【第三話】職業の選択
「はいはーい、起きてくださーい!」
俺は聞き覚えのない声で目を覚ました。
まだ意識ははっきりしていないが
目の前に誰かがいるのはわかった。
「早くしないと説明始めますよ!」
俺はあの糞野郎の使いだと確信した。
思い出すだけで腹が立つ。
相手が使いでも
何か言ってやろうと思い、
ぐっと体を起こす。
しかしその使いの姿を見た瞬間、
そんな思いは吹き飛んだ。
か、可愛い(´・∀・)
「まずはこの世界について簡単に
説明しますよー」
その可愛い使いは淡々と説明する。
俺はその姿に見とれていた。
「この世界には人間と魔物が存在し、
お互いが正義を掲げ、争いが絶えません。
あなたは魔物として人間に打ち勝たなくては
いけません。ここまで大丈夫ですか?」
ここまでは良くある話だ。
ん?今魔物って言わなかったか?
俺モンスターなん?
「あのー、ひとついいですか?」
「あ、どーぞ」
「俺、どう見ても人間の容姿なんですが、
魔物なんですか?」
「はい、モンスターです。姿形は
人間ですが魔物になります。
大丈夫です。モンスターには
モンスターにしかないオーラがあり、
それでモンスターは
人間と区別してます。
なので同族にやられることは
ありません。安心してください。
続きいいですかー?」
「はい、お願いします」
「ただ人間には冒険者という戦闘に
特化した存在がいます。
基本は冒険者と戦う事になるでしょう。
それに対抗できる職業をいくつか
用意しました。本来生まれた時
すでに職業は決まるものですが、
転生した者は職業を選択する権利が
与えられます。
このリストから選んでくださいな」
差し出されたリストを見ると
ゲームでよく見かける職業が並んでいる。
剣士、バーサーカー、魔法使い、ハンター、
シーフ、格闘家、獣使いなどだ。
逆に見慣れない職業は、
マッスラー、トランスフォーマー、
呪縛者、拷問家、チーターだ。
んー、どれがいいのかさっぱりだ。
そもそも喧嘩だってまともにやらない俺が
いきなり戦闘とか無理じゃね?
「すいません、俺筋力とかないので
すぐ殺られるんじゃないですか?」
「それも大丈夫です。戦闘能力は
レベルや職業の熟練、魔法等で
上がります。今現状の能力は
日常生活の能力だと思ってくださいな。
戦闘になれば自動で向上します。
ここだけの話、人間も同じなので
見た目に惑わされないようにね!」
なるほど、心のメモに残しておこう。
「俺、戦闘とか苦手なので何かいい職業は
ないですか?戦わなくていいやつとか。」
「んー、そうなると農民とか鍛冶屋とかに
なっちゃいますよ。戦闘はしないですが
転生ポイントが全く貯まりませんので
お勧めできませーん」
「転生ポイントとはなんですか?」
「あ、説明してませんでしたね!
