ふたりの戦いなのです
スマホにしたら、書き方が分からず困惑……。
一文字下げたいのに下がらないとか、色々問題ありますが、これはもう開き直るしかないのか、とか思ってとりあえず投稿。
読みにくかったら申し訳ないです。
テセラスタの負けがディサドラによって告げられる。
観客は総立ちになって、サヴァルマーナの名前を連呼していた。
テセラスタは担架に載せられて運ばれていった。
サヴァルマーナは舞台から降りて真っ先にウイングの所にやってくる。
「ほら、いつまでもそんな不安そうな顔でいるのは、やめておくれ」
「でも……」
ウイングは優しく頭を撫でられながらも、辺りにキョロキョロと視線を這わせる。
歓声は未だ鳴り止まない。
サヴァルマーナは観客に向けて手を挙げて応える。
魔王と家族がやってきて、口々にサヴァルマーナが隠していた力を褒めている。
「まさか、あんな力があるなんてな。
どうして隠していたりしたんだ?」
非常に満足げな顔で魔王が息子に聞いてくる。
「レンバート先生の教えでした。
父上の息子として、恥ずかしくない技を得るために、石級のつもりで精進しなさいと言われていました。
そのために周りには石級だと告げていたんです。
そうすれば、周囲の目が私を石級だと見てくれます。
厳しい目に晒されていた方が、慢心せずに修行ができるから、と……」
多少苦しい言い訳になっていたが、魔王は感心したように納得した。
「さすがレンバートだな……」
言ってから魔王の顔が苦々しいものになる。
誉めるべきレンバートは死んだのだ。
ウイングはサヴァルマーナに目配せする。
魔王である父に『地上恩恵派』の話をしなくていいのか、という意味だ。
レンバート先生からは敵の規模が分からない以上は情報を知る者は少ない方がいいと止められていたが、レンバート先生が亡くなり、頼る者がいない今となっては、父の助力を仰ぐのも手ではないかと考えたのだ。
だが、サヴァルマーナは瞳だけでそれはしない方がいいと答える。
兄がやめるべきだと考えているなら、今ウイングが言えることはない。
兄がふたりで戦うというのならば、ふたりで戦おうと決意するウイングなのだった。
舞台では百腕巨人ギャリンファロンと四腕の魔性族ブラーガスの戦いが始まっていた。
同じ多腕の魔族といえども、四腕と百腕の差がある。
しかも、巨人族と魔性族では大きさも違う。
身長だけでも倍ほども違うのだ。
ギャリンファロンは千手観音のような形をしている。
中心になる三対の腕と、背中からたくさんの触手のように動く腕が伸びている。
四対百ならギャリンファロンが優勢だろう。
実際、圧倒的にギャリンファロンが圧している。
それを横目に、ウイングとサヴァルマーナはふたりで会場から離れる。
人気のない場所まで行くとウイングが兄を見る。
「なんでサヴァル兄様は秘密をやめてしまったですか?」
ウイングの声は硬く、責めるようになっている。
「どうということもないよ。
ただ、今の魔王候補筆頭として狙われるべきは私だろうと思っただけの話さ。
ただの試練の一貫だと思えばいいだけだ。
今までも試練の連続だったからね。それが続くだけよ」
事も無げにそういって笑う顔は、気丈にも辛さを見せない強さに彩られていた。
だが、だからといってウイングはそれを良しとする訳もない。
「僕も戦うです!」
「いいや、これは私の試練だ。
ウイングは今までどおり、力を隠すことに集中しなさい。いいね」
「いやなのです!サヴァル兄様と一緒に戦うです!」
ウイングは頑としてサヴァルマーナの意見を受け入れない。
サヴァルマーナは「それじゃあ、何のために……」と小さく呟く。
そして、それをウイングは聞き逃さなかった。
故に気付いてしまったのだ。兄の真意がどこにあるのかを。
「サヴァル兄様はもしかして僕を守るために、わざと力を見せつけたですか?」
サヴァルマーナはそっと首を横に降る。
