4.『色のウラガワ』
最後まで物語を見終わったとき、三人中二人がポリ袋に嘔吐していた。俺と代弁者だ。
「君達耐性がなさすぎるんじゃない?」
魔女は平然と紅茶を嗜んでいる。
明らかにおかしい。単に魔女の耐性値がバグっているだけだ。
「私割と自分がぶっ壊れてる自覚ありますけどぉ、正気も一応残ってるんで、無理。うぇ…気持ち悪い…」
「人間のいじめ陰湿でグロいわ…しかも最終的に死んでるの美鈴かよ。どうなってんだこの世界…うっぷ気持ち悪ぃ…」
二人してほとんど土下座一歩手前な体制を取っている。この体制が一番マシだからだ。
眉間にシワを寄せた魔女がため息をつくと、俺達の吐き気や気持ち悪さは消え去った。
「近くでそんなに吐かれると紅茶が不味くなるんだけど?やめてくれないかな僕の優雅な時間を邪魔するの。」
善意だと思った俺が馬鹿だった。魔女はどこまでも自分本位で傲慢な女だ。
「お前今回わざと現実の記録見るんじゃなくてアニメみたいにしてダイジェストで見せただろ…」
「しかもそれぞれ別の視点で見せましたよねぇ…」
クレアとマールの話は単に現実の様子を魔女の能力?魔法?で写して見ていただけだった。が、魔女は嫌がらせのためだけに気持ち悪い視点で見せたのだ。しかも心の声が聞こえるようにして。
「ふふ。クレアとマールのときは見ていてつまらなかったからねえ…まあ、あれは中身の方も駄作だったからっていうのもあるけれど。」
カップを揺らしながらそう答える魔女。ぶん殴ってやろうか。
「…俺の目的知ってんだよな?なんでそう関係ないことをやるんだ?ん?答えてみ?」
現実の様子を見せてくれるのは魔女だ。それに関しては感謝していなくもない。
だが、訳のわからん吐き気が催す映像を見せていいかと言われたらそれは別の問題すぎる。
「いや、普通にさ…見るなら面白い方がいいだろう?」
その言葉は本心以外の何者でもない。本当にそう思ったからそう言っているのだろう。
だからこそこの魔女は異常極まりないのだが。チラリと横を見ると代弁者の顔が引きつっていた。
「てか、なんでクレア達の方は駄作なんですぅ?私的には血が出て狂気に混じってるアッチの方が好きですけどぉ…」
代弁者はこれ以上魔女の狂気を見るのが嫌なのか露骨に話題を変えた。
まあこの質問は単に別の狂気を見るだけな気がするが。
「クレア達のは単に僕ら…というかそこのお馬鹿なトリックスターさんが干渉しすぎたんだよ。せっかく能力とか魔法がない世界なんだからその世界特有の生々しいリアリティ?みたいなものが見たいんだよねえ…多分ああいう殺傷沙汰ってあの世界じゃ普通じゃ無さそうだし。」
とりあえず原因は俺だと…まあ、さすがに干渉しすぎた自覚はあるが。
「とりあえずその世界特有のリアリティと生々しさが詰まった精神的にグロいのが見たいってことでOKですぅ?だから美鈴とクイナが同じクラスになるように仕向けただけの今件を気に入っていると…」
聞いてロクなことがなかったとでも言いたげにそんなことを言い始める代弁者。
始めたのはお前だろと言いたいが言ったら面倒だな。
「まあ、そうなるねえ。とにかく、そろそろ別の時間軸に移動しようか。後3人なんだろう?事を済ませるのは早い方がいい。僕や代弁者だってやりたいことがあるんだから。」
ふわりと微笑んで魔女はクラップを1つ。すると俺たちのいた痕跡は俺たちごとそこから消えた。
ただ1つ、あるとすれば紅茶の匂いだけだ。




