【第十三話】目標達成!
【人間界:ルド村暁亭三階部屋】
仕事を終えた俺たちは宿泊している部屋へ戻る。
今日で30日間の仕事は終了した。
この30日間に色々な出来事があった。
まず夜中の襲撃が全部で14件、
うち2件がスタッフからの夜襲であった。
さすがに働く仲間を殺すのは不味いので
フルボッコにした後、徹底的に脅し、
従順な下僕に仕立てあげた。
外部の人間は全て殺し、
夜な夜な証拠隠滅に勤しんだ。
そして暁亭に新メニューが色々と新登場した。
その中でも酷いメニューは
《アイシンコーヒー》《あ~ん!仁豆腐》だ。
アイシンコーヒーは熱々のコーヒーを
アイシンがふーふーしてくれるというもの。
アイシンがアイシングするという
親父ギャグからきたメニューである。
あ~ん!仁豆腐は説明するまでもない。
ただこのメニューはべらぼうに高く、
この村人の平均月収の値段なのだ。
それでも注文が後をたたなかった。
最初はアイシンも楽しんでやっていたが、
最後の方は手を抜きまくっており、
ただのコーヒーをそのまま出し、
「ふーふーしておきました」と一言。
後々聞いた話では、そのメニューを頼みすぎて
破産した者が多数いたとか。
ここまでくるとぼったくりバーである。
しかしそのお陰で臨時ボーナスをたくさんもらい、
貯まったお金は12,000ゴールドだった。
最後にアイシンへの貢ぎ物だ。
高価な服やアイテムから現金、
使用済みパンツや焦げまくった手作り弁当など
様々であった。
アイシン
「よし、荷物の整理完了!
タルトはどう?」
タルト
「俺は荷物少ないからもう終わってるよ。
お前、だいぶ荷物あるな」
アイシン
「そお? 全部貰い物だよ?」
タルト
「あぁ、なるほど。たくさん貰っていたもんな。
それ全部持って行くのか?
登山家の荷物みたいになってるぞ」
アイシン
「まさか。一度魔族界に持って帰って家に置くよ。
明日戻るでしょ? ダンジョン借りに」
タルト
「そうだな。予定より多く金が手に入ったから
色々見てまわろうかと思ってるよ。
お前も一緒に行くか?」
アイシン
「わ、私は他に行くところあるから
別行動にしよっか!
終わったら連絡するってことで!
さ、次は部屋の片付けをしましょう!」
珍しいな、何をするにも金魚の糞みたいに
くっついてくるのにな。
何か重要な事があるのか。
まあいい、一人の方が動きやすい。
俺も荷物の整理が終わり、
アイシンと一緒に部屋の片付けに取りかかる。
話のネタは常に一緒にいるので特にはなかったが、
無言のままでも何か寂しいと思った俺は、
この異世界で少し気になっていた質問を
アイシンにしてみた。
タルト
「なあ、魔王様っているのか?」
アイシン
「あぁ、魔王様の事も覚えてないんだ」
あぁそうか、俺は記憶喪失って設定だった。
アイシン
「魔王様はいるよ。今の魔王様は
ここ最近変わったのよ。
魔王様は強さが求められるから、
魔族で一番強ければ誰でもなれるんだよ!!
しかも魔王様、私たちと同じで特異体質なんだよ!
すごいでしょ!?」
やっぱり魔王とかいるのか。
そういうところはゲームみたいだな。
タルト
「へぇ~、それで?」
アイシン
「あんまり驚かないのね。
今の魔王様に交代する前、特異体質は
差別されてたの。人間の呪いを受けた子と言うことで
殺されたりする事もあったらしいよ。
私はパパの後ろ楯があったから大丈夫だったけどね。
そこに今の魔王様が圧倒的な力を見せつけ、
魔族のナンバーワンになったの。
その強さは歴代一位と言われてるわ」
タルト
「強いんだな、魔王様」
アイシン
「先代の魔王様を数秒で倒しちゃったのよ!
