【第二十話】初陣④
【人間界:レンタルダンジョン二番目の部屋】
冒険者のロベルトが二番目の部屋に到着し、部屋一面を隅々まで見渡した。
前回の部屋でのトラップがあるので、細心の注意を払って進むことにしていた。
ロベルトは中央に置いてある宝箱を発見するが、すぐに駈け寄らず辺りを警戒する。
今度はアイテム袋から松明を取り出し、それに火をつけ宝箱より先の、部屋の奥へと投げ込んだ。
暗くて奥まで見えなかったのでこれでしっかり確認する為だった。
投げた松明が奥の壁まで照らすと一匹の魔物を発見した。
見つけた魔物はアンデッドで、戦闘力は弱い。
ロベルト一人でも難なく退治できる。
しかし先ほどの部屋と同じで、罠の可能性も高い。
そう考えたロベルトはアイテム袋から別の装備を取り出し、装備を切り替える。
取り出した装備は木のショートボウと木の矢だった。
矢は鉄の矢じりにその辺に生息している鳥の羽を付けた木の矢だ。
これで隅にいる魔物にヒットさせ、こちらに誘い込んでから戦う事にした。
ロベルトはショートボウに矢をセットし、狙いを定めアンデッドに放つ。
シュッ!
放たれた矢は見事アンデッドに命中し、アンデッドはロベルトの存在に気付いた。
そしてそのままロベルトの方へ移動を開始した。
ロベルトは小声でよし!と言い、装備を弓から剣と盾に切り替え、アンデッドが近づくまでじっと構える。
アンデッドは一直線にロベルトの方へ向かっていき、宝箱の横を通りすぎる時一つの罠が発動した。
ガシャンッ!
なんと召喚したアンデッドが宝箱横のトラバサミに引っかかってしまったのだ。
アンデッドは身動きが出来なくなりその場で剣をブンッブンッと振っている。
ロベルトは魔物の自滅が予想外で、思わず小声でラッキーと言う。
そのままアンデッドの様子を見ていると、次の罠が発動した。
[トラップ発動:2hit]
トラバサミで動けなくなったアンデッドにトラップの飛矢が放たれた。
アンデッドは身動きができない状態だったので、もちろんアンデッドにヒットした。
そしてアンデッドはそのまま崩れ去り、消えていった。
ロベルト
「すげえラッキーだ。勝手に自滅しだけじゃなく罠まで発動させてくれるとはな。」
ロベルトは一歩一歩ゆっくり歩きだし宝箱へ向かう。
ロベルトは宝箱正面から開けるのではなく、トラップで自滅した所に行き、横から宝箱を開けようとした。
もちろんそこはアンデッドが勝手に自滅した場所でトラップも発動済みなので大丈夫だと確信している。
ロベルトは周りを警戒しながら宝箱を開けた。
ロベルト
「こ・・・・・・これは!?」
ロベルトは中に入っていた宝を取り出す。
入っていた宝は、何か指輪の様な形を大きくした物だった。
このサイズだと指に装備するには大きすぎるので、これを装備するのなら首だろう。
男では無理だが、細い女性なら腰とかにも装備ができそうだ。
この不明な物には大きな造花がいくつもあり、色様々で綺麗だった。
ロベルトはその不明な物を首に装備してみたが、いくつもの造花が顎にすりすりした。
首を振ったり顔を左右に動かしてみるが、造花がどうしてもうざったい。
ロベルト
「があ、くすぐってえ! なんだこれは!? 首輪じゃなさそうだ。」
そう言うとロベルトは首から不明な物を右手で外し、色んな角度から見つめ直した。
どこかで見たことがあるようだが思い出せない。少し時間が経過した後、ロベルトは「あっ!」と何かを思い出した。
もしかしたらあれかと、不安をよそにこの不明な物を頭に装備する。
少し窮屈ではあったが頭にフィットする。
ロベルトの不安は的中した。
ロベルト
「カ・・・・・・カチューシャだと!!」
おっさんが可愛いカチューシャを付けた姿はとても見苦しかった。
その姿を自分自身が想像をしてしまい、しばしフリーズした。
しかしロベルトは落ち込んではいない。なぜなら、前回宝箱の武器が非常に良い装備だったので、これもすごい効果があるかもしれないと思ったからだ。
ロベルトはアイテム袋から鑑定アイテムを取り出し、このカチューシャを鑑定する。
鑑定結果:お手製のカチューシャ
特殊能力:可愛さ増加(小)
ロベルト
「騙されたああああ!!くそがあああああああ!!」
ロベルトは装備していたカチューシャをすぐに外し、床に投げ捨てる。
