【第二十三話】ダンジョンのお片付け
【魔界:サルバルト城下町の病院】
目を覚ますと俺は、椅子をベッド代わりにして横になっていた。そのまま辺りを見渡すとアイシンが俺を覗き込む様に見ていた。アイシンが俺の目覚めに気づくと「あ、起きた! おはよう!」と微笑みながら言った。どうやら、アイシンは膝枕をしてくれてるらしい。そして俺の頭を撫で撫でしている。
な、何だこの状況は!? 誰が見ても勝ち組じゃないか!誰もが羨むシチュエーション!
だがしかし、私の欲望はこんなもので収まる器ではないぞ! 更なる高みってやつを見せてやろう!
俺は仰向けの姿勢から、アイシンに体が向くよう横になる。そして顔の目の前にあるアイシンの股関節辺りをロックオン!
タルト
「見るがいい! 私の真の実力を!」
❰新宿歌舞伎町神拳奥義:秘境渡り❱
俺の頭は左右小刻みに振動する。その早さはイ○リー岡田様の舌の早さに匹敵した。そしてその状態で股関節に頭を埋める。この超振動により最短かつ最速で相手の秘境へ辿り着く事ができる!さらに振動による相手への精神ダメージ効果も見込めるのだ!
どうだ! この一子相伝の新宿歌舞伎町神拳奥義の実力は!! この技を会得する為、俺はガールズバーを始め、スナック、クラブ、ラウンジ、キャバクラに続き、ムフフなお店にも通い続けた。そこには言葉巧みに誘導するキャッチ、明らかに価格設定がおかしいボッタクリ、怖いお兄さんによる恐喝、選んだ子とは別人の方がお相手になる写真詐欺、気がつけば借金を背負っているスキミングなど様々な試練を乗り越えたのだ! その地獄の中で閃いたこの技をくらって無事なやつは過去にいないのだー!!
俺は全力でアイシンに奥義を放つ。
アイシン
「ん? タルトどうしたの? 寒いの?」
な、なんだと・・・・・・。
この技は一見ただのセクハラの様に見えるが、本質はそこにないのだ。
いや、ただのセクハラに間違いはないのだが、あえて言おう。
この技をくらった女性は焦る。自分の秘境が予期せぬタイミングで危機に襲われる。その際に女性が見せるリアルに嫌がる反応を楽しむのがこの技の本質なのだ。
だがアイシンはこの技に抵抗することもなく、純粋に俺の体調を心配したのだ。
これでは純粋無垢な少女に手を出してる変態オヤジじゃないか。そんな姿を世間体の方々はどのような視線で俺を見るのだろう。想像したくない。
タルト
「い、いや、ちょっと目にゴミが。」
アイシン
「そっか、大丈夫?」
俺は何事もなかったようにアイシンの膝枕から起きる。冷静になった俺はアイシンに話しかける。
タルト
「スラ達は2、3日は病院だと思うから、今後の事について話そうと思う。」
アイシン
「そうね。で、どうするの? 一回ダンジョンを閉鎖するの?」
タルト
「いや、スラ達がいなくても運用をしていこうと思うんだ。スラ達がいなくても支障がなさそうだしね。その前にダンジョンの後片付けをやろうかと思うんだけど、アイシンは大丈夫そうか?」
アイシン
「私は全然大丈夫だよ。」
タルト
「なら決まりだ。ダンジョンに戻る前に一度買い物をすませるよ。購入しないといけないトラップもあるしね。2人しかいないからちょっと大変だと思うけど。」
俺はアイシンを病院に待機させ、トラップが売っているお店に行き、前回購入した物と同じ品を購入した。そして俺達は病院を後にして一度ダンジョンへ戻ろうとしたが、やたら荷物が重たくなっているのに気付いた。夢の中でのガチャアイテムがこの中に入ったのだろう。結構な量だ。
アイシン
「タルトの荷物ってこんなに多かったっけ?」
タルト
「う、うん。もともとこのくらいだったよ。」
アイシン
「そっか。」
特に気にも留めなかったアイシンは俺の手を取って、ダンジョンへ移動した。
【人間界:レンタルダンジョン】
ダンジョンについた俺達は早速中へ入り、作業を分担して片付けに取り掛かった。
発動したトラップと死体の回収は俺が担当で、アイシンは飛び散った血痕などをきれいにしてもらった。
トラップの回収は簡単にできたが、死体の回収はどうしよう。正直、グロ過ぎてやりたくないんですが。
とりあえず死体を回収。そのまま捨てるのも気が引けるのでダンジョンの外に墓を作ることにした。
アイシン
「なんでわざわざ墓まで作ってあげるの?」
タルト
「さすがにそこら辺に捨てるもの良くない気がしてさ。」
アイシン
「森の中に捨てちゃえば、野生の動物とかが骨まで食べるから大丈夫じゃないの?」
アイシンさん意外にドライですね。
タルト
「そういう問題じゃないの。早く穴掘るのを手伝ってくれ。」
アイシン
「面倒だなぁ。」
アイシンはぶつぶつ言いながら墓の用意を手伝ってくれた。俺は死体から使えそうなアイテムと装備を回収した。死体から回収できたのは以下の物だ。
鉄の剣2本、ナイフ1本、木の杖1本、木の弓1本、革の鎧2個、革の帽子4個、革の手袋2個、靴2足、ポーション10個、毒消し草2個、エーテル1個、テント2個、140ゴールド
武器やアイテムは置いといて、冒険者の手持ちのゴールドが意外に少ない。これだけじゃダンジョン運用は赤字だな。もともとlv上げや転生ポイントが目的だから、黒字にするのは難しいのかな。イメージは商売というより、お金を出して狩場を作るって事だろう。だからダンジョンを運用する魔族が少ないのだろう。
俺達は完成した墓に死体全てを埋葬して合掌する。アイシンはこの行動を理解していないが、俺の真似をして同じく合掌した。
タルト
「後片付けも終わったし、回収した道具をどうするかだな。」
アイシン
「スラちゃん達にあげるのはどう?」
タルト
「戦力UPということでそれは考えているよ。でも冒険者達を屠るたびに道具を回収するだろ? すぐにアイテムがいっぱいになると思うんだよ。」
アイシン
「んー、私はいらないわよ。そこら辺の剣より爪の方がよく切れるしね。あと鎧とかもいらないわ。脆いくせに重いんだもん。」
そういってアイシンは右手の爪を伸ばし俺に見せつけ、左手でお腹をポンポンと叩く。
タルト
「だから、人間の村に1つお店を出そうかと思ってるんだ。」
アイシン
「人間の村に? 魔界でもいいんじゃない? わざわざ危険がある方に出店する意味あるの?」
タルト
「このままダンジョン運営してても赤字だから継続するのは難しいだろ? 人間の村に店舗を構えて資金調達と情報収集を兼ねてやってみようかと思うんだ。回収した道具を人間に売り、それを購入した人間がダンジョンへ来る。その人間を屠り、回収した道具を売る。このサイクルが出来ればスゲー儲かるんじゃないかって思ったのよ。」
アイシン
「なるほど! タルト頭いいー!!」
タルト
「だろ!」
俺はダンジョンのトラップを前回同様に仕掛け、持っているアイテムをダンジョンの最奥の部屋に置いた。一通りの作業が終了したので俺達は村人の服装に変更してルド村へ向かう事にした。俺はガチャでゲットした装備など試したかったけど、もう少し落ち着いてからにしよう。




