ルシファー
「では、話を聞くとしよう。リチャードはもうよい、サイモンに紅茶でも入れてやってくれんかのう。少しは興奮も覚めるだろう」
リチャードが部屋から出ていくのを見届けて、アルフォンスが応接室のソファに腰かける。
「それで?」
アルフォンスが僕とリナの顔を交互に見るが、何を聞きたいのかさっぱり分からない。
「何を話せばいい?」
「分からぬか。では質問していくとしよう……」
アルフォンスは深くため息をついてから切り出した。
「……お前さん達の悪魔についてだ」
そう言いながら僕とリナを鋭く見つめる。リナの顔が微かにこわばるのをアルフォンスは見逃さなかった。
「そちらのレディーは心当たりがあるようだのう。お前さんはどうじゃ?」
アルフォンスの眼差しが僕の心に深く刺さるように感じた。同時に、この人に嘘はつけないと悟る。虎に睨まれたウサギのように動けなくなってしまう。
「そう怯えるでない」
アルフォンスが微笑んだ途端、僕の緊張の糸が切れた。ハァハァと息遣いは荒くなり、身体から汗が噴き出す。
「そういうあなたは何者なんだ? ただの老人とは思えない」
「質問に質問で返すとは……だが、相手に素性を尋ねる時は自分から素性を語るのがマナーだのう。ルシファーという名前を聞いた事はあるかのう?」
「ええ、知っているわ。悪魔崇拝者達が崇める最上位の悪魔の名前」
「それがどうしたっていうんだ?」
僕とリナの返事を聞いてアルフォンスは満足そうな顔をした。
「私がそのルシファーだ」




