【第十九話】初陣③
【人間界:レンタルダンジョン最奥の部屋】
最奥の部屋で待機していたスラ達は、爆発音がしたのを聞き、タルト様が言っていた通りに事が進んでいると理解した。
しかしスラ達は少しも落ち着かない。
落ち着くと言うか、焦りを見せていた。
スラ
「どうやら、タルト様の謀がうまくいっておるようじゃ」
ライ
「よ、よかったね!予定では次の部屋で残りの冒険者を始末するんだよね?」
イム
「ライ、予定は未定だよ~。想定外も、あるかもよ~!」
ライ
「そ、そうなの?」
イム
「ライ、俺たちは何故雇われたんだ? 考えてごらん。冒険者を屠るためだよ~。
もし不足の事態が起きた時、残った冒険者は俺たちでやっつけなくちゃダメなんだよ」
ライ
「そ、そうかぁ。戦わなくてもいいように、うまくいってほしいなぁ」
スラ
「何を戯れ言を!戦って名を轟かすと決めたではないか! うまくいっては我々が困る!
何時やるの!? 今でしょ!!」
スラはどや顔でライ達を見つめた。
ライ達は侍の話し方を止めてまでそのフレーズを言ったスラに違和感を感じたが、スルーする。
ライ
「名を轟かすのもそうだけど、戦わないでお給料を貰うのがねぇ、気が引けるんだよ。
俺はスラさんについていくよ」
ライ
「え? それは不味いよぅ。一度タルト様に連絡してから行動しないと」
イム
「しっかり仕事するだけだよ。冒険者を倒せば問題ないって!」
散々スルーされているスラが話を割ってきた。
スラ
「拙者の言葉にもっと反応して頂きたい。スルーは参るでござる。もう一度言うでござる。
何時やるの? 今でしょ!」
イム
「スラさんうざいです。とにかく残りの冒険者をやりにいくよ!」
スラ
「ボケに対しての扱いが雑でござるよ。
もっとしっかり拾ってほしいでござる」
スラ達は残りの冒険者を倒すため、移動を開始する。
まずは最初の部屋に行き、冒険者の死体の数を確認することにした。戦闘を少しでも優位に進める為相手の人数を把握ておきたいのと、罠にかかった冒険者が生きていれば止めを刺し、回復されて戦闘に合流される事がないようにする為だ。細い通路を先頭はスラ、続いてライイムの順番で進んでいく。通路で生き残りの冒険者に出くわさないよう慎重に移動する。通路で出くわした際、通路が狭いので1対1の戦闘となり、スラ達はかなりの不利となる。1匹の戦闘能力はそれほど高くはないが、スラ達には連携がある。それを生かす為には通路での戦闘を避けたいのだ。最初の部屋に近づくにつれて生き残りの冒険者の声が聞こえてきた。スラ達は情報収集の為、冒険者の声を聞くことにした。
ロベルト
「おい、どうするよこの後。さすがに冒険続行は無理だよな。」
キャスは部屋の壁に寄りかかって座っているが放心状態で返答がなかった。嘔吐も止まったようだが魂の抜け殻の様になっていた。
ロベルト
「とりあえず一度戻って冒険者組合に報告しよう。ここのダンジョンは非常にやばい。魔物は強くはなさそうだがトラップが巧妙に仕掛けられている。この先もどんなトラップがあるかわからん。まずはあいつらの遺留品を回収しよう。」
ロベルトは遺留品を回収しようとしたが、落とし穴に落ちた2人の遺留品は諦めた。間違って落ちたら自分まで死ぬ可能性があった。なので焼死したジョーの遺留品だけ回収し始めた。ジョーの遺体はこんがり焼けており、装備や道具は全て炭になっていた。その中で一つだけネックレスが無事だったようだ。ロベルトは焼死したジョーのネックレスを外し回収した。その時ロベルトは宝箱に目線が行き、ついでにこの宝箱だけ回収しようと思い、宝箱を開けてみた。中には1本の剣が入っていたので手に取って確認する。
ロベルト
「お、おい! この武器ってあれか!? あれなのか!? ま、まさかこんな武器がこの村近くのダンジョンで手に入るのか!?」
ロベルトは想像を遥かに超えた武器を前に、手が震えだした。自分の認識が間違ってないか武器鑑定の道具を取り出し、手にした武器の鑑定を始める。暫く鑑定結果が出るのを待つ。
鑑定結果:ファルシオン
特殊能力:装備者の魔力増加(大)
ロベルト
「や、やっぱりか!! マジか!? マジなのか!? うそだろ!? これは夢か!? 幻か!?」
ロベルトのテンションはどんどん上がっていく。
ロベルト
「よっしゃああああ! どの冒険者も憧れるあの有名なファルシオンだぞ! しかも付与されている能力が半端ねぇぞ!! ま、まてよ。これうっぱらったらいくらになるんだ・・・・・・。」
ロベルトは生唾の飲み込み、しばらく考えた。
この先にある宝はもっとすごい物があるに違いない。このまま戻って冒険者組合に報告したら、別の冒険者に取られるのは確実。これは人生最大のチャンスかもしれない。ここで戻ったら一生後悔するぞ。
ロベルトはこの先の宝の期待感に欲を駆られ、そのまま先に進む事を決意した。しかしキャスは未だに放心状態で使い物にならない。呼びかけても全く反応がない。さすがに1人は非常に危険だ。だが見つけた宝は独り占めできる。これもチャンスだと思ったロベルトは放心状態のキャスを放置して先に進むことにした。
スラ
「冒険者一人先に進んできよったぞ。一回戻るぞい。」
ライ
「や、やばいよぅ。早く戻らないと見つかっちゃうよぅ。」
スラ達は冒険者1人進んできたので見つからない距離まで戻り、様子を伺う。冒険者は分かれ道を左に曲がって行った。その先はもう一つのトラップ部屋で、スラ達がいない通路だ。冒険者の姿が見えなくなったのを確認したスラ達は最初の部屋に進んでいく。部屋に到着したスラ達は生き残りの冒険者がいないか部屋を覗き込む。発動した落とし穴が2つ、宝箱前で炭になっている何かを見てスラはトラップは成功したと確信する。しかし奥に冒険者が1人壁に寄りかかって座っているのに気付いた。
スラ
「1人いるな。休んでいる様子だが近づいてもすぐ見つかって戦闘になるでござる。」
イム
「相手は独りで座っているんだろ? ダッシュで近づいて戦闘態勢になる前にやっちゃえばいいんじゃない?」
スラ
「それは名案でござる。では拙者が先頭で参るぞ!」
スラ達は武器を構えて一斉に襲い掛かる。座っている冒険者との距離があるので不意打ちまではいかないがうまくいけば戦闘前に一撃浴びせられる可能性がある。そうなれば戦闘が楽になる。
スラは武器を構えて近づいていく。しかし冒険者は何一つ反応しない。そのまま部屋の半分まで突き進んだが冒険者はピクリともしない。この異様にスラ達は冒険者まであと一歩のところで足を止め、冒険者を見つめる。冒険者は未だ反応がない。
スラ
「ふむぅ、こやつ寝てるでござるか?」
ライ
「き、気絶してるのかなぁ?」
イム
「んー何だろう、呼吸はしてるから死んではいないね。」
スラ
「まあ、とりあえず生きてる様なので一斉に斬りかかるでござる。せえのっ!!」
スラ達は放心状態の冒険者に斬りかかる。スラの一撃は喉を斬り、ライの一撃は心臓を突き、イムの一撃は左足を切断した。座っている冒険者はそのまま床に倒れ、死亡した。




