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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
82/151

後始末なのです

翌、早朝。

町は大変な騒ぎとなった。

昨晩、『魔導兵器』の暴れる姿を見た高級住宅地に住む者たちは子爵の館から巨人が現れたと噂し、中央の大通りから少し入った辺りでは『涼風亭』近辺で見つかった焼けた重症者の噂が飛び交った。またはカボチャ頭の黒マントという化け物の噂もまことしやかに囁かれた。


『涼風亭』では、様々な痕跡から襲撃があったとされ、執事風使用人ウォーレンから謝罪があった。

午後には様々なことが分かる。

伯爵とその息子、アビーバの確執。『死出の蝶』の暗躍。『魔導兵器』の暴走。

全ては伯爵から端を発した問題ではあるが、その責任問題はグアーメ国王の採択を待つこととなった。

何故、それだけ迅速に全てが分かったかと言えば、減刑を餌にされたアビーバがペラペラと全てを話したからだ。


冒険者の間では『白夜の蒼炎』が伯爵の機嫌を損ねたために、伯爵の雇った暗殺者に狙われたという噂も立ったが、現トップパーティー『砂塵の爪』アールタイルの、『白夜の蒼炎』が伯爵の気に障ることをしたのなら、それは伯爵側に問題があったに決まっている!というひと言でケリがついてしまった。


そして、今回の件で『白夜の蒼炎』が『涼風亭』に居辛くなったかと言えば、そんなことは全くなかった。

ウォーレンは防犯設備が充分でなかったことをひたすら反省したし、他の宿の客も狙われるに足る理由を持つ者ばかりで、『白夜の蒼炎』に同情することはあっても責めるようなことは決してなかった。


そうして、数マワリ〈日〉、アリアの部屋のカーペットは張替えられ、一命を取り留めたアンキの見舞いに行き、子爵から事件のあらましの説明が町に流布され、『涼風亭』の警備が強化され、『死出の蝶』の一部が処刑され、伯爵とアビーバは王都グアーメへと護送された。

ようやく、町に平穏が戻ったのだった。


ただひとつ、ジャック・オー・ランタンの謎だけが残った。


子爵はこれの説明を『樹海の守護精霊』と位置付けた。

民心を安堵させるための苦肉の策といったところだろう。

だが、おかげで都市伝説が生まれる。


ジャック・オー・ランタンは悪人の魂を集めて回る樹海の精霊。

樹海の奥のさらに奥、悪い魂はジャック・オー・ランタンの居城で縛られる。

膿んで舐って腐らせて、魂転じて魔物になりけり。

ジャック・オー・ランタンは悪人の魂を集めて回る樹海の精霊。

町に繰り出し目を光らせる、悪い魂はジャック・オー・ランタンの掌で抜き取られる。

驕って騙して殴りつけ、魂転じて悪人になりけり。

ジャック・オー・ランタンは悪人の魂を集めて回る樹海の精霊。


というものである。

これは吟遊詩人が歌い、この町の童歌にもなってしまう。

悪人が魔物に転じて、樹海にいるとなれば、それを狩る冒険者はヒーローで、悪いことをすればジャック・オー・ランタンが来るぞ、と子供を脅すような内容になっている。

これが子爵の画策したプロパガンダならば、子爵は随分な策士だと言えるだろうが、さすがにそういうことではなかった。


だが、これによって町の冒険者率は上がり、ますますシューティの町は潤うことになったので、子爵としては『樹海の守護精霊』という苦肉の策がまぐれ当たりで、町を発展させることになったので万々歳といったところだった。



そうして、さらにしばらく。

『白夜の蒼炎』は久しぶりに冒険者ギルドを訪れていた。

事件からこっち、ウォーレンの願いで『涼風亭』の警護任務を受けていたのだ。

もちろん、その間の宿代、食事などはウォーレン持ちで、さらに一人あたり百五十ジンという破格の報酬だった。

ようやく後釜の警護任務を受ける冒険者が決まり、自由になったところで、感を取り戻すべく樹海に潜ろうという話になったのだ。


全員で依頼をチェックするべく汚い入り口に入る。


「あれ?アンキがいるです……」


依頼の貼り紙を眺める冒険者の中にハスタ王国から来た『魔導兵器』の整備士、アンキ・イヌフジがいる。

ウイングが近付いて声を掛ける。


「アンキ、もう怪我はいいです?」


アンキはウイングを見ると破顔して、応じる。


「おお、ウイング!お前も依頼を受けに来たのか?」


「そうですけど……アンキ、冒険者になるです?」


「冒険者じゃないんだけどな……ほら、怪我治すのに子爵様の好意で神官様に光魔法を掛けて頂いたろう?

