二十五話 密談
12月10日午前3時
「上官は何を考えてるんだ」
小山はふてくされ船室の壁にもたれた。いよいよ出陣かと期待を抱いていたがそれを裏切られた形だ。
「まあ仕方あるまい、上官の命令だからな。」
彼を宥めるかのように細谷は新聞から顔を出し言った。
今彼らは輸送船へ乗り込み何処かへと向かっていた、行き先はただ上官が知るのみだった。
細谷の宥めを無視するかのように小山は続けた。
「何故前線に送らないんだ、八路軍制圧など俺たちならすぐに終わらせられる。毛沢東、蒋介石全員つるし上げられる」
その怒りは言葉だけに止まらず小山は己の拳を手のひらの肉につめが食い込み常人なら痛いと感じるほどでも何も惑うことなく握った。だがその憤りの言葉を遮ったのは他でもない相棒の細谷だった。
「その戦線が無くなったら?」
それを説明するには数時間前に戻らねばならない。
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ある中国奥地洞窟
「どうして我々が中国軍、蛮族の軍司令部会わねばならんのです」
とある高級士官は全権大使に小声で語りかけた。その地は日本軍はいない、いやこの地に全権大使と付き人の高級士官、通訳しかいない。余計な人を連れてくればこの会談は実現しなかっただろう。
「まあ、落ち着きたまえ。今回の事案ただ事ではない、事の仕様、しいては帝国の運命我らの双肩にかかっておるのだ。」
人が来る気配を察知した2人は身だしなみを再び整えた。
「失礼する」
彼らの後ろから現れたのは他でもない蒋介石だった。今では毛沢東と蒋介石は協同戦線を築いているが2人の仲は未だに悪いと見て取れる。
『何用か、要点だけまとめて話せ』
全権大使と高級士官は目配せをし慎重に言葉を選びながら話した。
日本は連合国から攻撃を受けたこと、奇襲であった事など事細かにされど不利になるようなことは言わず説明を行った。時には情をかけてもらう様に・・・2人はあらゆる言葉を述べた。
蒋介石は急に席を立った。
『日本の情勢など知らぬ、日本人が何人死のうと我らの志に変化は無い。この中国全土から日本人が一人も居なくなる事が我らの夢であり、志だ。』
「もちろんそれは重々承知しております。されどこれは中国全土を平和するためにも我々日本軍は・・・」
はっ、と高級士官は口をつむんだ。言ってはならぬことを言ってしまった、ちらりと全権大使を見ると額に手を載せ天を仰ぎ見ていた。交渉決裂ーその四文字が高級士官の頭をよぎった。
『貴様らの大儀など垂れるための密談などごめん被る、全面和平を結べると聞いたから来たと思えばこの様か。帰る。』
蒋介石は軍帽を手に取り退席しようとした。それを全権大使は急いで謝り何とか退席せぬままにして欲しいと懇願した。その懇願ぶりに高級士官は異様に不信感を覚えた。なぜ優勢、とは言いがたいが有利である日本が蛮国である中国にこの様な態度を取らねばならないのか・・・だがそれよりも
「全権大使殿、全面和平とはどういうことですか」
その言葉を高級士官は聞き逃してはいなかった。
長らくの不投稿申し訳ありませんでした。受験勉強並びに受験、模試があり投稿が出来るような時間がございませんでした。
いつも読んでいただいてる方、本当にありがとうございます。人から人へ伝えるためには必ず言葉で表現せねばなりません。様々な趣向を凝らすことは出来ませんが自分の可能な限りの手を尽くします。これからもよろしくお願い致します。




