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大分なれてきた俺

第三話です

宜しくお願いします

 それからというもの、俺は週一のペースで彼女のマンションへ行き、掃除、片付け、晩ご飯を作る。


 それにしても毎週毎週よくもここまで散らからせるもんだ。ソファ、ベッド、床、色んな所に服が散乱している。(お菓子の袋もあり。)掃除のし甲斐があるというか、仕事が減らないと言うか……。


 あ、でも下着は見かけなくなった。なんとなく彼女の成長を感じて嬉しい。


◇◇◇◇


「はじめー!! 聞いてくれー!! また俺、女にフラれちまったーー!!」


 泣きべそかきながら、松下が俺のところにやって来る。


「これでもう何回目だ?」

「記念すべき16回目だ………」

「で、今回はどんな失態をしたんだ? 興味はないが一応聞いてやる」

「ありがとよ親友。あれは先週の土曜日の話だ。彼女とアパレルショップに行って、夏の海水浴に向けて、彼女の水着を買いに行くことになったんだ。そしたら美咲のやつが、『どっちが可愛い?』と訊くもんだからよ? 俺は本当にどっちも似合ってると思ってたんだよ。だからさ、『どっちもいいじゃん! 好きな方、買いなよ!』と言ったら顔色が曇ったんだ。『うん、分かった』と言ってしばらく悩んでたよ。そしたら『悩んでるからあなたの意見を訊きたい。あなたはどっちが好き?』って。俺はかなり困ったよ。彼女に似合ってるとは思ったけど、どっちも俺の好みじゃなかったからな。なんてうまく言おうと悩んでると、急に美咲のやつスッとした顔して、『嘘ついたの?』『え、なんで?』『だって良いと思ってるなら、すぐ答えれるはずでしょ? 答えられないということは、私にテキトーに答えたんでしょ!?』って急に起こり始めて、『違う違う!』って言ってももうダメだった。バチーンって水着投げられて、そのまま帰って行きやがった」

「お疲れさんだ」

「電話しても無視するから、チャット送ったら『別れましょ』の一言だ。『おう、結構結構。こっちも冷めたよ!』と送り返して終了したよ……」

「そうか」

「今思い出してもムカムカする話よ。でも投げられた水着は商品にならないから、買って毎日布団の中で抱いて寝てる……」

「……次の恋人ができるまでには捨てとけよ」

「うん……」


 ぐずぐず言うもんだから、それを見かねた山田は、


「松下、お疲れさんだ。今日一緒にサ◯ゼで、21回慰めパーティーしよう」

「……うん」

「二宮も来れるだろ?」

「あ、いや……俺は……バイトが」

「ん? バイトは木曜日じゃなかったか?」

「いや、前の人が事故で病院通いになったから、今は別の人のところに家事代行してる」

「……そうか。無理はするなよ」

「ありがとう」

「気にするなよ松下! また俺が訊いた富高の美少女について話してやるから……」


 そう言って山田は松下を介抱しながら、席に連れて行った。


 恋人ねえ……。俺には関係のない話だ。聞いてて本当に大変だと思う。女子の突発的な気持ちの変化、理解のできない言動、更に増える悩みの種。いやいや無理だな。


 ぼ~っと窓の外を見ていると、クラスの女子達の話し声が聞こえてくる。


「いつも思うけど日野本さんってすごいよね~。今日も花壇に花植えてたわよ」

「いつも笑顔で挨拶してくれるし、でも校門に立ってる時の日野本さんのピシッとした挨拶もギャップでほれぼれするわ~」


 へ~。日野本って学校ではいつもそんなことしてるのか。お嬢様はやっぱり生き方というか、庶民となんか違うんだろうなあ。


◇◇◇◇


 ということで今日も仕事で日野本のマンションの片付けをする。もう信用してくれてるのか、マンションに森さんの姿はなかった。


 だいぶん要領を得たのか、1時間少し経って片付け、掃除を終えることが出来た。今日は時間があるから、少し凝った料理をしよう。彼女はきっと喜ぶぞ~。


 もうそろそろ予定した時間になるな。ドアの開く音が鳴る。さすがだ、きっかりジャストだ。


「ただいま帰ったわ」

「ああ、おかえり。もう料理できたから。皿にのせるぞ」

「ええ」


 そして煮こんだハンバーグとポテトサラダ、ごはんをテーブルの上に置く。


「さあ、どうぞ」

「……すごい手が込んでるわね」

「ああ。料理する時間が少しでも確保できるようになったからな」

「……」


 そして一口パクリ。目を瞑ってもぐもぐと味わう。


「うん、すごく美味しいわ」

「そうか。それは良かった」

「なんでそこまでしてくれるの? かなり手間暇かけたと思うけど」

「そりゃあ、少しでも美味しいものを食べて欲しいだろ?」

「……」


 彼女はそれ以上何も言わず黙ってご飯を食べる。


「そういえば学校の花壇を植えてるんだって? 毎日してるのか?」

「ええ。お水をやったり、枯れていれば抜いたり」

「へえ。部活は園芸部か何かなのか?」

「いいえ」

「へ? 園芸部じゃないのになんで毎日してるんだ?」

「なれなれしいわね」

「え?」


 彼女はお茶碗をドンとテーブルに置き、険しい表情でぴしゃりと一言。


「私、あなたのことをそこまで信用していないわよ」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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