↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
36/151

戦槌戦士団なのです。

ウイングたち『蒼翼騎士団』は全速力で西へと向かっていた。


その頃、サヴァルマーナの『戦槌戦士団』は『デルズランド共和国軍』の目を逃れるように洞窟に身を潜めていた。

ゴブリンたちに負傷していない者はいないほどの酷い有様だった。

動けるのは千名ほどだろうか。

先の『ハスタ王国軍』魔導兵器との戦いで装備の殆どを失い、無理を言って一層中央軍、通称『本陣』で補給を受けたとはいえ、それは充分とはいえず、ランクの低い鎧、粗末な武器、糧食も切り詰めなければならないような状態で、満足に動ける訳もなく、追い詰められていた。


それでも、サヴァルマーナ率いる『戦槌戦士団』は良く戦っていると言って良い。

陣を敷けるような余力もなく、まるで『皇龍騎士団』と戦ったのが嘘だったかのように、疲弊知らずで、戦意に溢れた魔装兵団に、兎か狐でも狩るかのように追われるのだ。

まだ、士気が衰えず、戦う意志を見せるゴブリンたちは本当に勇者だった。


サヴァルマーナは考えていた。

確かに『デルズランド共和国』の魔装兵団は脅威だ。

だが、ほぼ無傷な敵兵を見た時に、これは何かしらカラクリがあると疑ったいたのだ。

その考えをまとめていると、斥候に出したゴブリンが戻ってきた。


「どうだった?」


「サヴァルマーナ様の思っだどおりでしだ……『皇龍騎士団』の陣跡には襲われだ形跡はありましだが、戦闘跡には見えませんでしだ……」


「……やはりな」


これではっきりした。いや、はっきりしてしまったと言うべきだろう。

テセラスタは、さらに言えば『皇龍騎士団』は敵と内通していると見るべきだろう……と、サヴァルマーナは深い溜息を吐く。

洞窟の壁に身体を預けて、片手で顔を覆って笑う。


「ククク……愚かな……なんと愚かなのだ、私は……だが、何故だ?何故、今なのだ?狙いは?」


思わず口にして、その目的を考える。

しかし、その目的を見抜くには余りにも情報が不足している。


「なあ、お前ならどう考える?」


サヴァルマーナが聞いたのは、元七層魔性族のジーガンの護衛をしていたインゼムという男だ。

サヴァルマーナはジーガンが『地上恩恵派』の重要な地位にいるのではないかと疑っている。

そのジーガンが虎の子として連れてきた魔王候補者こそ、テセラスタ。

ならば、当然テセラスタにも『地上恩恵派』の疑いがある。

だが、テセラスタが魔王になるには、この一層で充分な手柄を立てる必要がある。

だからこそ、それなりに戦うだろうと見ていたのだ。

しかし、テセラスタは戦わず、表舞台から姿を消した。

これでは、ジーガンの狙いであるテセラスタを次の魔王とする線は消えてしまう。

そして、ここにいるインゼムだ。

ジーガンに忠誠を誓っているであろうインゼムから、情報を引き出せないかと引き取ったが、今までは特に『地上恩恵派』との繋がりは見えてこない。

ゆっくりと懐柔して情報を取るつもりだったが、戦に駆り出されたので、自分の護衛という名目で監視がてら連れてきたのだ。


「な、何をでしょうか?」


「『地上恩恵派』の傀儡かいらい、テセラスタが武功も上げずに全滅を偽って逃げ出した理由さ……」


「わ、わたしには分かりません……」


「そうか?……まあ、いい。何か思いついたら教えてくれれば、悪いようにはしない」


サヴァルマーナは何度かインゼムに自由を与えて、何かボロを出さないかと秘かに尾行してみたこともあるが、怪しい動きを見つけることはなかった。

ジーガンにインゼムを自分に預けるよう言いに行った時も、「よくぞ、生きて戻ったな!お前のように優秀な者ならば、サヴァルマーナ様のお力にもなれるだろう!よくよくしっかりお仕えするのだぞ……心配するな。後のことは私の方でやっておくから……」と、非常に友好的に接するだけで、渋る様子もなかった。

だが、だからこそサヴァルマーナはインゼムを疑っている。

ただの勘でしかない、しかし、その勘が捨て切れないのだ。


そして、サヴァルマーナが更なる思索にふけろうとした時に、別のゴブリンが慌てたように洞窟へと駆け込んでくる。


「デルズランド軍に動きがありましだ!

どうやら、我らを無視しで北東方面に進軍しようとしでいるようです!」


「我らを無視して動けると思わせる訳にはいかない!

出るぞ!」


立ち上がったサヴァルマーナに続いて、動ける者たちが一斉に立ち上がる。

それどころか、床に呻いていたゴブリンまでが、這ってでも行こうと無理矢理にでも身体を起こしてくる。

そんな者たちを眺めて、サヴァルマーナはゆっくり大きな声で言う。


「さすが、精鋭なる我が戦槌戦士団!

しかし、立ち上がり駆けることが出来ぬ者は置いてゆく!

一撃離脱が出来ぬ者では無駄に命を落とすことになる!

お前たちの想いは私が持っていく!

次の機会までに動けるように、今は休め!」


「おでは!おでは、行けます!」


腹を裂かれ、頭に傷を負ったゴブリンが立ち上がる。


「カタコブ、私は駆けられる者と言ったのだ……」


見れば確かに右肩の辺りに瘤ができている。それがこのゴブリンの名前なのだろう。


「若様だけに任せる訳にはいきません、おでもだだかえる!」


片腕を失くし、足に矢傷を負ったゴブリンも、片足だけでびっこを引いて立ち上がる。


「ドングリメ、お前もダメだ!」


サヴァルマーナはここにいるゴブリン全員の名前を覚えている。八層で長く暮らしたとはいえ、『戦槌戦士団』との接点は決して多いとは言えない。

だが、サヴァルマーナは共に戦う仲間だからと、全員の名前を聞いた。そして、覚えたのだ。

だからこそ、ゴブリンたちは自分の身も顧みず命懸けで尽くそうとするのだ。


「任せてくれ、私の強さは皆が認めてくれているだろう?」


サヴァルマーナにここまで言われては、傷身のゴブリンたちは、それ以上言えなくなってしまう。

後はただ無事にサヴァルマーナが戻るのを祈るだけだ。


「よし、行くぞ!」


サヴァルマーナの号令で動ける全員が「応っ!」と答えて駆け出す。

その瞳はギラギラと輝き、全員が残る者の想いを背負ったような顔をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。