たとえそれが真実だとしても認めてはいけない時というのがあるのだ。
「それは違う。
私には私の考えがある。
確かに『地上恩恵派』の目を惹き付けるためにやったことだが、私なら敵の魔手を退けた上で、その姿を見つけることができるという自負があるからこそ、試練と呼ぶのだよ」
そして、サヴァルマーナが語ることもまた真実のひとつではある。
「でも……」
「確かに、お前の力に比べたら私の力は微々たるものとしか写らないだろう。
だが、私には今まで鍛えてきた技がある。
弟に助けられて魔王となっても、誰もついて来ないだろう。
尤も、お前が魔王候補として名を連ねる頃には、後継者はお前に決まるだろうけどね。
だから、ウイング。
お前の露払いは私の役目にしてくれないか?」
「僕は……魔王じゃなくていいです。
サヴァル兄様が魔王がいいです」
「いいや、真に力を持つものが魔王になるべきだ。
だから、お前が魔王になるんだ!」
「なんでそんなこと言うですか?僕にはそんな大役務まらないです」
ウイングは魔王になること自体には興味がない。
最初、転生したばかりの頃はそういう気持ちもあったが、今ではそんなものより、家族を失いたくないという気持ちの方が強い。
それは確かに前世からの影響だろうが、偽らざる本当の気持ちである。
「正直に言ってしまえば、父の跡を継ぐのは私だと思っていたんだ……。
ウイングの本当の力を知るまではね。
だが、お前の力があれば今はともかく、必ず魔王になれる。
そして、お前なら地上に我らの生きる地を求めることも不可能ではないだろう。
私はそれを見たいと思ったんだ。
だから、ウイング……お前は私の希望になってくれ!」
サヴァルマーナは魔王になるまでを目標として生きてきた。
だが、そこまでを目標としてきたのだ。
サヴァルマーナにはその先が見えない。魔王となって、地上を目指した先が見えないのだ。
勇者と戦い、それを退け、人間を殲滅するまで戦うのだろうか……それをヨシとしない天族と……さらには神と呼ばれる存在と……。
初代魔王ルーシュフエルは神から地下世界を治める権利を勝ち取った。
自分にそれができるだろうかと自問しても、その先は見えない。
だが、ウイングならばと思ってしまうのだ。
初代魔王が持っていた天の恵みの宝珠。それを魂の器として持つウイングならば、その先の光景を期待してもいいように思うのだ。
そのための礎になる。
それがサヴァルマーナの決意だった。
そして、サヴァルマーナのそんな想いが、ウイングにも伝わる。
はっきりとしたものではないが、何か大切なものを託されたことだけは分かる。
「サヴァル兄様の希望……」
「ああ、お前がいてくれるなら、私は強くいられる。
だから、私にお前を守らせて欲しい……」
ウイングはそれ以上、一緒に戦うとは言えなくなってしまった。
ただし、座して待つのは本意ではない。
「サヴァル兄様の言うように、僕は力を隠しておくです。
でも、サヴァル兄様が命を懸けて敵を誘き出すなら、その敵と戦う時には僕も一緒に戦うです!」
サヴァルマーナが、もう一度否定の言葉を出す前にウイングは続ける。
「だって、魔王になるための試練なのです!」
今度はサヴァルマーナが言葉を失う。
ウイングに『地上恩恵派』との戦いを諦めさせるための方便を逆に使われてしまった。
これでは、サヴァルマーナも否定する訳にはいかない。
「やれやれ……頑固だな。
……わかったよ。その時が来たら共に。
それまでは、ちゃんと力を隠しておくこと。いいね」
「分かったです」
こうしてふたりの舌戦は終わり、会場へと戻った。
舞台ではギャリンファロンがその自ら鍛えて振るった武器の大半を失って、ブラーガスが精霊剣を喉元に突きつけているところだった。
「ま、参った……」
ギャリンファロンの声が響く。
決勝戦はブラーガスとサヴァルマーナに決まったところだった。




