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【第二十一話】初陣⑤

【人間界:レンタルダンジョン最初の部屋】


俺は急いでダンジョンを進み、最初の部屋に到着した。中には発動したトラップと開けられた宝箱だけだった。どうやらここにはスラ達はいないようだ。一応落とし穴に落ちてないかの確認をする為、落とし穴に近づいていく。すると奥から足跡が聞こえてきた。


タルト

「え? 敵? ひぃ!」


俺は急いで隠れようとしたが隠れる場所がない。だからといって落とし穴に自ら入るのは愚の骨頂である。俺はとりあえずダンジョンの出口へ走ろうとした。


アイシン

「タルト!? スラちゃん達いた?」


タルト

「ア、アイシンか。びっくりした。死ぬかと思ったよ。」


アイシン

「何で死ぬ思いしてるのよ!? それよりスラちゃん達ここにはいないみたい。きっと二番目の部屋にいるんだわ。急いで向かうよ!」


タルト

「待てアイシン、冒険者が生きてる可能性が高いから気をつけて行動しろよぉって、もう行っちゃった。走るの早いなぁ。」


俺は突っ走っていったアイシンを追いかける為二番目の部屋を目指して走って行った。



【人間界:レンタルダンジョン二番目の部屋】


スラはロベルトの頭の高さまで飛び、そのまま剣で攻撃する。

ロベルトは左手に装備した盾でスラの攻撃を簡単に防ぐ。


ロベルト

「こんなもんかよ。 おらぁ!」


ロベルトはシールドバッシュでスラを吹き飛ばす。

その隙にイムがロベルトの足元まで接近し、左足に攻撃を仕掛けるがロベルトは見切っていた。


ロベルト

「見え見えなんだよっ!!」


狙われた左足を少し浮かし、イムの攻撃をかわす。浮いた左足を踏み込みにし、右手の剣でイムに突きを放つ。

攻撃をかわされたイムは、剣を振った勢いで体が周り、ロベルトに背を向けていた。


ライ

「うあああああっ!」


同じく足元に接近していたライがロベルトの突きに剣を当て、軌道を変えた。

ロベルトの突きはイムの右横にそれ、地面に突き差さる。


ロベルト

「ちぃっ!」


ロベルトはバックステップで後ろに下がる。


ロベルト

「雑魚のくせに連携が取れてんなお前ら。そこら辺のスライムとは違うようだな。」


ライ

「み、みんな大丈夫?」


イム

「ライ助かったよ。」


そこにシールドバッシュで飛ばされたスラも戻って来た。


スラ

「こやつ凄いパワーじゃ。それに戦い慣れておる。これは厳しい戦いになるでござる。」


ライ

「や、やっぱり逃げようよぅ!」


イム

「こうなっちゃった以上、逃げれないよ。たぶんあの冒険者に追いつかれちゃうよ。」


スラ

「ここは全員で一斉にやるでござる。」


ロベルト

「何話してんだこいつら? 作戦会議か? 早くかかってこいよー。」


ロベルトはスラ達に余裕を見せる。

スラ達は作戦通りロベルトを囲むように移動を開始する。

スラはロベルトの正面、イムは右側、ライは左側に移動した。


ロベルト

「ほぉ。少しは頭使うんだな。闇雲に突っ込んでこないだけ上出来だ。」


スラ

「余裕を見せるのも今のうちでござる。」


ロベルト

「おぉ! こりゃ驚いた! お前しゃべれるのか!? なら話は早ぇ。スライム共、お前らは駆け出しの冒険者にすら狩られる雑魚だ。何しようと俺には勝てんよ。せめて俺が楽しめるよう、命がけでかかってこい!」


スラ達

「うおおおおおおおおお!!!」


スラ達は一斉にロベルトに襲いかかった。スラはジャンプしてロベルトの頭を狙う。ライは剣を突き出して突進する。イムは右足を狙って斬りかかる。

ロベルトはニヤリと笑い、スラの攻撃を盾で防ぐ。

同時にライの突き出した剣を左足で踏みつけて動きを止め、イムの攻撃を自分の右足前の地面に剣を差して防いだ。


スラ

「全員の攻撃を防ぐ・・・・・・だとっ!?」


ロベルトは差した剣をそのままに右手を拳に変え、スラを殴り飛ばす。


スラ

「がはっ」


スラはそのまま部屋の壁まで吹っ飛び、壁に激突した。

ロベルトは剣を踏んづけた左足を軸にライに回し蹴りをくらわす。


ライ

「ぎゃっ」


ライはサッカーボールの用に蹴り飛ばされ、スラと同じく壁に激突した。

ロベルトは地面に差した剣を抜いてイム斬りかかる。イムは慌ててロベルトの攻撃を剣で受け止める。


ロベルト

「おら、お仲間さんはいなくなって一対一だぜ!」


ロベルトはイムに連続で斬りかかる。イムはロベルトの攻撃を防ぐのでいっぱいだった。ロベルトの攻撃は力が強く、剣を打ち合う度に剣が弾き飛ばされそうになる。


ロベルト

「防戦一方じゃねえか、これならどうだ!!」


ロベルトの会心の一撃がイムに襲い掛かる。イムは何とか剣で防ぐ。

しかしロベルトの攻撃が強く、イムの剣が弾き飛ばされた。


イム

「くっ、まずい!」


ロベルト

「おっと、動くな。


ロベルトの剣先がイムの顔に突きつけられる。


ロベルト

「勝負あったな。スライムにしちゃあ良くやった方だぜ。」


イムは突きつけられた剣を他所にスラとライを見る。スラは打撃と壁の衝突で気を失っている。ライはこちらに気づいて加勢ようとしているが、ダメージが大き過ぎて動けない様子だった。もう助太刀はない。イムは覚悟を決める。


