【第九話】魔物の世界?
俺は今、村の外で彷徨っている。
何故かと言うと、村の広場で
野宿していたら警備の人が来て
野宿禁止! とか怒鳴られて
怒られてしまったのだ。
致し方なく別の場所で
野宿をしようと思ったが、
警備の人にマークされてしまい、
渋々村を出たのだ。
とりあえず雨風が凌げる場所を
探さなければいけない。
簡単な洞穴とかないものか。
でもダンジョンはお断りです。
彷徨い始めて2時間後、
ようやく洞穴らしきものを発見した。
俺は中に入り、中の様子を確認する。
よし。何もいないようだ。
異常がないことを確認したら
すぐに横になって寝る準備をした。
お腹は空いて寝れそうになかったので
そこら辺に生えていた雑草を
引っこ抜いて食べてみた。
案外食べれるものだ。
辺り一面の雑草を食い尽くすと
少し空腹が満たされたので
目を閉じて寝れる体制をとった。
寝付くのにそれほど時間はかからなかった。
・・・・・・しばらくすると
「ちょっと生きてる? 起きてくださーい」
変な声が聞こえる。しかしすごく
眠かったのでそのまま無視をする。
「あっ、動いた。ちょっと起きてよ」
ちっ、なんだよ!
誰だよこんな時間に人を起こすボケは。
起きるのスゲー怠いんですけど。
面倒だがとりあえず目を開けてみた。
・・・・・・!!
翼? 尻尾??
そこには魔物がいた。
俺は驚いてそのまま起き上がり、
走って逃げた。
目の前にいた魔物は驚いた様子で
俺を見ていたが、すぐ追いかけて来た。
なんだよあの魔物は!?
なんで目の前にいるんだよ!
なんか追いかけて来る!
うぁ、早えええ!
あいつ走るのめちゃくちゃ早えええ!
もう後ろにいるよ!!
こうなればトラバサミを召還して足止めだ!
うぁ、ここダンジョンじゃねえし!
俺の魔法マジ使えねえええええ!!
助けてええええ!
逃げ回る俺に追いついた魔物は
手を掴み、走ってる俺を引っ張って止めた。
ぐはっ! な、なんて力だ。
全力で走っている俺を一瞬で止めただと・・・・・・
腕が持っていかれるかと思った。
息が上がっている俺に、魔物は
涼しい顔をして話かけてきた。
アイシン
「捕まえた! これで話を聞いてくれるかな?」
おや、話す言葉に敵意は感じなかった。
よかった。とりあえず殺される様な事は
ないだろう。少し落ち着いた俺は
手を掴む魔物を見た。
あれ? 魔物・・・・・・だよな?
人間っぽいけど、何かが違うなぁ。
俺はその魔物の姿をなめまわす様に見た。
髪は金髪で腰近くまで伸びている。
瞳の色は青っぽい感じだ。
容姿は整っており可愛いらしい女の子だ。
格好は頭には少し大きめのカチューシャをしてして
カチューシャには大きい花が
いくつか装飾されている。
服装は普通の村人のような
綺麗とは言えない服を着ている。
しかし背中から翼? のようなものがあり、
尻尾もお尻から伸びている。
んー、なんだこの生物は?
ゲームの魔物で例えるならサキュバスかな?
タルト
「話の前に自己紹介をして頂きたいですな」
敵意がないと知った俺は上から目線で
そのサキュバスらしき魔物に質問した。
アイシン
「何かいきなりふてぶてしい態度ね。
自己紹介かぁ、うん。私はアイシン。
今はある用事で人間界に来ているんだけど
理由は秘密。あなたは?」
タルト
「俺は、タルト。こう見えても魔物だぞ!」
アイシン
「魔物ねぇ・・・・・・。
そんなの言われなくてもわかるわよ。
魔族オーラがバンバン出てるわよ」
嘘!? 俺そんなにオーラ発してたの!
ちょっと体臭が気になる人のように
自分の体をクンクンし始めた。
アイシン
「臭いは関係ないでしょ。魔族のオーラは
強さや性格、種族などを映し出すわ。
あなたのオーラは見たことなかったから
気になって、寝ている君に話かけてみたの。
ちなみに私たちを魔物と呼ぶのは人間だけよ。
あなた人間側の魔族なの?」
なるほど、こっち側は魔族と呼ぶのか。
しかしこれは不味い展開になったようだ。
明らかにアイシンの表情が変化し、
俺を睨んでいる。本人は隠しているようだが
殺気が体から溢れ出している。
何とかして弁解しなければいけない。
タルト
「魔族と言うのか。そうか、申し訳ない。
実は昨日から記憶喪失になってしまって
自分自身が全く分からないんだ。
彷徨っている俺を人間が助けてくれて、
そこで魔物という言葉を聞いたんだ」
アイシン
「ふぅ~ん、そうなんだ」
あまり信用されていない様子だな。
ただ、少し殺気は収まったような気がする。
タルト
「人間と別れた後、どこに行けばわからないから
あそこの洞穴で野宿していた訳さ」
アイシン
「ふぅ~ん、まあ、いいわ。信じてあげる。
何か企んでる様子は見えないしね。
では話を戻すけど、記憶喪失じゃ
答えようがないわね。
んと、自分の種族とか職業とか
レベルとか覚えてる事はない?