転生ポイントとは転生した者のみに
与えられるポイントで、貯めると
誰も使用できない特殊スキルや
規格外のアイテムなど
ゲットできるのですよ。
その転生ポイント、
以下TPと省略しますが
貯める方法はひとつしかありません。
人間を殺す事で獲得できます。
なので農民や鍛冶屋は
あまりお勧めできませーん」
なるほど。納得だ。
「これもあまりお勧めできませんが
戦わなくてもTPを貯められる職業が
ありますが、どうしますー?」
なんだあるじゃないか!と手を叩き、
どういう職業か聞いてみた。
「ダンジョンアーキテクトです。
この職業はダンジョンを設計、
作成し、トラップなどで
人間を殺します。しかし······」
「しかしなんですか?教えてください」
「この職業は設計だけでなく、
ダンジョンの運用も必要です。
また、レア職と言うこともあり
同業者が見つかる可能性が
極めて少ないのです。
その為アドバイスなどが
一切受けられないので
ほぼ手探りとなります」
ふむ、そう言われると大変そうだな。
でも戦闘も未経験だし、どっちも
手探り状態だよな。それなら
より命の危険が少ない方がよいだろう。
「俺、ダンジョンアーキテクトになります」
「あらー、珍しい人間もいるんですね。
では決まりですね。一応職業について
説明しますね。レベルが上がると
戦闘ステータス上昇の他に
スキルポイントが貯まり、
それを使用して新たなスキルが
覚えられます。この職業では
技と言うより効果上昇や制限解除が
メインとなりますね。代表的なスキルは
トラップダメージ上昇、
トラップ効果時間延長、
異常状態確率上昇、
ダンジョンポイント最大値上昇、
設置トラップ数上昇、
配置モンスター数上昇、
宝箱上限金額上昇、
宣伝効果上昇などですね。
まだまだありますが省略します」
うわぁ、なんか色々あるやんか。
「後ダンジョンを作成するにあたり、
いくつかルールがあります。
①冒険者は一日一組のみ侵入可能
②攻略された場合、一ヶ月間は再開、
新たにダンジョンの作成は出来ない。
③先に進めないダンジョンの作成は禁止。
④自ら冒険者へとどめをさしてはいけない。
⑤村、町から半径5km以内には
ダンジョン作成禁止。
⑥宣伝において、嘘や偽りは禁止。
⑦出口を塞ぐなど冒険者が進行不可能に
なるようなトラップ禁止。
⑧ダンジョンの改修、修理などで閉める際は
冒険者が来ない日を選ぶこと。
大まかなルールはこんな感じよ」
「なぜこのようなルールがあるのですか?」
「ダンジョンは人間にとっても
魔物にとっても重要なツールとなります。
人間はレベルアップや、強い装備を
求めダンジョンへ行く。
魔物は強い冒険者を誘き寄せ、
来たやつらを狩る場として。
ダンジョンの信用がなくなれば
人間は来なくなるので、
人間を殺すのに村や町、
城など攻めなくてはいけなくなります。
当然大多数での戦闘になりますので
リスクも大きくなるし、
魔物の数や装備、食糧など大量に用意、
消費してしまいます。人間狩りの効率が
とても悪くなるのです。
又、滅んだ町から人間は
生まれなくなりますので
魔物のレベルアップにも影響がでます。
人間を求め、拠点の移動なども
必要になります。
人間と魔物は変なところで
需要と供給が成り立ってるのです。
それらの理由により、
ダンジョン作成には厳しいルールが
課せられてるのです」
はぁ、何か複雑だなぁ。
「ダンジョンの作成にはお金が必要です。
ダンジョンの広さ、深さ、立地により
価格は変動します。また設置する
トラップ、宝箱、モンスターにも
お金は必要になります。
お金の得る方法はアルバイトで稼ぐか、
冒険者を殺し、奪った金品を
売却したりします」
なんかすごい現実的でファンタジー感が
ないんですが。
「最後にダンジョンポイントです。
これはこの職業特有のポイントで、
トラップやモンスターを召還するのに
消費されます。消費したポイントの
回復方法は基本ありません。
召還したトラップが発動したり、
召還したモンスターが倒されたり
したら、召還に使用したポイントが
日付変更と共に戻ります。
又、召還解除した時も同様です。
お金ではなくポイント消費になるので
コストをかけずにダンジョンを
運用できるのです。
ただ、トラップを増やしたいが
ポイントが足りない場合は、
お金を使用して設置するのもありでしょう。
レベルが上がればポイントの上限も上がり、
沢山召還できるようになります。
ただし、攻略されたダンジョンは
召還した物すべてが消滅し、
攻略されたダンジョンが復活するまで
召還できなくなります。
この時に消滅した召還分のポイントは
翌日に戻りますので安心してください。
ここまでで質問ありますか?」
説明が長すぎて覚えきれねぇ。
「特にありません」
「では説明は以上でーす。
頑張ってくださーい!」
そう言うと、神様の使いは消え、
辺り一面暗闇だったのが、
一瞬にして別世界が広がった。
こうして俺はダンジョンアーキテクトとして
新たな人生を踏み出した。
「まずは情報収集だな、
近くの村に行ってみるか。魔物の村へ······」




