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2.『君の色が好きでした』

中学の頃、初恋をした。

二年の夏頃に同じクラスだったクイナという子と。


「美鈴くん!」


そう呼んでくれるその声が好きで好きでたまらなかった。


「美鈴くんの髪の毛は、きっと伸ばしていても綺麗なんだろうねえ。」


楽しげに僕のことを語るその姿も、声も、表情も、何もかもが愛おしくて。

彼女の望むことなら僕ができる限りのことは全てやってあげたくなる。

だから僕はその日から髪を伸ばした。


「今から通話できる?」


お互いどちらかというとインドアで、会ってもお金がないからどうしようもない。

その結果基本的には通話でいつも喋っていた。

僕が誘うとクイナはいつもなにかしていない限りすぐにいいよなんて言ってくれて、僕の為に時間をあけてくれているんだろうなと嬉しくなる。


「ずっと一緒にいようね。」


僕は定期的にそう言っていた。

いつまでも、ずっと一緒にいる気でいた。

彼女が別れを切り出しても、復縁したいって言うならいつでも受け入れる。そんなつもりで居た。


「ボクね、ひらひらの服…ロリータっていうのかなあ?一度は着てみたいなあ…まあ、高いし、なにより服に着られてしまうんだろうけど…」


クイナはあまり自己肯定感が高くない。

こんなにかわいいのに。自分の可愛さというのを理解していないんだ。


「そう、あとね、太陽が照らす芝生にごろんって寝そべって花冠を作るんだ。とっても素敵だと思わない?」


クイナの価値観と僕の価値観は随分違っていて、彼女の思う『素敵』で『憧れ』は僕には理解しがたいものが大半だ。

それはどこか、幼い少女を連想するような発言が多かった。

でもそこがまた可愛くて、僕の知らないことを、知らない世界を自分の言葉で一生懸命伝えてくれる。


「すき、すき、すき。だいすき。」


クイナと話す機会が一度でもあれば僕は愛を言葉にした。

少しでもこの気持ちを伝えたくて。


「…そっか、ありがとう。」


クイナはどうしたらいいのかわかっていなさそうに感謝をくれる。

感謝したいのは僕の方なんだ。君がこんなにも楽しそうに笑ってくれるから僕は幸せでいれる。


「クイナ、いつもありがとう。」


僕はクイナに感謝を伝えることを必ずした。

頼まれたとかじゃない。僕がそうしたかったから。

ただ君へちゃんと言葉にして気持ちを伝えるのが誠実だと思ったから。


「こちらこそ、ありがと。美鈴くん。」


少し照れくさそうにそういう君はいつだって僕の中心だ。


なのに、そうだったはずなのに。

どうしてあの幸せだった日々の1年後に、別れを切り出されたんだろう。

僕が悪いことをしたからきっとクイナは僕に愛想を尽かしたんだ。


「ごめんね、もうキミと一緒にいるボクがイメージできないや。」


そんな言葉も、きっと全部僕が不甲斐ないせいだから。だから直したらまた前みたいに戻れるかな。

でも、僕の直したほうがいい場所ってどこだろう。何をどうしたら直せるのかな。


「ねえ、おしえてよ。クイナ…」


でも、その声は風に乗ってクイナに届かず朽ちて消えた。

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