マモンからの贈り物
鍛錬は廃村近くの森ですることになったが、内容があまりにも地味だった。
グリードを召喚したままじっと動くな、これがアルフォンスの指示だ。
言われた通り、両腕から炎の蛇を出してじっとする。
だが、指先ひとつ動かすなというのは中々難しい。
「これで何度目じゃ……動くなと言うておる」
「努力はしてる」
「なっとらんのう。ではやり方を教えてやろう。私の真似をするのじゃ」
言い終わるなりアルフォンスが雪の上に座り込んだのでそれに倣う。
「胡坐を組むのじゃ。手は自然に脱力。目は少しだけ開けて、数メートル先を見据える。これが東洋の瞑想の基本じゃのう」
確かに落ち着く気はする。でも、雪の上に座っているせいか、尻が冷たい。
だが、それもしばらくすると気にならなくなった。同時に感覚が鋭くなる気がした。
雪が木から落ちる音、遠くで聞こえる鳥のさえずり、自分の呼吸音がはっきりと感じられる。
「頃合いじゃのう。今からお前さんの枷を外す。じっとしておれ」
アルフォンスが僕の肩に手を置いた。そこから温かい何かが流れ込んでくるのを感じる。
「……ほれ、終いじゃ」
「今のは何だ?」
「お前さんには、世界教会が施した呪いがついておったのでのう。それを解呪したのじゃ」
「呪い? それがさっき言ってた枷か?」
「如何にも。簡単に言えば、お前さん本来の力を発揮出来ぬようになっておった」
「……なるほど」
そう言われても特に変化は感じない。
「分からぬといった顔じゃな。ではもう一度、蛇を出すのじゃ」
「分かった」
言われるがままに両腕を前に出して呟く。
「グリード」
途端に、脳内で火花が散った気がした。同時に両腕へ力が伝わっていくのを感じる。さながら電気回路のスイッチを入れたようだった。
「……なんだこれ」
出てきたのは蛇ではなく、2本の剣と小さなペンダントだった。
「これがマモンがお前さんに与えた力の真の姿じゃ。武器の説明はいるかの?」
「いや、いい」
剣の柄を握るだけで、それが何の為に存在しているのか理解出来た。
赤い剣がグリード、黒い剣がフラウロス。
炎の剣と、真実を見極める剣。
「ただ、これが分からない……」
ペンダントを拾い上げて観察してみる。
ペンダントトップには金属で作られた七芒星が付いていた。裏返すとI・Cと刻まれている。
「アイ・シー……どういう意味だ?」
「時が来れば分かるじゃろう。それは大切に首にかけておくのだ」
「分かった。これからどうする?」
「では、私と戦うのじゃ」