イム

「これはお手上げだよ、僕たちに勝ち目はなさそうだ。見逃してくれって言っても、だめだよね?」


ロベルト

「わりいな、これは命のやり取りだ。命乞いは無駄だぜ。」


イム

「そっか。じゃあ、僕の仲間を見逃してほしいんだけど無理かな?」


ロベルト

「ふふ、こっちも仲間がやられてるんだ。それも無理なお願いだな。」


イム

「そっか。」


ロベルト

「お前ら、スライムにしちゃあ合格点だ。その辺の冒険者なら倒せるかもな。ただ相手が悪かったな。」


イム

「スラさん風に言うと、無念、かなぁ。」


ロベルト

「楽しめたぜ、あばよ。」


ロベルトは剣を振り上げ、イムに振り下ろす。

イムは目を瞑り、スラ達に心の中で謝る。


ヒュンッ!


ロベルトはいつもの感覚とは違う感覚に襲われる。魔物を切った感覚がない。何匹も狩っている魔物の感覚を間違えるはずがない。その代わり、かすかに剣を持った手に振動を感じた。

ロベルトは斬ったはずのイムを見る。


ロベルト

「無傷!?」


ロベルトは無傷のイムを見て驚いたが、すぐそばに一人の少女が立っていることに気づく。

その少女は何かを殴った後の姿勢だった。ロベルトは危機感を感じ、一歩下がる。


ロベルト

「な、何だ貴様は!?」


アイシン

「あんた、なにしてんの?」


アイシンはゆっくりと姿勢を直し、ロベルトに正面を向けた。ロベルトは剣をアイシンに突きつけようとしたが、剣が異常に軽かった。ロベルトが徐に剣を見ると、剣が折れていた。

ロベルトはまさかと思い、先ほど突き出していた拳の先の壁を見る。壁には折れた剣が突き差さっていた。ロベルトの背筋が凍る。


ロベルト

「お、お前か・・・・・? け、剣を折ったのは!?」


アイシンは振り下ろすロベルトの剣をピンポイントでヒットさせ、剣を殴り折ったのだ。


ロベルト

「ば、化け物め!?」


ロベルトは恐怖のあまり全身が震えだす。


アイシン

「化け物? それが最後の言葉?」


アイシンはロベルトの前に飛び込む。ロベルトは早すぎて反応できない。

そのままロベルトの左頬を殴る。


ロベルト

「ブベラッ!」


ロベルトの首が曲がってはいけない方向に曲がった。アイシンはそのまま左の拳でロベルトの顎を殴り上げる。吹っ飛ばされたロベルトは天井に突き差さり、死体となった体は落ちてこなかった。

ちょうど二番目の部屋に入った俺は、アイシンの鬼神っぷりを見て驚いていた。


タルト

「や、やったのか?」


アイシンは今にも泣き出しそうな顔で俺に走ってきた。


アイシン

「スラちゃん達がやばいの!! 早く助けなきゃ!」


俺は泣きそうなアイシンに落ち着くよう頭をポンポンと叩き、転がっているスラ達を回収する。


タルト

「よし、アイシン! このまま魔界に行って治療するぞ!」


アイシン

「わかった! タルトつかまって!」


アイシンは俺の手を取るとすぐに詠唱を始め、転移魔法を唱えた。

魔界に着いた俺達はすぐに魔界の病院らしきところへ走り、スラ達の治療をお願いした。

スラ達の治療を待つ為、俺達は治療室の近くの椅子に座っていた。

治療を終えた医師の話だと、命に別状はなく、二、三日で良くなるそうだ。

アイシンは落ち着いた様で、椅子に座りながら俺に寄りかかって寝ていた。


俺も気疲れしたようで、天井を眺めながらため息をつく。


しかし、アイシンの強さは桁違いだよなぁ。

チートだよ!チート!

レベルが低いのに基本ステータスが高すぎだよマジで。

アイシン一人で冒険者を屠れるよね。

でもそれじゃ転生ポイントが貰えなくなっちゃうから、あまり活躍してほしくないな。

さて、落ち着いたらダンジョンの手直しと、獲得した転生ポイントで何ができるのか調べなきゃな。


俺は次にやることを決めた。アイシンを起こすのも悪いので、俺もそのままの状態で寝た。


アイシンの格闘を見ている時、背中に薄っすらと鬼が見えたのは秘密にしておこう。

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