勝利者なのです
前話からスマホ投稿になりました。
慣れません。時間が掛かります。
申し訳ない。
早く慣れるように頑張ります。
休憩を挟んで、サヴァルマーナとブラーガスの決勝戦が行われる。
サヴァルマーナは父や叔父に捕まって、あれこれと戦術を叩き込まれていた。
ウイングも熱心に話を聞いている。
サヴァルマーナとウイングは運命共同体みたいなものなので、当然といえば当然なのかもしれない。
相手のブラーガスは精霊剣を使うので、ウイングとしても対処法は気になるところだ。
何しろ自分の弱点を理解するチャンスでもある。
しかし、結局のところ父である魔王のアドバイスは、感覚的すぎて理解が及ばず、叔父であるバルディラント近衛騎士団長の言葉を聞くことになっていた。
だが、それも大した役に立ちそうもない。
何故ならば、経験則に従って予測を立てろと言われてもウイングには経験則がない。
相手の目線やちょっとした筋肉の脈動から、どういう技かある程度分かるはずなどと言われても、分からないものは分からない。
対抗手段を早めに用意するなど不可能だ。
それでも、ウイングは熱心にその話を聞いた。
サヴァルマーナに勝って欲しいと願っているのだ。
一方、ブラーガスとジーガンの魔性族は同郷のよしみとでもいうのか、二人で会話を交わしていた。
「ついに決勝まで来ましたな。
同郷の者として、鼻が高いというものですな!」
象頭のジーガンが、その鼻を高々と持ち上げる。
「これはジーガン様。
ありがとうございます……」
ブラーガスが礼儀正しく頭を下げる。
ジーガンは満足そうに頷いて言葉を続ける。
「……それで、サヴァルマーナ様には勝てるのかね?」
ブラーガスは静かに首を振る。
「ダメ……でしょうな……。
連戦に次ぐ連戦です。サヴァルマーナ様ほどの糧、魔法力は持っておりませぬので……」
ジーガンは暫し黙考してから、何かを思い付いたという風に鼻を振る。
「ブラーガス殿には、精霊剣があるではないですか。
あれならば、魔法力が足りずとも戦えるのではないですかな?」
「はっはっはっ……確かに命懸けならば、それもあり得ますが、まだやらねばならないことがありますからな……そこまでは無理でしょうな。
テセラスタ様のような魔導機を使った鎧でもあればまた別でしょうがね……」
その傍らで話を聞いていたテセラスタが眉間に皺を寄せて、鼻白む。
内情を知るものにとっては、茶番もいいところだ。
なんのことはない。命懸けでも、この機会にサヴァルマーナの首を取れと言うジーガンに対して、今はその時ではないと主張するブラーガス。
どうしてもと言うなら、魔導機鎧を寄越せという話だ。
自身の欲望に忠実で、既得権益を守ることに固執する質のジーガンは、首を縦に振ることはないだろう。
見ればやはり、ジーガンは首を縦に振ることはなく、そこで会話の終わりを報せるように、決勝戦を始める旨が告げられる。
サヴァルマーナとブラーガスが呼ばれ、合図と共に両者が動き出す。
サヴァルマーナは精霊剣を警戒しつつも、大胆に大技を放っていく。
ブラーガスは最初から勝つことではなく、どう生き延びるかを主眼にしている。
サヴァルマーナはレンバート先生の仇であるブラーガスに対して、容赦なく攻め立てるのでは、という予想を大方の者がしていたが、あくまでもサヴァルマーナの攻撃は殺すためというより、勝つために終始した戦いを行っている。
サヴァルマーナとしては、殺すよりもレンバート先生が死の間際に感じていた怒りの正体を知りたいのだ。ここで殺してしまう訳にはいかない。
お互いの意識が同調していたからか、勝負はあっさりと決してしまう。
サヴァルマーナは対戦中、ブラーガスが何をしたのか知りたくて、散々に挑発してみたが、ブラーガスはそれに乗ることなく、魔法は防御のみと割りきった戦いを演じて、魔法力切れと同時に降参を申し出た。
サヴァルマーナは苛立ちを募らせ、無視して攻撃しようという意志を見せたが、それは進行役の夜魔族ディサドラが放った精神魔法『ディープサニティ』によって止められてしまった。
そうして、サヴァルマーナの優勝が決まった。
一部の者にとっては大変に不本意な終わり方だったが、観客やそれ以外の者にとっては非常にエキサイティングな終わりだったらしく、いつまでも鳴り止まない拍手によって喧騒と共に今回の剣闘大会は幕を閉じるのだった。
何が得られる訳でもない、ただ栄誉だけの大会。
大会後にウイングの元には、優勝者サヴァルマーナの使う剣をどこで手に入れたのか聞きに来る者が押し寄せたが、ウイングは頑としてそれを教えなかった。
パリンガロンはそれを喜ばないだろうことが予測できた。
それに、パリンガロンの存在は秘密にするべきだと思ったのだ。
レンバート亡き今、ウイングとサヴァルマーナが相談できるのはパリンガロンだけだ。
それは正しい判断だと知るのはまだ先の話である。
サヴァルマーナはこの後、魔王城で後継者として選定される時を待つ。
ウイングとしては頼もしい兄が近くにいてくれる、共に戦ってくれるというのは、非常に喜ばしいことだった。
何より家族が増えたこと以上に喜ばしいことはないのだが。




