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1.『貴方の肌の温かみ』

物心ついた時にはもう気づいていた。

母は、僕に関心がないんだと。興味なんて持っていないのだと。

それが酷く悲しくて、女手一つで育ててくれている母によくちょっかいを描けた事を覚えている。


母に構って欲しくて、小学校ではいつだってテストでは90点以上を死守した。

母に構って欲しくて、女の子には珍しい『僕』って一人称にした。

母に構って欲しくて、褒めて欲しくて、テレビで見て、スマホで調べて、家事を覚えた。


でも、いつも母の返事は変わらない。


「そう。」


「良かったね。」


「すごいじゃない。」


「これで貴方に任せれるわね。」


幼いながらに感情には敏感で、母の言葉に感情が込められていないことにはすぐ気づいた。

いや、母も隠す気がなかったんだと思う。

いつだって母の目線が僕に向いたことはなかったから。

母は1度だって安全面の理由以外で僕に触ったことがない。


「母さん、三者面談が学校であるんだけど...」


母が僕と一緒に行動するのは、この三者面談の時だけだった。

母は、教師に何を言われても


「そうですか。」


「好きにさせてやってください。」


「それがウチの教育方針ですので。」


そう言って適当に済ませていた。

僕の進路の時だって、


「この子が選んだならいいと思います。」


そう言って、全部我関せずを貫いていた。


唯一、記憶に残っている母が僕に構ってくれた記憶はひとつだけ。

ショーウィンドウを見ていた僕に母が声をかけてくれた。


「それが欲しいの?」


僕が見ていたのは、ただのテディベアだった。

僕は母の問いにコクリと頷くと、母は店に入ってそのまま買い与えてくれた。

それだけが、母と僕の繋がりだった。


僕は貰ったテディベアを大事に、大事にした。

母から貰った大切なたった一つの思い出、だからいつだって一緒にいた。

高校生になった今でも一緒だと思っていた。


いつからだろう。

ぬいぐるみが無くなったのは。

僕に彼女ができてから、ぬいぐるみは無くなってしまった。

どこにいったのかと探してもない。

けれどもういいんだ。僕には彼女がいるから。

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