リナ・グレイグースの想い夜
「……レイ」
もう半年近く、レイと会えてない。
アルフォンスと修行してるらしいけど、それなら私も混ぜてほしかった。一緒に修行したかった。
「私だって悪魔と契約してるのに……」
最近、愚痴が増えた気がする。でもそれも仕方がないと思う。
毎日毎日、サイモン達と作戦を実行するだけの生活。別にあの人達が嫌いな訳じゃない。むしろ、いい人の部類。
でも、あの人達は私がキスするだけで死んでしまう、ただの人間。レイとは違う。
それにレイヴンが大所帯になってきたのも悩みの種。勧誘が上手く進んでる成果だろうけど、どうしてこうも男ばかりなんだろう。
変に色目を使ってくる男が多いのもイライラする。例え天地がひっくり返ろうとも、あんな奴らと一夜を共にするのはごめんだ。
というよりキスした時点で死ぬんだし。
「はぁー……」
アスモデウスと契約する前の私の人生は充実していた。世界教会が自由恋愛を禁止している中で行う恋愛。
秘密を共有しているドキドキ感。愛しい人と過ごせる僅かな時間が生きがいだった。
16歳の誕生日にそれは訪れた……悪魔との契約。支払った対価は愛だった。
想い人は必ず不幸になる。たいした対価じゃないと思っていた。不幸になっても私が支えればいい、そう思った。
でも違った。誕生日に初めてのキスを彼とした時、彼は死んだ。その時に自分が授かった能力を理解した。
……私の唇に触れる者は死ぬ。
次の彼には細心の注意を払った。キスをせがまれても何とか拒み続けた。このままの関係が続けばいいと思っていた。
だがそれも終わってしまった。ある日、彼が悪魔崇拝者だと密告され、拷問中に死んだ。そんな事実は無かったのに。
あれから2年、寂しい夜を過ごした。それなのに体つきは大人の女性へと成長した。色んな男達に言い寄られたが相手にしなかった。
そんな時にレイに出会った。だからこそ惹かれるんだろうか?
私のキスを死なずに受け止めてくれた初めての人。私に再び生きがいを与えてくれた人。
年下だから子供っぽいし、頼りない。はっきり言ってタイプじゃない。
それでも愛しいと思ってしまう。
……何度も好きになるのは辞めようと思った。レイが不幸になるかもしれない。2番目の彼の様に死ぬかもしれない。
でも想いが途切れることはなかった。自分本位だと分かってる。
寂しく過ごす夜は、祈る夜に変わった。レイに不幸が訪れないよう祈り続けた。
効果があったか分からない。でも明日、レイに会える。
「……ちゃんと伝えなきゃ」
自分の唇を指でなぞる。
次、レイに会った時に想いを伝える、そう決めた。
気付けば夜も更けてきた。少しでも寝ておかないと。
ベッドに横たわり枕を抱きしめて目を閉じる。
「おやすみ……レイ」




