鍛錬
「戦う?」
「そう言うておる。ほれ、早うかかってこんかい」
年寄りをいたぶる趣味はないんだけどなあ。
「甘く見られたもんじゃのう……私が誰か忘れたか?」
空気が変わった。目の前の老人から発せられる威圧感。
「そうか。ルシファー」
「覚えておってくれたようで良かったわい。では……」
アルフォンスの指先から小さな黒い球が現れる。
――パチンッ。
アルフォンスが指を鳴らした途端、黒球が僕の方へ突っ込んできた。
咄嗟に右手に持ったグリードで防御姿勢を取る。炎の剣であの球を防げるか分からないが、こうするしかない。
「うわああっ!!」
黒球がグリードに触れた瞬間、僕は宙を舞っていた。防御できる代物じゃないことは確かだった。
「ほれ、次じゃ。逃げてばかりでは勝てぬ。剣とは振るう為にあるのじゃ」
簡単に言ってくれる。初めて剣を持った僕に対して、要求が高過ぎやしないか?
――パチンッ。
再び黒球が発射された。グリードを構えて、その時を待つ。
黒球が僕の目の前に到達した瞬間、大きく横薙ぎで剣を振るう。
バチッという音と共に黒球は逸れた。
「当たった!」
「この程度で喜ばれても困るのう。お前さんには与えられた時間で強くなってもらわんとのう」
「与えられた時間?」
「私と半年間、ここでお前さんを鍛え上げる。しばしの間、この老いぼれとお付き合い願おうかのう」
半年もアルフォンスと二人きりなのか。しかも廃村で……それが一番の鍛錬な気がする。
そんなことを考えていると次の黒球が飛んできたので、僕は慌てて剣を振った。