それに、伯爵が失脚した今の状況では頼るものがない。

そこで、子爵のところで厄介になることになったからな。

何もしないという訳にもいかないから、樹海の探索方として協力することにしたんだ」


「へえ、じゃあもし樹海の中で迷子になったとしても、今なら『魔導兵器』が探しに来てくれるんですね!」


横からアリアが頼もしいというように告げる。


「ははっ、まあ迷わないのが一番だけどな……」


アンキが苦笑して言う。


「まあ、アリアには前例があるから仕方ないです。

それじゃあ、依頼を眺めていたのは今の時期の傾向と対策って感じです?」


「ああ、そういうことだ。

向かう場所や距離によって『スイテン・隣』にも調整が必要だからな」


「そういうものなのですか……」


ウイングが関心したように頷いていると、ギルド職員がマルガレーテに声を掛けてくる。


「あ、マルガレーテさん、ちょっとお願いがあるんですけど……」


「ん?何かあったのか?」


「新しく冒険者登録する方の査定をお願いしたいんです!」


「わ、私がか?」


中堅以上の冒険者で実力ありと判断された者はギルドからの依頼という形で試験官の仕事を依頼されることがある。

それには実績と名声、二つが伴っていなければならない。

要するに新人冒険者が憧れるような者が抜擢される名誉ある仕事である。但し、賃金は安い。


「まあ、さすがマルガレーテ……

名誉ある依頼ですね……!」


ムースが手を叩いて喜ぶ。


「マルガレーテ姉さんに依頼を持ち掛けるのが遅いくらいですよ……」


モーリーも毒を吐きながらも嬉しいのか、ソワソワしている。


「本来ならばとっくに査定役をお願いしてもおかしくはないだけの実力と名声は稼いでおられましたけど、貴方方はパーティーを新設されましたから、それで新パーティーの地盤が固まるまではと、声を掛けるのを遠慮させて頂いてたんですよ、ギルドとしては……」


ギルド職員はさらりとイヤミ返しをしてくる。

モーリーの言葉程度にイヤミを返してしまうあたり、このギルド職員は疲れているのだろうか、とウイングとミルキルが考えていると、マルガレーテは律儀に頭を下げた。


「それは、細かいご配慮、痛み入ります」


「あ、ああ、いえ、それは当然のことですから、お気になさらず。

それで、査定役の件、受けて頂けますでしょうか?もちろん、パーティーの都合もあるでしょうから断って頂いても問題はありませんが……」


ギルド職員はマルガレーテに毒気を抜かれたのか、途端に丁寧になる。


「なんか疲れてるです?」


ウイングの言葉にギルド職員は肩を落とすと説明とも愚痴ともつかない言葉をこぼし出す。


「先頃あった伯爵の事件から流れ始めたジャック・オー・ランタンの歌って知ってます?

あれのお陰で冒険者になろうって人が急増しましてね……ギルドとしては有難いんですが、そもそも冒険者になれるレベルじゃない人まで来るもんですから、対応に大わらわなんですよ……」


「あ、そ、そうですか……」


最近はどこへ行っても吟遊詩人が歌い、冒険者が歌い、果ては子供までが歌う一大ムーブメントになっている。

ウイングはやぶ蛇な気分でそれだけ答えた。

まさか、ジャック・オー・ランタンは自分だとは言えず、心の中でギルド職員に謝った。


「ふむ……樹海の守護精霊ですか……『魔導兵器』に傷ひとつ付けることなくアビーバを捕縛できたのは樹海の守護精霊のおかげだと聞いてますからね、もし樹海の中で会えたならお礼がいいたいですね!」