パパも先代の魔王様と互角くらいの実力らしいから
パパでも勝てないわね!
それで特異体質には秘めたる力があるという
噂がどこからか流れ始め、今では特別な存在として
将来を期待されるほどにもなったわ。
今の魔王様のお陰ね。
私も動きやすくなったしね!」
タルト
「ふぅん、特別な存在ねぇ。
じゃあお前も魔族界で期待されているのか?」
アイシン
「えへん! こう見えても期待度
ナンバーワンなのですよ私は!
ドラゴン種の特異体質は私だけですから!」
タルト
「ヘースゴイネ。それで特異体質って他にいるのか?」
アイシン
「一応いるよ。記録上では私を含めて五種だったかな?
ドラゴン種の私、悪魔種、妖精種、霊獣種、
あとスライム種だよ」
うぁ、スライム種にも特異体質いるのかよ。
そいつとは会いたくないな、マジで。
タルト
「あれ? その中に魔王様は含まれてるの?」
アイシン
「魔王様は記録上にはないみたい。
あまりそういった物は公開されてないみたい」
タルト
「そうなんだ。アイシンはその特異体質の中に
友達とかいるの?」
アイシン
「んー、霊獣種の子とは昔から仲良かったよ」
ほう、一応友達はいるのか。
でもアイシンの友達については
掘り下げなくてもいいか。興味ないし。
この世界には魔王という存在がいるのなら
もちろん勇者もいるだろう。
タルト
「あとさ、人間界に勇者とかいるの?」
アイシンは動きを止めた。
そして真剣な顔で振り向いた。
アイシン
「タルト、勇者について何か知ってるの?」
質問に対して質問で返ってきた。
ちゃんと質問には答えてください!
あまり変な事言えるような感じでもないから
ここは誤魔化しながら探りを入れよう。
タルト
「なんか人間達が勇者がどうのこうのって
言っていたような気がしたので聞いてみたんだ」
アイシン
「勇者はね、最強の人間が手に入れる称号で、
うちの魔王様と同じ、強さで選ばれるらしいよ。
ここだけの話、勇者に会ったらまず逃げろって
魔王幹部会での決まりなの」
タルト
「なんで? 倒しちゃえばいいんじゃない?」
アイシン
「倒せないらしいよ、今の魔族じゃ。
魔王様と幹部達全員で相手しても倒せないって
結論がでたそうよ」
タルト
「え? 今の魔王様は歴代一位でしょ?」
アイシン
「その魔王様が逃げろって言ったのよ。
今回の勇者はやばいらしいね」
タルト
「じゃあ、どうしろっていうんだ?
逃げていたらじり貧だろ?
何か対策打たなきゃやられっぱなしだろ」
アイシン
「まあ、勇者の寿命が尽きるのを待つ作戦ね。
人間は寿命が短いからね」
あぁ、なるほど。魔王もバカではなさそうだ。
でもそんなに勇者は強いのか。
アイシンは表情を戻し、片付けの続きに入る。
そして少し嬉しそうな口調て話しかけてくる。
アイシン
「それで私の友達の霊獣種の子なんだけど、
名前が凰華っていうの!それで凰華って
すごく髪がさらさらしてるの!」
そうですか、その話は興味ありません。
アイシン
「そしてね!私と一緒で甘い物が好きで
一緒にスイーツ巡りをするのが趣味なの~!!」
どうでもいい情報ありがとう。
アイシン
「最近会ってないから今度会う約束でもして
スイーツ巡りしようかしら!!」
かってに巡ってください。
タルト
「さて、無駄話もここまでにして寝るぞ
時間の無駄になる、体力の無駄だぞ」
アイシン
「無駄って何が無駄なのよ!!
無駄無駄言って、ほんと最近腹立つわね!」
激オコなアイシンを無視して俺は寝た。




