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1.5『君の色を重ねた』

夏が終わって梅雨がやってくる。

だから、ボクは梅雨が嫌い。

あの初めての夏の日を思い出さずにはいられないから。始めを思い出したら、終わりも思い出すから。


「…引きずってるなあ。もう、大人になったのに。」


思い出を振り払うようにボクは車を出してショッピングに専念する。

お洋服に興味はあまりないけれど、ひらひらでふわふわな…所謂ロリータ服というものは好きだった。

自分が着ても似合わないだろうから遠くで見るだけだけれど。


「あ、この化粧品新しいシリーズ出てる。かわいいなあ…今回は不思議の国のアリスがモチーフなのかな?色は…うん、使いやすそうだ。」


高いけど、その分可愛くてつい買ってしまう。

そうして機嫌よく自宅に向かって帰りの車を走らせていると、人が道路の真ん中で倒れていた。


「だ、大丈夫かい!?」


慌てて車から降りてその人の顔を見ると、それは従姉妹のクロトで。

彼女は悲惨な事件の後から梅雨の日におかしくなることをボクは知っている。

だからまた持病の発作かと理解し、とりあえず車に押し込んだ。

この調子じゃすぐには起きないだろう。


「過去に縛られすぎだよねえ…ボクが言う事でもないけれどさ。」


本人曰く、幻聴と幻視があるらしいが…まあ、ボクはそこまでじゃないし大丈夫だ。

自宅について、クロトを背負い込みながらそんなことを考えた。


「あーおっっも!つかれたあ…」


クロトをとりあえず自室のソファに寝かせておく。

その間ボクは背負っていたり、慌てて駆け寄ったりで濡れた髪を拭いてから着替える。

もちろんクロトにもその処置はした。動かない人間に服を着せるのは中々難しかったけれど。


「起きたんだね。」


どのくらい時間が経ったか、正直数えてはいないけど、クロトは長い時間寝ていた。

それから彼女の状況説明や、少し軽い冗談を言ってはくすくすと笑う。

笑う中で本当に彼女とボクは見た目がそっくりだなあと思ってきて、それが似た色なのに全然違うって話をした美鈴くんの思い出と重なった。


「…お前、俺のどこに元彼の影を捉えたんだよ。」


クロトは、勘がいい。憎たらしいほどに。

ボクの考えはいつだって見透かされている。


「キミのこと、ほんっとうに嫌いだ。」


違う。嫌いなのはボクだ。

ボクはボクが嫌いで、その延長線上にあるボクの思考も嫌い。

だからその思考の中で重なったクロトを嫌いだって罵った。


「そーんな性格してっからお前人に嫌われんだろ。」


そんな性格ってなんだよ。直せるならとっくの昔に直してるよ。


「う、るさい。知ったような口を聞いて…だまれ、だまれよ…」


自分が一番正しいみたいな余裕ぶった顔で指摘する。

そんなクロトが、昔から嫌いだ。だいっきらい!


「はぁ、ごめんて。」


呆れたようにそんな事を言って来る。


キミのその傲慢じみた態度が嫌いだっ!!

そう言える度胸がボクは欲しかった。

度胸じゃなくて、せめて前向きで純粋な心が欲しかった。


「…キミはどうしてそんな風にいれるの。」


静かにそう聞いてみた。

羨ましかったから。


「演技、それだけさ。嘘も嘘で重ねてしまえばいい。本当にそれだけだ。」


嗚呼、結局努力か。

せめて天性のものなら心の底から憎んでしまえたのに。

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