横で話を聞いていたアンキが言う。


「ははは……じゃあ、もし会えたら、私が恨み言を呟いてたって伝えて下さい……」


ギルド職員は疲れた顔でそう告げる。

ウイングにとっては追い討ちのひと言。

力を見せびらかす訳にいかないウイングが自由に力を使うための扮装だが、思わぬところで迷惑を掛けていたらしい。

居心地が悪くモジモジとしてしまう。


「ふふ、分かりました。それじゃあ、用事があるので俺はこれで失礼しますね……」


アンキは同じ探索方の兵士が呼びに来たらしく、入り口に手を挙げてから全員に礼をして去っていった。


「皆さえ良ければ、今日はギルドの依頼を受けるべきかと思うが、どうだろう?」


マルガレーテの言葉に、全員が賛同の意を示すのだった。



「あ〜、ゴホン……皆さんの査定役を頼まれた『白夜の蒼炎』のマルガレーテだ。

よ、よろしく頼む……」


ギルドの建物の外、広い空間を使った訓練場で五人の男女を前にマルガレーテが挨拶する。

少し離れたところでは『白夜の蒼炎』メンバーがそれを見守っている。

試験官一人で五人を見るというのは、やはり希望者が多いということなのだろう。

五人の男女、西門の外で木こりをやっていたガタイのいい赤毛の男、それまで見習いとしてギルドに詰めていたが成人を機に本格的に登録することにした少年、王都を拠点にしていたがこちらの方が稼げるだろうとこちらに移って来た冒険者、魔法ギルドで職員をしていたがジャック・オー・ランタンの歌に触発された女性、素性は分からないが金髪・碧眼の十七、八に見える女性の五名だ。


少年が感動したような目でマルガレーテを見つめ、王都の冒険者は逆に試すような目をしている。

木こりは恥ずかしそうに俯き、元魔法ギルド職員は自信ありげにしている。

分からないのは金髪・碧眼の女性でニコニコと笑顔だが、きょろきょろと辺りを見回して、話半分で聞いているという感じだ。


「なかなかに癖がありそうな連中じゃねーの……」


面白がってミルキルが批評する。


「ミルキルは一番の成績は誰だと思います……?」


ムースがぽわぽわした口調で聞く。


「そりゃやっぱり、王都の冒険者じゃねーの?」


「私は木こりを推しますね!冒険者よりも筋肉のつき方が実戦向きですから……」


モーリーが言う。


「ほうほう、じゃあ賭けるか?」


ミルキルが挑発するように言う。


「いいですよ。勝った人に負けた人が『涼風亭』の本日のデザートを奢るってことでいいですか?」


「おっしゃ、それでいいぜ!ムースは誰に賭ける?」


「私は……元魔法ギルド職員の方にしましょうか。

職員なら知識もあるでしょうし……。

アリアはどうします?」


ムースに振られてアリアはビクリとする。


「え、わ、私ですか?」


「なんなら、私と同じ木こりに賭ける?」


モーリーがアリアに助け舟を出す。

だが、アリアはしばらく男女五人を眺めると言う。


「いえ、それじゃあ私はあの金髪の子にします!」


「え、あまり筋肉があるようには見えないわよ?」


「落ち着きもないし、どう見ても一般人って感じじゃんか。

アリア、悪いこと言わないから、アタシと同じ冒険者にしとけって!」


モーリーとミルキルが金髪・碧眼の女性を否定する。


「あ〜、雰囲気というか……もしかしたら凄い魔法の使い手だったりするかもしれないですし……」


実際のところ、アリアが金髪・碧眼の女性を選んだのはその挙動がウイングに似ているからというものだったが、なるべくなら全員を応援したいのでわざと誰にも選ばれていない者を選んだのだ。


「まあ、アリアがいいならいいんじゃないですか……。

じゃあ、ウイングはあの見習いの子ですね……!」


モーリーが当たり前のように言う。


「え、僕に選択権はないですか?」


「え?」


「え?」


「え?」


ミルキル、モーリー、アリアが口々に反問する。

ウイングは無言のまま、圧力に屈した。


「……じゃあ、そうするです」


「うそうそ、ウイングも選んでいいよ!」


「いや、きっと荷運びとかで樹海にも行ってるはずですから、思わぬダークホースの可能性もあるです!

