張感が高まっていく中、誰も想像しないような、私と真美の一世一代の冒険が始まろうとしていた。


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