ソーバルディーの贈り物なのです
「サヴァル兄様は?サヴァルマーナ兄様の『戦槌戦士団』は無事ですか!?」
ウイングの兄、サヴァルマーナは現在、『デルズランド共和国軍』に向けて進軍しているはずなのだ。
本来、テセラスタの『皇龍騎士団』が一万の兵で『デルズランド共和国軍』三万を抑えていたというのが驚異的な事実であって、死魂族が本陣を構える一層中央より東方にあたる『黄泉の塔』をウイングの『蒼翼騎士団』とソーバルディーの『元・黄泉の塔守護隊』一万によって抑えられると確信したサヴァルマーナ率いる『戦槌戦士団』は、『皇龍騎士団』と合流すべく動いていた。
「は、本陣への伝令によると、単軍で時間を稼ぐ、と……」
「なに!?サヴァルマーナ殿はいかに精鋭と言えども、ゴブリン三千だぞ!
デルズランド軍は魔装兵団で三万は降らないと聞く。
無茶苦茶だ!」
伝令の言葉を聞いたソーバルディーは怒鳴るように声を上げる。
「ぼくが行くです……」
ウイングが決意したように呟く。
「無理だ……やめとけ……」
ソーバルディーの返しに、ウイングが射殺さんばかりの眼光で睨みつける。
だが、ソーバルディーの言葉はそこで終わりではなかった。
「……と言ったところで、行かない訳がねえよな……」
ソーバルディーがウイングの眼光をものともせず、ニヤリと笑う。
「いいぜ、行ってくれ。こちらは、俺とクラスコでなんとかする。」
「ソーバルディーさん……」
ウイングは途端に申し訳なさそうになってしまう。
「だが、ここまで手伝って貰っておいて、何も報いることができねーんだ。
何しろ、塔を取り返した訳でもないから、余剰の兵も物質もない……」
今度はソーバルディーが申し訳なさそうにする。だが、はたと気付いたのか懐から『人化の指輪』を取り出す。
先程、ウイングたちが作戦終了と同時に返したばかりのものだ。
四つある内の二つをウイングに突き出す。
「持っていってくれ。さすがに全部とはいかないが、これでも一層じゃ、秘宝中の秘宝だ。この程度で働きに報いたとは言えんが、ウイングなら上手く使えるだろ?」
「いいんですか?」
「いい訳ないでしょう。それは一層中を探し回ってようやく見つけた四つの内の二つですよ!今後、地上の情報を集めるためにも絶対に必要になるものですよ!」
首無し騎士の副官が抱えた首を青ざめさせて言う。
ウイングは伸ばしかけた腕を引っ込めようとすると、首無し騎士は、やれやれといった風に肩を竦めて笑う。
「……まあ、この戦に勝てなきゃ、地上の情報どころじゃないですからね……自分は見なかったことにしますよ……」
そう言って自分の首を後ろ向きに抱えた。
ソーバルディーはウイングの手を取ると、その掌に指輪を捩じ込む。
ウイングはソーバルディーを申し訳なさそうに見る。
「いやー、すまんな。大事な指輪を落としちまった」
「ソーバルディー様!あれは大事な物だと、何度も申し上げたじゃないですか!まったくもう……どこに落としたんですか!早く探しに行きますよ!」
棒読みな台詞回しでソーバルディーたちが天幕を出て行く。
「ウイング様、急ぎましょう」
ワルトメルガが優しくウイングの肩に手を置く。
ウイングはひとつ頷くと、ワルトメルガとトノルジンバへと向き直る。
「蒼翼騎士団は、これより急ぎ西へと向かうです!」
「「はっ!」」
二人の声が重なった。