見習いの少年を応援するです!」


ミルキルのフォローもあったが、ウイングは少年に期待を掛けることにしたようだ。


そうしている内にマルガレーテの説明が終わったのだろう。

実技試験に移る。

最初はウイングの時と同じく十ミョーン〈メートル〉毎に置かれた的に遠距離攻撃を当てるというものだ。

今回は全員が、前衛、後衛の両方をこなす万能向けの試験を受けるらしい。


木こりは斧を投げる。結果は十ミョーン〈メートル〉で、二十ミョーン〈メートル〉の的には届いたが当たらなかった。


王都の冒険者は弓を使い、五十ミョーンまで当てた。


見習いの少年は初級の火魔法が十ミョーン〈メートル〉だったが、その後、弓を使って三十ミョーン〈メートル〉まで当てた。


元魔法ギルド職員は中級地魔法で的の両側から隆起した壁が間にあるものを押しつぶすという技を見せた。

それから、同じく魔法を使った見習い少年を見下したような目をして、同じ魔法で二十ミョーン〈メートル〉、三十ミョーン〈メートル〉とクリアしたが、四十ミョーン〈メートル〉の的を狙った時に、途中で倒れ込んだ。


マルガレーテはそれを見て、冷淡に告げる。


「失格!的を狙うだけだと伝えたのに、何故大きな魔法を使う?自分の魔法を自慢したいだけの者に冒険者をやらせる訳にはいかない。

それでもまだ冒険者になりたいのなら、次は自己顕示欲を抑える修練を積んでから来てくれ……」


それからマルガレーテは仲間に向けて大きな声で伝える。


「すまない、彼女をどこかで休ませてくれ!」


「はあ……これは見込み違いでしたね……。

性格までは読めませんでした……」


ムースが元魔法ギルド職員を介抱しに向かう。

お姫様抱っこの形で冒険者ギルドの中に連れていく。

長椅子にでも寝かせて休ませるつもりなのだろう。


それから、最後に金髪・碧眼の女性の番になる。

彼女は石を拾うと、遠投で五十ミョーン〈メートル〉までの的をクリアした。


「凄いですね……石を投げて五十ミョーン〈メートル〉ですか……」


モーリーが関心したように言う。

次に試すのは遠距離攻撃の威力だ。


「これは見習いくんの勝ちの目が出てきたです!」


元魔法ギルド職員が失格になった今、唯一魔法攻撃をする見習い少年に期待が掛かる。


「いいえ、投げ斧の威力も侮れないわよ!」


筋肉至上主義という訳ではないが、モーリーは元斧使いとして、やはり木こり推しらしい。


マルガレーテは土山、岩塊、鉄塊と三つを示して、どうやら各人に選ばせるつもりのようだ。


木こりは岩塊を選び、十ミョーン〈メートル〉の距離から斧を投げる。

斧は岩塊に突き立った。


「うわあ、うわあ……斧って岩に刺さるんですね……」


アリアが驚きに目を見開いている。


「むむっ……よほど研ぎがしっかりしていないと、あれは難しいと思うです……」


ウイングが職人目線で斧を見つめる。

そんなウイングの頭を小突いて、ミルキルが笑う。


「ウイング、職人目線はやめとけ!冒険者なんだからっ……」


「分かってるです、冗談なのです……」


かわいいじゃれあいだ。


次は王都の冒険者で、選んだのは土山だ。

だが、王都の冒険者は土山に弓の三連射でほぼ同じ場所に矢を射掛けた。


「威力はあの連射で補うというアピールのようですね……」


モーリーが解説する。


「まあ、止まったままの三連射なら、ウイングでもあれくらいできるしな……」


ミルキルの言葉にウイングも頷く。


次は見習い少年だった。彼は岩塊を選ぶようだ。

十ミョーン〈メートル〉の距離なら魔法が使える。

見習い少年が放った五本の火の十字剣の一本が岩塊に刺さる。

威力的にも申し分ないものだ。


「今のところ、飛距離が十ミョーン〈メートル〉で十ポイントとして、威力は土山が十ポイント、岩塊が二十ポイント、鉄塊が四十ポイントってとこか……木こりが三十ポイント、王都の冒険者が六十ポイント、見習い少年の方が刺さりが深いから五ポイントおまけで五十五ポイントってとこかね……」


