接吻
パリ支部長の登場です!
「パリ支部長!?」
「そう……リナ・グレイグース」
そう名乗った女性は、僕にはとても支部長とは思えなかった。
スラっとした体格に優しい目つき、腰まで伸ばした髪は若草色。おとなしそうで争いとは無縁に見える。
僕の中にある支部長のイメージが、筋肉ムキムキのジョージだからだろうか。
「それで、パリ支部長が何の用だ! どうしてロンドン支部にいる?」
「何も知らされていないのね。まあいいわ、いずれにせよあなたの敵という事に変わりはないのだから」
リナがクスっと微笑む。
「何がおかしい!」
「やはり眷属なのね……その腕」
「どういう意味だ?」
「本当に何も知らないのね。教えてあげたいんだけれど、残念……時間がないの」
リナがそう呟くと、部下達が僕を取り囲み始める。
「ごめんなさい。あなたとは違う形で出会えたら素敵だったのに」
その言葉をきっかけに部下が雄叫びを上げ、ナイフを出して一斉に飛び掛かってきた。
「グリードッ!!!」
蛇の名前を呼び、両脚に力をこめる。呼応するように炎が大きくなり、僕の両腕が熱くなる。
ギリギリまで引き付けるんだ、確実に仕留めないと一瞬でやられてしまう。
そしてナイフの先が僕が刺さる寸前――
「今だっ!」
溜めた両脚を一気に開放してジャンプした。
僕の身体が最高到達点に差し掛かると同時に、真下にいるリナの部下達へ両手を広げる。途端に2匹の蛇は何倍にも膨れ上がり、目標へ向かって大きな口を開き、丸呑みにした。
食われた人間は炎に包まれ、その場から次々に消滅していき、ほんの一瞬で全てが片付いた。
僕が地面に着地する頃には部下達は消え、とても静かになっていた。
「何も知らないくせに、加護の力はある程度使えるのね」
確かにこれはマモンの加護の力だ。でもどうして知ってるんだ?
「私の受けた加護はアスモデウスのもの。色欲の悪魔よ。その力は束縛」
話しながらリナが近づいてくる。
「悪魔? お前も悪魔と契約したのか?」
「私の力は、相手の肉体の自由を奪う力。そして口づけすれば相手の魂を抜けるの」
その言葉を聞いて離れようとしたが、もう僕の身体は動かなくなっていた。
「発動条件は、自分の力について相手に説明すること。つまりあなたはもう……私のもの」
リナは一気に距離を詰め、僕の耳元でそう囁いた。リナの息が僕の首筋に当たるのを感じる。
「本当にあなたとは違う出会いをしたかった。心残りだけれど、せめて優しくするから許して」
リナがゆっくりと僕の身体に腕を回す。
「……痛みはないわ。少し時間がかかるけれど――」
言い終わる前にリナが僕の口を塞いだ。
生まれて初めてのキスをした。美しい女性と死の口づけを。
やっと出ました、初の女性キャラ! もっと序盤で出る予定だったのですが、気づけばこんなに遅くなっていました……
そういえば、この章が終わる頃にキャラ紹介を挟む予定です! キャラが増えてきたので一度整理しようと思っています!
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