もしあればそれをヒントに
何かわかるかもしれない」
アイシンの殺気はなくなり、先ほどと同じ
表情に戻った。何とかこの場は収まった。
このアイシンに話して大丈夫なのか。
何か力になってくれるようだし。
とりあえず知っていることだけ話してみて
何か情報を聞き出せればいいか。
でも転生の事を言うのは不味いだろう。
タルト
「覚えていることはほどんどないんだ。
一応魔法の使い方は覚えていたよ。
あと覚えているのは自分の職業だけかな」
アイシン
「職業だけしか覚えてないの!?
職業なんて何のヒントにもならないわよ。
もうお手上げ状態ね。
で、ちなみに職業は何なの? 魔法使い?」
タルト
「確かダンジョンアーキテクトだよ。
ダンジョンを作るみたいだけどね」
アイシン
「!! あなたDAなの!?」
アイシンの表情がまた変化した。
今度は誰が見ても驚いた表情だった。
まさしく豆鉄砲を食らった鳩の様だった。
アイシンは驚いた顔のまま
俺の両肩に手を置き慌てて話を続けた。
アイシン
「本当にDAなの? 嘘でしょ、何かの冗談よね」
アイシンは引きつった顔で笑った。
心なしか体が震えているようにも見えた。
タルト
「これは本当。でもこれ以外は覚えてないよ」
アイシン
「あぁぁ、もし本当だったらえらい事よ!!
ああん、こうしちゃいられない!!」
アイシンは慌てて後ろを向き、荷物から
何かアイテムを急いで探している。
取り出したアイテムが違うとわかると
そこら辺に投げ捨てていく。
アイシンが取り出したアイテムは
何か変な紙きれだった。
よく見ると先ほど冒険者からもらった
紙切れによく似ている。
アイシンはその紙切れを持ったまま
話をし始めた。
アイシン
「もしもし、私。うん、うん、あ、元気よ。
いや、そんなことより聞いて。うん。
とりあえず職業鑑定石を私まで転送してくれる?
うん。あ、うん。わかってるから。急ぎでお願い!」
何だ、手紙じゃなくて電話もできるのか。
本当に便利なアイテムだなこれは。
アイシンの電話? が終わると
アイテムが入っていた袋が一瞬光った。
アイシンは袋の中から石ころを取り出した。
そしてそれを持って俺の所に近づいてくる。
アイシン
「ねえタルト、何も言わずにこの石を持ってみて」
タルト
「爆弾じゃないよねこれ?」
アイシン
「いいから早く!」
冗談が通じなかったアイシンは俺に、
強制的に変な石を持たされた。
しばらくすると変な石は光だし、
色が変化した。緑と黄色の中間くらいの色だった。
色が変わった石をアイシンは奪い取り
まじまじと見つめる。
アイシン
「本当なの!? 本当にDAじゃない!!
まさか本当に実在するなんて・・・・・・
ちょっとタルト!なんでこんな危ない所にいるの!
殺されたらどうするの!?」
何かよくわからない理由で怒られました。
アイシン
「人間界の調査は中止。一旦戻りましょう。
タルトも一緒に来てもらうからね!」
タルト
「え? ちょ、ちょっと何何??」
するとアイシンはタルトの手を取り
何か魔法を詠唱し始めた。
足元から魔法陣らしきものが浮き出て
蛍の様な光がたくさん魔法陣内を飛び回る。
俺は何が起こるかわからず
慌てふためいている。
次の瞬間、魔法陣ごと二人の姿が消えた。
俺はビビッて目を閉じたままでいる。
アイシンがもういいわよと、言ったので
ゆっくりと目を開ける。
すると周りには魔族がたくさんいた。
ゴブリンやオーク、スライムやガーゴイルまで。
ここは・・・・・・どこやねん?
アイシン
「あれ、魔族界の記憶もなくなってるの?
本当に重症レベルね、それ」
どうやら俺はこのアイシンによって
魔族界に拉致されたようだ。
せめて転移する前に説明してほしかったよ。
アイシンは俺をどうしようと思ってるのかな。
正直ちょっと怖いです。