「ええ、妥当なところだと思います……問題は前衛試験ですから……」


ミルキルの言葉にモーリーが賛同する。

遠距離攻撃は威力よりも距離が重視されるらしい。

飛距離があれば、それだけ安全な場所から一方的に攻撃できるのだから、遠距離攻撃があまりない魔物相手には重要なことだった。


そんな話をしているところに、金髪・碧眼女性の番になる。

彼女は鉄塊を指差した。


「おいおい、投石じゃ無理だろ……」


ミルキルが目を丸くする。


だが、見れば金髪・碧眼女性は石を使う訳ではないらしい。

彼女が手を上げると、赤い光が生まれる。


「精霊魔法……」


アリアが呟く。

ウイングも慌てて『精霊視覚スピリットヴィジョン』を使って見てみる。

地上で『精霊視覚スピリットヴィジョン』を使うと眩しいので、普段は使っていないのだ。

彼女の周りには確かに火の精霊が居た。


赤い光は一本の槍になる。


精霊武器スピリットアーム!?」


ウイングは驚いた。

彼女はその槍を掴むと、鉄塊に向けて投げる。

鉄塊を貫く火の槍は、そのまま直進して百ミョーン〈メートル〉も飛ぶと、元の赤い光に戻って彼女の近くまで戻ってから消えた。

いや、実際にはウイングの精霊やアリアの精霊のように不可視化したと言うべきかもしれない。

ウイングの目には彼女の周りを漂うように飛ぶ赤い光がまだ見えていた。


全員が呆然と見ていた。


「はあ……ウイングやアリア以外にもいるんだな……精霊に好かれた奴ってのが……」


ミルキルが言う。


「あ、でも、私とかウイングの精霊は特殊ですから……ちゃんとした精霊魔法なんて初めて見ました……」


アリアが凄いものを見たという顔をしている。


しばらく固まっていたマルガレーテも我を取り戻したのか、何やらひとしきり褒めた後、事務的な説明をしてから、一度解散となった。


「お疲れ様です、マルガレーテ姉さん!」


自分たちのところに戻ってくるマルガレーテにモーリーが声を掛ける。


「ああ、一キザミ(時間)の休憩の後、前衛の試験だ……」


マルガレーテは少々放心状態のようだ。


「最後、凄かったな!」


「さすがに驚いたよ……まさか、彼女が精霊魔法を使えるとは……」


ミルキルの言葉にマルガレーテも苦笑して応じる。


「なんで最初から精霊魔法を出さなかったのか聞いたら、魔法力を無駄にしたくなかったからと言っていた。それも、魔法ギルドのなんと言ったかな……あの子を失格にした理由を聞いて、咄嗟に思いついたらしい……機転もきくし、いい冒険者になるかもな……」


「へえ……こうなるとアリアの一人勝ちかもな……」


「なんだ、やけに熱心に見ていると思ったら、賭けていたのか?」


「まあ、今晩のデザートをちょっとね!」


「私には誰が奢ってくれるんだ?」


マルガレーテが参加できなかった不満をぶつけるように言うと、ミルキルとモーリーが同時にウイングを指差した。


「え?」


意味が分からずウイングが聞き返す。


「ふっふっふっ……なんとなくだ!」

「私も!」


何故かウイングは今日のイケニエらしい。


「いや、勝った人がデザートをひとつマルガレーテさんに譲ればいいのでは……?」


アリアが言うが、ミルキルは納得しない。


「いや、今日のウイングからはいぢってくれオーラが出てる。

だから、ウイングだな!」


どうやら、ジャック・オー・ランタンの話が出てからウイングが気落ちしていたのを、ミルキルは感じ取っていたらしい。

ウイングはそれを感じさせてしまったことを申し訳なくもありがたく思った。


「分かったです。それならマルガレーテにはお疲れ様の意味を込めて、僕がデザートを作るです!」


なるべく明るくなるように、ウイングが笑みを装って言う。


「おお!それはやる気が出るな!」


マルガレーテは単純に喜んだ。


「ええ!?アタシらには?」


「ないです!」


ウイングは意地悪な顔で答える。


「ぬあーっ!なんか失敗した!」


ミルキルは頭を抱えてしまった。

もちろん、ウイングは全員分作るつもりだ。マルガレーテの分は少し豪華にする必要があるが。


そうして、マルガレーテはギルドの建物に向かう。

この後の前衛試験用の木剣を借りに行くのだった。

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