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【第十六話】ダンジョン運用準備③

【魔族界:フォローワーク】


一晩アイシンのお城に泊めてもらった俺は

昨日募集を出した求人に応募があるか確認する為、

アイシンと一緒にフォローワークへ向かった。

募集がたくさん来ていたらどうしよう。

なるべく屈強なモンスターを採用しよう。

冒険者を倒すのが目的ではなく、

アイシンの逃げる時間を稼ぐ保険みたいな物だし。


案内人

「いらっしゃい! おや、昨日のお客さんやない。

 ちょうどよかった。応募が来てるよ」


タルト

「本当ですか? それは助かります。

 応募の内容を教えてもらえますか?」


案内人は応募の紙を俺に渡した。

しかし渡された紙は1枚のみだった。

少しがっかりしたものの、

応募があっただけマシだろうと思い、

早速内容を確認する。


----------〈応募内容〉----------

名前:スラ

種族:スライム

年齢:10歳

経験:未経験

動機:この強さを天下に轟かせたいから。

希望:週3日勤務希望

その他:友人と一緒に働きたい。

--------------------------------


ふむ。正直微妙・・・・・・

でも友人と一緒に働きたいとのことだから、

数名確保できるだろう。一度会って

話をしてみる事にしよう。


タルト

「すいません、スラさんは今どこにいますか?」


案内人

「今ここに来てるよ。ほら、そこに座ってる奴がそうさ」


俺は案内人が指さす方を見た。

確かにスライムが3匹いる。友人は2匹いるのか。

これで3匹確保できるな。

よっぽどの性格破綻者ではない限り採用しよう。

てか、ほかに選択肢はないようだし。

俺は椅子に座るスライムの所へ行き、自己紹介をした。


タルト

「すいません、スラさんでお間違いないですか?

 私は募集主のタルトと申します」


スラ

「いかにも!拙者は天下のスライム、スラと申す」


なんだこいつ、侍気取りか。


タルト

「今回ご応募していただき、誠にありがとうございます。

 いくつかお伺いしたいことがありますがよろしいでしょうか」


スラ

「拙者の実力を疑っているようですな。はっはっは。

 百聞は一見に如かずと言います。

 どれ、実力をお見せしよう」


特に頼んでもいないが、スラというスライムは

自分の実力を見せつける為、何か準備を始めた。

テーブルの上にみかん程の大きさの果物を置いて、

それを・・・・・・・バアアアアン!

木の棒でぶっ叩いた。

しかし、それだけであった。


スラ

「ハァハァ、どうですかな? この素早い剣技!

 力強い太刀裁き!芸術ですらある!」


正直、微妙・・・・・・

子供のチャンバラレベルだった。


木の棒で飛ばされた果物は、部屋の壁まで

飛んでおらず、飛距離が3メートルくらいだった。

叩かれた果物は少しだけ割れ、果汁がほんの数滴垂れただけだ。

これは酷い。俺でもできるよこんなの。

愕然としている中、もう1匹のスライムが話かけてきた。


ライ

「ちょ、ちょっと、タルトさんが驚いてるよ!

 も、もう少し手加減しないとダメじゃないの?」


いや、ひどすぎて驚いているだけですが。


スラ

「はっはっは! いいんじゃこれくらいで!

 実力を見て頂くには手っ取り早い!」


ライ

「で、でもぉ~」


イム

「まあ、これで俺達の実力は証明されたようなもんだ!

 採用間違いなしだぜ!!」


何を根拠に言っているんだこのスライム共。

今すぐこいつらを踏みつぶして応募がなかったことにしたい。


ライ

「あ、申し遅れました。私はライと言います。

 よ、よろしくお願いします」


イム

「俺はイムと言う。実力はスラよりちょっと上かな?

 まあ、よろしく頼むよボス!」


こいつら採用されたかの様に話を進めている。

スラは侍気取りの雑魚モンスター。一応この3匹のリーダーの様だ。

ライは丁寧ではあるが、少しおどおどしている。臆病な性格なのか?

イムは調子がいい。お調子者というやつか。


スラ

「お前ら、新しいボスの前であれをやるぞ!」


ライ

「え? あ、あれを、こ、ここでやるの??」


イム

「ライ、こういうのは恥ずかしがったら負けだぜ?」


ライ

「わ、わかったよぅ。ちゃんとやるよぉ」


このスライム3匹は位置取りを始めた。

真ん中にスラ、その横にライとイム移動した。

何かを始める様だ。


スラ

「われらこそ!泣く子も黙るスライム決死隊、Azure Knights!」


ライ

「己の正義を貫くためなら悪にもなる!」

 いかなる手段を使ってでも勝って見せる!」


イム

「卑怯? 卑劣? 負けた時点で全てが言い訳!」

 敗北者の言葉は意味を持たない。言葉は勝者のみが許される!」


スラ

「手に入れたい物があれば己の腕で奪い取れ!

 そう、ねだるな!勝ち取れ!」


ライ

「たとえ負けるとわかっていても立ち向かう時もある!

 己の信念を貫き通す為なら命もいとわない!」


イム

「引かぬ!」


スラ

「媚びぬ!」


ライ

「省みぬ!」


イム

「全ては強さで証明し、強さで勝ち取る!

 己の強さを信じて戦いつくせ!」


スラ

「力こそ正義!」


ライ

「力こそ純潔!」


イム

「力こそ真実!」


スラ・ライ・イム

「いざ、尋常に勝負!」


スラ

「ちなみに、私の戦闘力は530000です」


うぁぁ、だせえええ・・・・・・。

何一つ決まってねえええ・・・・・・・。


変な物を見せられた俺は絶望しか感じなかった。

しかし、アイシンの目はキラキラ輝いていた。


アイシン

「まあ! この子達可愛い!!