しかしカチューシャは壊れなかった。意外に頑丈の様だ。
ロベルトはこんな物を宝箱に入れた魔物を恨み、必ず仕返しをすることを決意した。
そうしているうちに最初の部屋で冒険者を一人始末したスラ達がこの部屋に入ってきた。
どうやらスラ達は冒険者を始末した後、そのまま二番目の部屋に移動してきたのだ。
宝箱の横で怒ってるロベルトを見つけたスラ達は、すぐに戦闘態勢になるようにライとイムに指示を出した。
スラ
「一人いるでござる。まだこちらに気付いておらん。すぐに戦闘準備じゃ。このまま一気に行くぞ!」
ライ
「えっ? すぐに戦うの? こ、心の準備が・・・・・・」
イム
「こいつ罠にかかってないね。たぶん近づいている途中で気付かれると思うから、不意打ちとかは不可能だね。」
スラ
「上等でござる! 今こそわれらの強さを示す時でござる!」
スラ達は一斉にロベルトの方へ向かって行った。
スラを先頭にし、その左右にライとイムが続く。
ロベルトは近づいてくる魔物達の気配を感じ、剣と盾を装備し戦闘態勢を取った。
ロベルト
「む! 魔物か!! あれ? なんだスライムじゃねえか。脅かしやがって。」
スラ
「やはりすぐに気付かれた! ライ、イム! このままいくぞ!」
ロベルト
「おーおー!スライムのくせにやる気満々じゃねえか! やってやらぁ! かかってこい!!」
一直線に向かってくるスラ達に対し、ロベルトは少し腰を落とし左手に装備した盾を構えた。
そして右手の剣は反撃の突きができる様にした。
スラがロベルトに接近すると、その勢いでそのままジャンプし、ロベルト目掛けて斬撃を放った!
スラ
「我が一撃、食らうがよい!!」
【人間界:レンタルダンジョン最奥の部屋】
アイシン
「ただいま~! カチューシャが見つからなくて時間がかかっちゃった。結局新しいカチューシャで来ちゃった。これはあまり汚したくないのよねぇってあれ、スラちゃん達がいないよ?」
やっと着替えから戻ってきたアイシンは、スラ達がいない事に気付いた。
どっか隠れていないか部屋内を一周して確認したが見つからない。
アイシン
「おかしいなぁ、どこにもいないわ。どこに行っちゃったんだろう? ここで冒険者が来るまで待機する事になってるし。あっ! まさかスラちゃん達に何かあったのかも! どうしようどうしよう!? 兎に角急いでタルトに連絡しなくちゃ!!」
アイシンは急いでタルトに連絡をする。
アイシン
「あ、もしもしタルト? 今スラちゃん達がいないの。何かスラちゃん達から連絡はなかった?」
アイシンからの連絡の内容が予定外だったので、俺は少し驚いた。
タルト
「え? なんで? あいつら部屋にいないの?」
アイシン
「うん、そうなの。今部屋に戻って来たらいないの!」
タルト
「何してんだスライム達は!? ん? てかアイシン、今まで部屋から離れていたのか!?」
俺は待機すべき部屋にアイシンがいなかった事を知って少し腹を立てた。
アイシン
「え? 離れてないよ。今部屋に戻って来たんだもん!」
タルト
「え? 何? 今までずっと部屋にいなかったの?」
アイシン
「え? そうだよ。今戻ったって言ったじゃん!」
タルト
「え? 着替える為に離れるって言って結構時間が経過してるぞ? この時間までずっと向こうにいたのか!?」
アイシン
「え? そうだよ、今部屋に戻ったって言ったでしょ?」
タルト
「え? ちょっちょっちょっと! 着替えだけに時間かかりすぎじゃね?」
アイシン
「え? 乙女は準備に時間がかかるんです!! それくらい常識でしょ!!」
タルト
「え? 常識じゃないでしょ! 乙女の準備に時間かかるのはデートとかそういった時じゃね? 今このタイミングで時間をかける方が非常識でしょ!?」
俺とアイシンの「え?」の応酬が激化していくが、そのまま継続しても話が進まなかったので話を本題に戻した。
タルト
「わかった、とりあえずアイシンはそこの部屋から移動して、スラ達を探しに行ってくれないか? 俺もダンジョンに入って探してみるよ。」
アイシン
「わかったわ、急いで探してくる!」
アイシンは連絡を切り、まず最初の部屋へ向かう事にした。
俺も岩陰から姿を出し、そのままダンジョンの入り口へと向かって行った。




