表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令息は、処刑ループのたびに帝国を救う  作者: とま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/32

第17話 差出人なき警告

 昨夜の手紙を、ヴァルターは燃やした。


 だが内容は、頭に焼き付いていた。


 一行。


 たった一行だ。


 「そのまま動けば、お前はまた処刑される」


* * *


 「また」。


 その一語が、ヴァルターの全身を冷やした。


 「また」処刑される、と書いた。


 「また」とは——過去に処刑されたことがある、ということを前提にした言葉だ。


 それを知っている者が、いる。


 ヴァルターはその事実を、一晩かけて噛みしめた。


 可能性は複数ある。


 一つ目。ループを知る者が実際にいる。

 つまり、ヴァルターだけが処刑と巻き戻りを経験しているのではなく、同じ状況を知っている者が他にもいる。


 二つ目。ループを知らないが、「処刑される未来」を何らかの手段で予見できる者がいる。

 予言者、あるいは占術者の類か。


 三つ目。これは罠だ。

 「また」という言葉を意図的に使い、ヴァルターを動揺させ、行動を変えさせることが目的。


 どれが正しいか。今の段階では、確認する方法がない。


* * *


 筆跡については、あの一晩でできる限り思い出そうとした。


 特徴のない写字体。

 だが、書き方がやや左に傾く癖があった。

 それが意図的なものか、自然なものかは分からない。


 封蝋は単純な丸型。

 インクは宮廷でも使われる標準品。


 これ以上の手がかりはない。


* * *


 助言か、脅しか。


 文章の内容だけを見れば、「警告」と読むのが自然だ。

 「処刑される」と教えることは、それを回避する機会を与えているとも取れる。


 だが同時に、こちらの行動を止めるための脅しとも取れる。

 「今の動きを続けると消される。だから止まれ」というメッセージとも読める。


 どちらの解釈も成立する。


 ヴァルターは結論を保留したまま、翌日の朝を迎えた。


* * *


 考え続けても、答えは出なかった。


 一つだけ確かなことがある。


 あの手紙が何であれ——「嫌われないようにする」という方向では、もはや間に合わない。


 ヴァルターはそれを確認した。


 今まで試みていたことを整理する。


 態度を柔らかくする——失敗。不自然すぎた。

 文書庫で証拠を探す——途中。だが記録は既に操作されていた。

 使用人通路の調査——有益だったが、監視されていることが分かった。

 保管室の確認——近づけなかった。


 どれも、半歩程度の前進に過ぎない。


 「また処刑される」という言葉が本当なら——このまま進めば、最終的に断罪は変わらない。


* * *


 ヴァルターは机に向かった。


 紙を広げ、罪状の一覧を改めて見る。


 五つの罪状。

 その核心——「帝位簒奪を企てた嫌疑、偽造書簡」。


 これを潰せば、他の罪状は崩れやすくなる。


 問題は偽造書簡が今どこにあるかだ。


 断罪の際に提出された書簡の原本は、どこかに保管されているはずだ。

 半年後の断罪まで、その書簡は誰かが管理している。


 それを今のうちに見つけ、「偽造である証拠」をつけることができれば——


 あの断罪は成立しない。


* * *


 だが、そのためには保管場所を特定する必要がある。


 宮廷の文書庫は既に確認した。

 そこには書簡の類が多数保管されているが、偽造書簡そのものを今の段階で特定して取り出すことは難しい。


 もし書簡が文書庫以外の場所に保管されているなら——


 可能性は一つある。


 断罪に使われる証拠は、宰相府が一時的に管理するケースがある。

 宮廷法の手続き上、断罪前の証拠は告発者か司法機関が保管する。


 告発者は——アンネリーゼか、あるいは宮廷の司法機関か。


 どちらにせよ、そこへ近づくルートを作る必要がある。


* * *


 ヴァルターは紙を裏返し、新しい方針を書いた。


 「保身で逃げることをやめる」


 「先に断罪の核を潰す」


 「偽造書簡の保管場所を特定し、それを「偽造」と証明できる証拠を押さえる」


 行動の方向が定まった。


 手紙の差出人が誰であれ、警告であれ脅しであれ——答えは同じだ。


 動き続けるしかない。


 ただし、より直接的に。


 ヴァルターは灯りを消した。


 夜の執務室に、燃え残った灰の匂いがかすかに漂っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