 ねえタルト、この子達雇おうよ!」


タルト

「マジ言ってるんですかアイシンさん?

 こいつら足手纏いでしかないよ」


アイシン

「たしか、ほしい物は力で奪えだっけ?

 ねえ、タルト。力で勝負しよっか?」


タルト

「あ、いえ、わかりました。雇います」


俺はアイシンの脅迫により、このスライム3匹を

雇うことになった。直接的な戦闘力は

期待できないが、雑用などで使おうと考えた。

雑用だけで考えるならすごく高い出費だが、

アイシンの暴力を避けれると考えれば、非常に安いものだ。


タルト

「で、ではよろしくお願いします。えと、

 スラさん、ライさん、イムさん」


スラ

「ボス、拙者はスラとお呼び下さい。こいつらも

 呼び捨てで呼んで頂きたい。」


タルト

「わかりました。では皆さん、改めてよろしくお願いします」


こうして簡単な挨拶を終え、次に向かったのは

宝箱に入れる品物が売っているお店だ。

安いものだと冒険者の期待値を下げてしまい、

途中で引き返す可能性が出てきてしまう。

どうせ全滅させれば死体から回収できるので

ここはケチらないで奮発しよう。


店員

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」


タルト

「高価な装備かアイテムはありますか?」


店員

「そうですねぇ、それでしたらこれならいかがでしょう?」


店員が差し出したものは剣だった。

その剣は宝石がちりばめられており、

切れ味もすごくよさそうだった。

これが宝箱にあればだれでも最奥の宝に期待するだろう。


タルト

「この剣はなんですか?」


店員

「この剣はファルシオンと言います。

 しかしこの剣は特別仕様で、宝石なども埋め込まれており

 魔力を高める効果もあります」


タルト

「はぁ、もしこれを人間が見つけたら欲しがりますか?」


店員

「そうですねぇ、だいぶレベルの高い冒険者が

 まれに装備している武器になります。

 しかもそれが魔力を高める能力が付与されている品なので

 客観的に見ても、ほとんどの冒険者は欲しがると思います」


タルト

「なるほど、ではこれはいくらですか?」


店員

「5,000ゴールドになります」


タルト

「では買います」


とりあえず店員の言った事を鵜呑みにし、

価値あるものだと思い込んだ俺は

即決で購入した。

これで必要な物は揃ったので一度ダンジョンへ向うことにした。


【人間界:レンタルダンジョン】


俺はアイシンとスライム3匹を連れ、

ダンジョンへ戻ってきた。

まずスライム達には今回の仕事の説明をした。

次にトラップに引っかからないように

仕掛けた場所を説明をした。

こうして全員と段取りの打ち合わせを行い、

ダンジョンの準備は全て完了した。

さて、最後の仕事が残っている。

そう、ダンジョンの宣伝活動だ。

準備万全であっても、乗り込んでくる冒険者が

いなければ全く意味がない。

しかし、どうやって宣伝を行えばよいのだろう。

魔族が人間界の村へ行って、ダンジョン作ったよーと

公言しても信じないだろう。

人間に発見してもらわないと意味がない。

色々悩んでいるとアイシンが一つ提案をしてきた。


アイシン

「タルト、ここにダンジョンがある事を

 知らせればいいんだよね?」


タルト

「うむ、その知らせる方法が問題なんだよなぁ」


アイシン

「だったら、私たちじゃなくて人間に宣伝させればいいんじゃない?」


タルト

「それはそうだけど、どうやってそれを行うんだよ?

 人間でも拉致して脅すか? 村に着いた瞬間

 助けを求めて逃げるんじゃねえか?」


アイシン

「いや、暁亭にいたとき、下僕にした人間が2人いるじゃない?

 その子たちを使って宣伝すればいいんじゃない?」


なるほど。アイシン、今日はさえている!

早速その下僕と連絡を取り、宣伝活動をしてもらおう。

俺は下僕二人に手紙を送った。

人間界では、手紙は送れても電話はできないのだ。

すぐに連絡が取れるのか心配だったが、

手紙を送って数分で返事が来た。

早速村から出て数分の所を待ち合わせ場所にし、

下僕たちと会うことにした。


タルト

「やあ、元気だったか?」


下僕1

「な、なんですかこんなところに呼び出して?

 なにが目的なんですか?」


タルト

「まあまあ、そんな警戒しないでよ。1つだけ

 お願いしたいことがあるだけだよ」


下僕2

「やばい事はやめてくださいね」


タルト

「この前、ダンジョンを見つけたんだよ。

 そこにいる魔物の話を聞いていたんだけど

 すごい宝を隠しているらしんだ。

 そこで君たちに、このことを冒険者組合や

 村中に広めてほしいんだよ。

 どうしてもそのすごいお宝って物が

 何なのか知りたくてね!」


下僕1

「そんなこと自分でやってくださいよ!」


タルト

「え? なんだって? 歯向かうの?」


下僕1

「あ、いえ、わかりました。やらせていただきます」


タルト

「あと一つお願いがあるんだけど・・・・・・」


こうしてタルトは下僕達に宣伝活動をやるように命令した。

もう一つのお願いはまた後で説明しよう。

まずは明日冒険者が来てくれることを祈るしかない。

俺とアイシン、あとスライムたちはダンジョンへ戻り、

ダンジョン内で一泊することにした。

明日はダンジョンのオープンとなる。

遠足に行く子供の様にドキドキして寝付くことができなかった。

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