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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
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石像の謎なのです


「マルガレーテ!」


ウイングたち『白夜の蒼炎』が中堅パーティー『エトランジェ』を連れて野営地に戻ると、アールタイルが真っ先に声を上げた。

それを聞き付けて、手の空いている冒険者たちが心配していたのか、我も我もと元気な姿を確認に来る。


トップパーティー『風界の鷲』リーダー、ライアスも全体を統括する責任者として声を掛けてくる。


「戻ったか!全員、無事だな!」


『風界の鷲』は『深緑の狼』を連れ戻すべく動いていたはずだが、どうやらライアスたちの方が早かったらしい。

マルガレーテが代表して言葉を交わす。


「ああ、こちらは全員無事だ。そちらは?」


「問題ない。『深緑の狼』が潜った洞穴は幻覚キノコの群生地だったらしくてな……入って十ミョーン(メートル)ほどのところで、全員でキノコを味見して寝ていたよ……」


ライアスが呆れた顔で言う。


「そうか、こちらは大発見だ。彼らが洞穴内の隠された遺跡を見つけた……」


マルガレーテが『エトランジェ』を示して言う。


「「「おお!」」」


話を聞いた冒険者たちが一斉に色めき立つ。


「……だが、試練と言うには極悪すぎだ……まだ遺跡が生きていて、危うく殺されるところだった……」


「な、なんじゃとっ!生きている遺跡じゃとっ!」


グラディス老が鬼気迫る勢いで前に出る。


「それで、どんなじゃった!」


「グラディス老、お気持ちは分かりますが、まずは少し休ませてやりましょう……」


ライアスがグラディス老を抑えて、一度解散となる。


遅れたパーティーの食事などを待ってから、『白夜の蒼炎』、『エトランジェ』の全員と各パーティーリーダー、グラディス老を交えて報告会を開く。

主に話すのは『エトランジェ』のリーダー、エイテンという魔法使いの男だ。

エイテンの口から、松明が揺らされて階段を隠した岩を見つけたこと、中に入ったら閉じ込められたこと、蔦の壁に襲われたことなどが語られる。

古びた剣を振っていたトムという男が、本当は槍使いで、槍が壊されたから人骨に埋もれていた剣を取って戦った話などが語られる。

つまり、古びた剣は文字通り古代の剣だったらしい。


「も、もそっと良く見せるのじゃ!むむむ……」


グラディス老は古代の剣を見て唸る。


「カムイ……いや、シンキョの様式じゃな……それも中期から後期といったところか……」


「色味からすると、アージス鋼と何かの合金みたいです……」


ウイングは紫色の魔法金属アージス鋼ではないかと疑う。

アージス鋼はかなり稀少な魔法金属で、劣化せず、かなりの硬さを誇る。これとの合金を作ると紫がかった長持ちで手入れいらずな剣を作りやすくなる。

鎧などにも昔は頻繁に使われたらしく、その点から判別できる程度の知識は持ち合わせていた。

ウイングの防具屋通いも無駄ではなかったようだった。


「うーむ……これはどういう意味じゃろうか……」


「というと?」


頭を捻るグラディス老にシキシロが問う。


「ここに眠る遺跡はカムイ文明のもののはずなんじゃが、この剣はおそらくはシンキョ文明時代のものじゃ……時代が合わん……」


「シンキョ文明時代の人々が遺跡を発見して、調査した証と考えるのはどうでしょう……?」


ムースが言う。


「確かに……そう考えれば辻褄は合う……カムイ文明の頃は何度か文明途絶の危機に晒されているはずじゃ……この辺りにもそれがあったとすれば、シンキョ文明の人々が試練の祭壇を遺跡として調査するというのは首肯けるな……」


「グラディス老。そもそも試練の祭壇とはどういうものなのでしょうか?」


マルガレーテが疑問を口にする。


「『試練の祭壇』それが実際のところ何を意味するものなのかは儂にも分からん……資料には試練の祭壇と呼ばれる場所があり『神意』に気付いた『おおいなる人』が集う地とあった……」


「神意……」「巨いなる人……」


この場に集う何人かがそれを口にするが、理解したというより、呑み込む為に復唱しただけというのが正解かもしれない。

元より歴史浪漫すげーと思う冒険者はいても、何がどう凄いのかを理解している者などほぼ皆無なのだ。

ただ古代の超文明の存在は誰もが認めているところなので、お宝の存在を疑う者はいなかった。


「ちなみにグラディス老。

グラディス老は今回見つけた遺跡が、その『試練の祭壇』だと考えておられるのだろうか?」


マルガレーテは今回見つけた遺跡はどうにも解せないと考えているようだった。


「詳しいことは見てみないとなんとも言えん……。

じゃが、洞穴に隠して作られていたというのは、カムイ文明の様式として有り得ることじゃ。

その蔦の壁というのが試練だとするならば、そこがそうだとも言える。

この石像が見つかった近くにあったことじゃしな……」


グラディス老はそう言って自分の背後にある石像を示す。

女性が左腕に布を掛け、その裏側で右手に玉を持つ石像だ。

今は一緒に見つけた波模様のついた台座に立て掛けるように置かれている。


「この布みたいなのが、岩で隠されているって意味なんですかね?」


ウイングは壁画にあった、動物から光る玉を取り出し移植する風景を思い出しながら言う。


「そういうことじゃないか?

