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断罪された悪役令息は、処刑ループのたびに帝国を救う  作者: とま


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第49話 辺境からの密書

 封蝋のない簡素な書状が、ヴァルターの私室に届いたのは、夕方のことだった。


 差出人の名はない。


 だが、筆跡に見覚えがあった。


 辺境に赴任している旧知の者——クラウゼ家の遠縁で、今は北の砦に駐在している軍人だ。



 書状の中身は短かった。


 だが、内容は重い。



 食糧が足りない。


 補給が遅れており、砦の兵員の半数が食事を一日一回に減らしている。


 農村では税の取り立てが厳しくなり、農民の流出が続いている。


 土地を捨てた者たちが、山岳地帯で武装集団を形成しているという噂がある。


 正式な救援要請を中央に送ったが、二度とも返答がなかった。



 返答がなかった、ではない。


 「届いていない」のかもしれない。


 あるいは「届いたが、止められた」のかもしれない。



 ヴァルターは書状を机の上に置いた。


 北辺特別支出の経由先に消えた資金。


 辺境へ向かうべき物資が帝都内へ横流しされていた帳簿。


 それらと、この書状の内容が一本に繋がった。



 (辺境の補給が止まっている原因は、宮廷にある)


 地方の問題ではない。


 中央が意図的に——あるいは腐敗によって——辺境を見殺しにしている。



 武装集団の増加がある。


 食糧難と農民の流出がある。


 中央との連絡が途絶えている。


 これらが重なれば、辺境で何が起きるか——


 反乱だ。



 そして、辺境が内側から崩れれば、外から入ってくるものがある。


 スヴァルナという名が、頭をよぎった。


 帝国の北に隣接する国。


 長年、小競り合いを続けながら、大規模な侵攻は控えてきた。


 だが、辺境の守備が薄れれば——



 ヴァルターは書状を折り、引き出しの奥へ仕舞った。


 この文書を誰かに見せることはできない。


 差出人が危険にさらされる。



 書状を仕舞う前に、末尾の一行をもう一度読んだ。


 そこにはただ、こう書かれていた。


**「このままでは冬を越せない」**



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