この布みたいなものは石で出来てる。それが岩に隠されたって意味なら、ぴったりじゃないか」


アールタイルが言う。


「そうかな……?じゃあ、なんで布にしたんだろう?

岩を表すなら、それこそ岩を持たせれば良かったんじゃないの?」


アキラは不思議そうに言う。


「確かに……もしくは、この布の材質を岩と同じ材質にするとかな……」


それまでジッと話を聞いていたライアスもアキラに同意のようだ。


「うーむ……これが女の石像というのも疑問ではあるんじゃ……『試練の祭壇』と言うならば、もっと雄々しい姿の男性像の方がしっくり来るんじゃが……」


グラディス老も頭を捻る。

そこに茶化すように口を挟むのはロックだ。


「顔は分からんけど、古代人ってのは太った女が好みだったのかね?」


「どういう意味じゃ?」


「いや、女の石像だって言うなら美人のはずだろ?

だけど、この女は腹が膨らんでるから、古代人はそういうのが好みだったのかなって……」


「いや、男性は太っている方がモテた時代というのもあったらしいが、女性も太っている者が美人とは聞いたことがない……」


「母親……?」


ムースがぽつりと言った。


「妊婦ってことか?」


ロックが聞く。


「あ!」


ウイングが声を上げると全員の視線が集まる。

だが、ウイングはそれからすぐに言い直す。


「あ……いや、何でもないです……」


全員が盛大にずっこける。


「何だよ……!」


ウイングが考えたことは単純だ。

母親と聞いて、連想したのは母なる海という言葉だ。

前世では通用したかも知れないが、この世界でもそうだとは限らない。

だから、言い淀んだのだ。


だが、良く見れば台座の波型模様、垂れ下がる布も波打っている。

そして、その裏側に隠された玉。

海を水と考えれば答えは明白である。


「あの……滝の裏側ってことは無いですかね……?」


ウイングが恐る恐る尋ねる。


「何故、そうなる?」


聞いたのは布が石製だから、岩を表していると主張したアールタイルだ。


「えっと……その台座に波型模様があるです。

それに、布も波打ってるです。

それで……その……」


「それだけなのか?」


「まあ、それだけです……」


「話にならんな……はんっ!」


まるで鬼の首を取ったかのような顔で、アールタイルが鼻で笑う。

だが、それをアキラが笑う。


「ぶほっ……いや、アールタイルさんは根拠がひとつしかないじゃないか!

ウイングは根拠をふたつ示した。

なのに、そのドヤ顔って……クククっ……」


「なっ!ち、違うだろうが!

根拠の数ではなくて、信ぴょう性の話だ!」


顔を真っ赤にしてアールタイルが反論する。

だが、それがまたアキラの笑いを誘ったらしい。


「だって、それはボクもライアスさんも否定したじゃない?

布が石製だからって、石像なんだから当たり前で、そんなところは根拠として薄いって!

それならまだウイングの話の方が首肯けると思うけどなあ?」


「まあ、そういうことなら、明日は私達で滝の裏側を調べてみればいい。

どちらにせよ、グラディス老は蔦の壁があった遺跡を調べるだろうから、その間だけ時間を貰えればはっきりするだろう?」


マルガレーテがまとめる。


「そうじゃな……可能性は模索するべきじゃろう……。

まだ、その遺跡を見ておらんから、当たりともはずれとも分からんことじゃからな……」


グラディス老も頷いて、翌日は『白夜の蒼炎』だけが別行動という話になった。


そうして、翌日の動きを細々と決めて、本日は解散となるのだった。


それぞれの野営地に戻ってから、アキラはウイングに聞く。


「ねえ、根拠って波型模様と布が波打ってるだけじゃないんでしょ?」


ウイングはそう聞くアキラを見て、こっそりと打ち明ける。


「えと、母なる海って言葉を思い出したのです 」


「あー、なるほど!でも、母なる大地とも言うから、あれで正解だったかもね!」


「はっ!なるほど……」


ウイングは目を丸くするのだった。

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